第2492回 パリサンジェルマン、足踏みの末に連覇(7) キリアン・ムバッペ、ハットトリックで優勝を飾る
8年前の東日本大震災、3年前の平成28年熊本地震、昨年の平成30年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■3試合連続で優勝を決められないチームにファンはフラストレーション
自力優勝のチャンスを3試合連続して逃したパリサンジェルマン、4月21日のホームでのモナコ戦は1月下旬から長期離脱していたネイマールの復帰が予想され、同じく戦線を離れていたエディンソン・カバーニもベンチ入りする。そしてパリジャンの心の支えであったノートルダム寺院の火災というショッキングな事件から立ち直るべくノートルダム寺院のイラスト入りのユニフォームで2週間ぶりのパルク・デ・プランスでの試合に臨む。本来であるならばチャンピオンズリーグの準決勝を戦っているはずの4月、ファンにとっては足踏みの続くチームにフラストレーションもたまってきた。
また、パリサンジェルマンが優勝を決められない間にリーグ戦の話題は3位争い、4位争いに移り、3位のリヨンを4位のマルセイユと5位のサンテチエンヌが追い上げてきている。
■6時間前にキックオフされた試合でリールがドロー、優勝が決まる
さて、パリサンジェルマンとモナコの試合のキックオフは21時、その前に2位のリールは15時キックオフ、トゥールーズで試合を行う。名門トゥールーズは今季は昨秋以降成績を落とし、降格の危険性も漂う15位にいる。一方のリールも3位のリヨンとの勝ち点差はキックオフの時点で5に縮まり、何とか来季のチャンピオンズリーグの本戦出場権のある2位を死守したいところである。試合は地力に勝るリールが優位に進めた。62分にはチアゴ・メンデスがゴールを決めるが、その直前のプレーでトゥールーズの選手の蹴ったボールが両腕をついて地面にはいつくばっていたリールのジョナタン・イコネの腕に当たっていることがビデオ検証の末にわかり、主審はこれをハンドと判断してノーゴールとなる。
結局試合はスコアレスドローとなり、パリサンジェルマンはキックオフ4時間前に優勝が決まってしまったのである。
■キリアン・ムバッペが先制点と追加点、ネイマール3か月ぶりに復帰
優勝が試合前に決まってしまったパリサンジェルマンであるが、この日はそれまでの3試合を忘れさせるようなすばらしい試合を展開した。この日の攻撃陣は中央にキリアン・ムバッペ、右にダニエウ・アウベス、左にムーサ・ディアビ、GKは若いアルフォンス・アレオラ、主将を務めるのはストッパーに入ったマルキーニョスである。
これまでの3試合と同様にパリサンジェルマンはパスをつないで、試合を支配する。しかし優勝を逃し続けた3試合との違いは決定力のあるムバッペを先発でトップに起用したことである。モナコで育ったムバッペは15分にカウンターアタックから抜け出し、ゴール前の至近距離からシュートを決めて先制点をあげる。さらにムバッペは38分にもダニエウ・アウベスとのパス交換から2点目を決める。
前半を2-0と折り返すと後半開始時にパルク・デ・プランスは大きな歓声が沸きあがった。1月23日のフランスカップのベスト16決定戦のストラスブール戦で負傷したネイマールがレイバン・クルザワに代わって交代出場、3か月ぶりの復帰である。また、試合前には15分間とトーマス・トゥヘル監督は表明していたが、この時間帯の交代は45分間の活躍を期待している。ネイマールの動きは決して悪くなく、ファンを歓喜させる。
■ムバッペ、古巣相手にハットトリック、リーグ30得点を決める
そしてこの日ネイマール以上の喝采を浴びたのがムバッペであった。ムバッペは56分にもダニエウ・アウベスのクロスを蹴りこんでハットトリックを達成する。これで今季のリーグ戦での得点は30点となる。リーグ戦で30得点を記録したのは1989-90シーズンのジャン・ピエール・パパン以来のこととなる。リーグ記録は1965-66シーズンのフィリップ・ゴンデの36得点、残り5試合で6得点は不可能な数字ではない。そして、もし今季この記録を破ることができなくてもまだムバッペは20歳である。20歳の選手がリーグ30得点を記録したことはない。20歳の選手のこれまでの最高得点は1973-74シーズンのマルク・ベルドルの29点(正確にはシーズン終盤に21歳になった)、ジブリル・シセ、ミッシェル・プラティニが22点、カリム・ベンゼマが20点である。
8度目のリーグ優勝を支えたのはワールドカップでも活躍した20歳の若者だったのである。(この項、終わり)