第313回 オランダと対戦(4) スコアレスドロー、世界新記録ならず
■欧州の王座についた思い出の地、ロッテルダム
ポルトガルでの欧州選手権の最終メンバーの選考という色彩の強いオランダとの親善試合であったが、試合前のメンバーの選出と負傷者の続出によって混沌とした状態の中でフランス代表はロッテルダムに向かった。ロッテルダムはフランス代表にとっては忘れられない栄光の舞台である。2000年7月2日、欧州選手権の決勝がこのロッテルダムで行われた。55分にイタリアに先制点を奪われ、イタリアは栄光を前に守りを固めてすでにロスタイム。イタリアが栄光にも彫りつめる寸前、ロスタイムに入って94分に途中交代出場したシルバン・ビルトールのゴールで同点に追いつく。延長戦に入って103分、ロベール・ピレスからダビッド・トレゼゲと途中交代出場したコンビのパスから決勝点。3人の交代選手が試合終盤に活躍し、見事フランスは二冠に輝いたのである。
■両チームのエースストライカー不在の中でキックオフ
ホームチームのオランダは白のユニフォーム、そしてフランスは青のユニフォームでピッチに姿を現す。フランス代表はその栄光のデカイプ競技場に4年ぶりに戻ってきた。フランス代表の布陣はGKファビアン・バルテス、ストッパーはベルギー戦に続いてマルセル・デサイーとリリアン・テュラムのコンビ、両サイドのDFにはビリー・サニョルとビシャンテ・リザラズ、守備的MFにクロード・マケレレとオリビエ・ダクール、攻撃的MFは右にルドビック・ジウイ、左にジョアン・ミクーとなった。そしてFWの2人が驚きのコンビとなり、ティエリー・アンリが外れてトレゼゲとシドニー・ゴブーが初めてコンビを組むことになった。対するオランダも得点源のルート・ファンニステルローイが負傷でメンバーから外れている。プレミアリーグに所属し、得点王争いをする両ストライカーの対決を楽しみにしていたファンも多かったが、イングランドでの雌雄をロッテルダムで決することにはならなかった。オランダにとって、この試合は欧州選手権に向けた重要な試合であるが、本来ならば、オランダとフランスは4年前にこの競技場でベストメンバーを揃えて欧州の頂点を争うはずであったが、準決勝でイタリアにその道を阻まれたオランダにとってもフランスとの対戦は楽しみである。
しかしその気負いが裏目に出たのか、試合は低調なリズムで始まる。両チームがゴールネットを揺らす気配は感じられず、時計の針は動いていく。前半も終盤になってから両チームの持ち味のリズムが感じられ始め、両チーム無得点ながら後半には得点シーンを感じさせる中でハーフタイムとなる。
■世界新記録を目指しアンリ投入
フランス代表は昨年の3月29日のマルタ戦以来14連勝を誇っている。これはフランス代表史上の記録であるが、世界中を見渡しても14連勝を達成しているのは1997年のブラジル、1996年から1997年にかけての豪州だけであり、フランスがもしもこのオランダ戦で勝利すれば15連勝となり、世界新記録となる。フランスは14連勝中に40得点をあげているが、そのうち14得点はアンリによるものであり、アンリこそ14連勝の立役者である。そのアンリをゴブーに代えて後半からフランスは投入する。
■スコアレスドローで15連勝はならず
また、フランスはオランダより多い20人をベンチ入りさせ、それ以外にも選手を次々に投入し、アンリを含めて6人の選手が試合の途中から出場する。しかしながら、フランスのファンには2つのフラストレーションがたまった。まず、ベルギー代表入りをほのめかしたスティード・マルブランクを出場させなかったこと、そして90分間無得点に終わってしまったことである。この結果としてフランスは世界新記録となる15連勝をマークすることはできなかった。しかしながら、守備は鉄壁であり、昨年のコンフェデレーションズカップ決勝のカメルーン戦以来8試合連続で無失点となった。次の親善試合はFIFA創立100周年記念試合であり、50日後の5月20日に行われるブラジル戦である。この50日間の間にフランスはベルナール・ラマナンスーを日本に派遣するなど万全の対策を講じ、記念すべき試合で勝利を収めようとしているのである。(続く)