第295回 フランス代表100周年を飾るベルギー戦(2) ルイ・サア、初出場・初得点

■攻撃陣の主力が欠場

 フランス代表100周年と言うことで注目を集めたブリュッセルでのベルギー戦、100年前を回顧する特集なども組まれたが、6月に始まる欧州選手権本大会の準備と言う側面を忘れてはならない。
 前回の本連載ではルイ・サアとペギー・リュインデュラの2人が代表入りしたことを紹介した。2002年夏に就任したジャック・サンティーニ監督が代表に初めて招集した選手はこれで12人になる。しかし、これまでの10人のうちレギュラーに定着した選手がほとんどいないことを考えるとワールドカップで惨敗したとは言え、従来の選手のレベルがいかに高いかを物語っている。しかし、今回は攻撃陣のダビッド・トレゼゲ、ティエリー・アンリがメンバーから外れており、新人にとってはチャンスである。そしてこの2人を抜くことのできないシドニー・ゴブーもその力をアピールしたいところである。

■3つの驚きを与えた先発の11人

 サンティーニ監督がピッチに送り込んだ11人とその配置には3つの驚きがあった。GKファビアン・バルテスは不動であるが、まずDFラインはマルセル・デサイーとリリアン・テュラム、ミカエル・シルベストル、ウィリアム・ガラスとその顔ぶれこそ順当であるが、その配置が驚きを与えた。中央のストッパーの位置にデサイーとテュラム、右サイドにガラス、左サイドにシルベストルという布陣である。テュラムの代表でのストッパーはサンティーニ体制になってから初めて、実に2002年6月11日以来のことである。すなわち、韓国で背水の陣を引いたデンマーク戦以来である。そのときはこのテュラムのストッパーが裏目に出て2-0と勝つべきところを0-2と落としてしまった。また、主将として欠かせないデサイーは所属クラブのチェルシーでも1月18日以来試合に出場しておらず、ブランクが不安である。そして守備的MFはオリビエ・ダクールとパトリック・ビエイラと順当な配置であったが、攻撃的MFではまた驚きのメンバー起用である。エースのジネディーヌ・ジダンを左サイドに配し、右はロベール・ピレスもベンチ入りしていたものの、シドニー・ゴブーを起用する。そして驚きの3つめは2トップであり、ルイ・サアとペギー・リュインデュラという代表入りしたばかりの2人を起用する。

■ジダンの再来となるか、ルイ・サア

 そしてこの試合の主審は両国の対戦史にふさわしく、サッカーの母国イングランドのマーク・へスリー氏である。期待と不安の入り混じった中でキックオフされた試合であるが、試合開始間もない18分にダクールが負傷し、クロード・マケレレに交代する。そしてこの試合のキーマンとなったのは右サイドのゴブーであった。立ち上がりは慣れないポジションで十分に機能しなかったが、前半のロスタイムに先制点を上げる。代表10試合出場で3得点目である。
 後半に入り、親善試合ということもあり、選手を次々に入れ替えた。ベンチスタートだったピレスもゴブーに代わってピッチに姿を現す。76分にはこの試合が代表デビューのサアがジダンからのパスを受けて初ゴールを決め、初出場で初得点と、見事に期待に応える。10年前のチェコ戦でローラン・ブランからのパスを受けて初出場初得点を決めたのはジダンだった。サアのゴールをお膳立てしたジダンはこの直後にベンチに下がり、代わりにオリビエ・カポがピッチにはいる。そして守備的MFをマケレレ1人にしてカポ、ピレス、守備的MFのビエイラに代わって入ったジェローム・ロタンの3人が攻撃を組み立てる。カポがゲームメーカーとなり、一昨年のワールドカップで問題が露呈したジダン不在時の対応も試験することができた。

■14試合連続勝利、7試合連続無失点、安定したチームが頂点を狙う

 そして100年前の初対戦時は3-3の引き分けだったこのカード、終盤に雨が降る中でタイムアップの笛がなる。フランスが2-0と勝利を収めたが、これでフランスは新記録となる14試合連続勝利を決めた。そして忘れてはならないのは昨年6月のコンフェデレーションズカップ決勝のカメルーン戦以来7試合連続完封勝利を収めていることである。昨年2月のチェコ戦のショックから1年、チームはすっかり安定した。ポルトガルで欧州の頂点に立ち、フランス代表100周年を飾りたいところである。(この項、終わり)

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