第329回 FIFA創立100周年試合 フランス-ブラジル戦
■フランスが主導したFIFAの設立
今年はフランス代表が100周年であるだけではなく、そして国際サッカー連盟(FIFA)の設立もまた100周年である。FIFAは1904年5月21日、当時サントノーレ通り229番地にあったフランス・スポーツ連盟の中に設立された。設立時のメンバー国はフランス、ベルギー、デンマーク、オランダ、スペイン、スウェーデン、スイスの7か国である。すでに1863年に国内のサッカー協会が設立されていたイングランドや英国の他のスコットランドなどは創設メンバーには加わらなかった。欧州大陸において国際試合を行うようになったのがちょうど20世紀の初めであり、国際組織を創設することが議論となっていた。そしてこのFIFAの設立の3週間前の5月1日、フランスはベルギーがブリュッセルで国際試合を行っている。この試合は両国にとって初の国際試合である。この試合の際に両国の協会の会長が話し合ったことが、直接的なきっかけとなってFIFAが設立され、フランス人のロベール・ゲランが初代会長に就任している。このようにフランス代表の歴史はFIFAの歴史であると言ってもいいだろう。そしてFIFAだけではなく、ワールドカップ、欧州選手権など、フランスが主導権を握って創設されたものは少なくない。
■FIFA創立100周年を記念する様々なイベント
FIFAは創立100周年を記念して様々なイベントを行っているが、設立の地パリでも数々のイベントが行われた。4月の末からはフランスの空の玄関であるシャルル・ド・ゴール空港、そして5月11日からはパリ市内のギャラリーでFIFA100周年展が行われ、多くの人を集めている。この展覧会は10月には東京にも巡回することから日本の皆様も関心が高いことであろう。創立100周年の前日にあたる5月20日から21日にかけてルーブルのカルーセルでFIFAの理事会が行われた。コンベンション都市であるパリには多くの会議場が存在するが、FIFA誕生の地であるサントノーレ通り229番地に近いと言う理由でこの会議場が選出されたのであろう。
■メインイベントのフランス-ブラジル戦に史上最高の観客動員
理事会初日の夜であり、FIFA100周年前夜となる20日夜にはスタッド・ド・フランスで女子のドイツ-世界選抜戦に続き、メインイベントとも言うべき男子のフランス-ブラジル戦が行われた。通常国際試合が行われるのは水曜日であるが、木曜日に行われたのはこのような理由があるのである。前日にはUEFAカップ決勝がスウェーデンのイエーテボリで行われ、翌々日の土曜日にはフランスリーグの最終節が行われる。このような厳しいスケジュールの合間に世界ランキングで1位と2位に相当する現在のサッカー界の双璧、世界チャンピオンと欧州チャンピオン、フランスが世界一に輝いたときの決勝戦の再現、という要素を持つブラジルとフランスの対戦にファンの関心が高まらないわけがない。普段のフランス代表の試合では閑古鳥の鳴くスタッド・ド・フランスは異例とも言える超満員の観衆で埋まった。観客動員は実に7万9344人にのぼり、スタッド・ド・フランスで行われた代表の試合の最高記録となった。
■仲良くスコアレスドロー
両チームならびに審判団はこの日のために創成期のユニフォームを準備した。ブラジルは現在の黄色ではなく第二次世界大戦前のチームカラーである白、フランスはチームカラーこそ初期の白ではなく現在の青を着用したが、クラシックなデザインのユニフォームに身を包んで記念撮影を行った。もちろんこの試合は親善試合という位置づけではあるが、フランスにとっては間近に迫った欧州選手権に向けた重要なテストである。欧州選手権に出場する23人のフランス代表メンバーは試合前日の19日に発表されている。23人のうちUEFAカップ決勝に出場したファビアン・バルテスなどスケジュールがタイトな5人がはずれ、その他を4人が加え、記念すべき試合のメンバーとなった。
フランスもブラジルもほぼベストメンバーであり、フランスは出場した14人の選手のうち12人が欧州選手権メンバーであった。史上最高の観客は両チームの6年ぶりのフランスでの再戦に忘れられぬ夜をすごすが、結局は仲良くスコアレスドロー。地味な試合内容になってしまったが、再び両者が2年後のドイツで対戦することがあるのであろうか。(この項、終わり)