第317回 欧州4強への道(4) モナコは伝説の逆転劇、リヨンは力及ばず敗退
■第2戦を前に再び首位が交代
4月6日、モナコのルイ2世競技場が満員の観衆で集まったのは前回紹介した11年前のパリのドラマを期待したからだけではない。モナコは半年以上守ってきたリーグ首位の座をチャンピオンズリーグ準々決勝第1戦直前にリヨンに奪われてしまったが、第2戦の直前に首位に返り咲いたからである。
■下位のアジャクシオ相手に見せたモナコの同点劇
フランスリーグ第31節は4月最初の週末に行われた。日本ではソペクサの試飲会で多くの犠牲者が出たことから、暗黒の土曜日となりサッカーどころではなかったと思われるが、フランス国内ではいつもどおりの週末の風景となった。前節終了時点でリヨンとモナコは勝ち点63で並び、得失点差でリヨンが2ポイントリードしている。火曜日にレアル・マドリッド戦を控えるモナコは他チームより1日早い金曜日の2日にアジャクシオを迎えた。アジャクシオはリーグでは下から5番目の16位、ライバルのリヨンの相手は強豪マルセイユであり、モナコは大量点を奪って勝利すれば首位奪還である。
ところが、試合は思わぬ展開になり、アウエーのアジャクシオが前半に得点を重ね、前半終了時でモナコは0-3とリードを許す。それまでのリーグ戦30試合でモナコは3点を許したことはなく、ホームゲームの前半だけで3点を奪われたディディエ・デシャン監督も動揺を隠せない。しかし、後半ドラマは起こった。51分にまずステファン・ノンダが反撃のゴールをあげ、67分にはヤロスラフ・プラシルのゴールで1点差に詰め寄る。1点差のまま時計の針は動き、すでにロスタイムも6分、DFのウーゴ・イバラは前方にロングキック、この球をノンダが後半から交代出場したダド・プルソにつないで、劇的な同点弾。11年前のパルク・デ・プランスを思わせるようなロスタイムのゴールであった。モナコは勝ち点1に終わったが、翌日リヨンがマルセイユに負けたため、勝ち点1差で首位を奪還したのである。
■モナコ、伝説のチームに逆転勝ち
モナコにとってこのアジャクシオ戦がレアル・マドリッド戦の伏線となった。満員の観衆の中、レアル・マドリッドは11年前の失敗は繰り返すまいと、試合開始から積極的に攻める。マドリッドで次々にゴールネットを揺らされたフラビオ・ローマを銀河系選抜が襲う。そして35分、ロナウドが突破してラウールにパスし、左足で先制点。モナコは攻め手がなく、これで勝負あったかに見えた。しかし、前半のロスタイムにクロスボールをフェルナンド・モリエンテスがヘッドで落としたところをルドビック・ジウイが同点ゴール。アジャクシオ戦とは違う足取りでロッカールームに戻るモナコイレブン。後半立ち上がりからモナコが攻め、開始早々の48分、モリエンテスが古巣相手にヘディングで勝ち越し点。しかし、これでリードしたわけではない。準決勝進出のためにはあと1点が必要である。そして4日前のアジャクシオ戦同様、モナコに待望の3点目が入った。66分ジウイが味方の放ったシュートをヒールでコースを変えて、ゴール。これで2試合合計ではアウエーゴール2倍ルールでモナコがリードする。ここからは11年前のパリでの試合の終盤同様、白い巨人の猛攻が始まる。約30分間、レアル・マドリッドがモナコのゴールに迫る。世界的なスターがシュートを放つが、ゴールネットを揺らすには至らない。ロスタイムに入った94分、ラウールのシュートは枠の外に飛んでゆく。5分間のロスタイムの後、試合終了の笛が鳴り響く。モナコはレアル・マドリッドを破り、フランスのサッカーには新たな伝説が誕生したのである。
■リヨン、2度追いつくがポルトの前に敗退
その翌日、リヨンはポルトと対戦する。3点差での勝利でモナコに続いてベスト4と言うリヨンであるが、週末のマルセイユ戦で1-2と敗れたショックが尾を引いたようである。攻撃的な布陣を引き、攻めへの意識は高かったが、常にポルトに先行を許す展開となった。6分にはポルトのマニシェが力強いゴールをあげてジェルラン競技場を沈黙させる。14分にリヨンはペギー・リュインデュラのゴールですかさず同点に追いつき、なおも攻勢をかける。あと3点が必要なリヨンは大歓声に乗って攻める。しかし、次の得点は後半に入ってすぐの47分にまたもやマニシェ。リヨンに残り時間で4点をあげる力はなく、ようやく試合終了直前にエウベルがクロスをヘッドで押し込み、連敗こそ免れるが、1分1敗で欧州の舞台から去ったのである(続く)