第2545回 2019年アフリカ選手権(7) 7人のフランス人監督

 8年前の東日本大震災、3年前の平成28年熊本地震、昨年の平成30年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■7人のフランス人監督が指揮を執った今大会

 前回の本連載ではアフリカで活躍したフランスのクラブの選手を紹介したが、シリーズ最後となる今回はフランス人の監督を紹介しよう。
 決勝戦こそフランス人以外(正確にはアルジェリアのジャメル・ベルマディ監督はフランス国籍も取得)同士の戦いであったが、今回も多数のフランス人監督が指揮を執った。
 ウガンダのセバスチャン・デザブル、マダガスカルのニコラ・デュプイ、ケニアのセバスチャン・ミニェ、モロッコのエルベ・ルナール、チュニジアのアラン・ジレス、モーリタニアのコランタン・マルティンス、ベナンのミッシェル・デュスイエの7人である。ちなみに前回の2017年大会はフランス人監督は5人、ルナール、ジレス、デュスイエが連続出場であるが、ジレスは2年前はマリの監督、デュスイエはコートジボワールの監督として出場していた。

■フランス人監督の対決となったモロッコ-ベナン戦

 モロッコのルナールとベナンのデュスイエは決勝トーナメントの1回戦で対戦し、ベナンがPK戦で勝ち抜いている。敗れたモロッコのエルベは2016年に監督に就任し、2017年のアフリカ選手権、2018年のワールドカップにも出場し、今大会でも有望視されていたが、この責任を取って辞任し、後任がバヒッド・ハリルホジッチとなった。なお、ルナールはサウジアラビアの代表監督に就任している。一方のデュスイエはベナンの監督は2回目であり、前回以上の成績を残したので留任である。

■準決勝に進出したチュニジアのアラン・ジレス

 5人のフランス人監督の中で最も良い成績を残したのはチュニジアのジレスである。ジレスはアフリカの監督を渡り歩くという点ではアンリ・ミッシェル、クロード・ルロワと同じ道を歩むのかもしれない。ミッシェルは昨年4月に亡くなり、ルロワはトーゴの監督を務めているが予選敗退となっている。そのジレスの率いたチュニジアであるが、準決勝でセネガルに延長戦で敗れている。セネガルのアルー・シセ監督は2015年から指揮を執っているが、その前に監督を務めていたのがジレスなのである。ボルドーの一員として訪日経験もあるジレスは引退後はトゥールーズとパリサンジェルマンの監督を務めたが、今世紀に入ってからはジョージアの監督を1回務めたことがあるがそれ以外はアフリカで監督を務めており、ガボン、マリ、セネガル、再びマリ、チュニジアと監督を歴任している。監督としては思ったような成果をあげることができないが、今回は準決勝進出、アフリカ選手権で準決勝に進んだのはマリの監督として3位になった2012年以来2回目のことであり、今後の活躍に期待したい。
 そして選手としての実績がジレスに次ぐのがモーリタニアのマルティンスである。黄金時代のオセールの10番として活躍し、1996年の二冠に貢献した。同時期に同ポジションにジネディーヌ・ジダンがいたフランス代表でも貴重な存在となった。マルティンスはポルトガル系でブレスト出身、引退後はブレストのコーチや監督を務めたが、2014年にモーリタニアの監督となり、すでに5年となる。そして予選敗退続きだったモーリタニアを初めてアフリカ選手権の本大会に導いたのである。

■選手として実績がなく、フランスの下部チームから代表監督になった3人

 一方、本連載の読者の皆様でもなじみのないのがウガンダのデザブル、マダガスカルのデュプイ、ケニアのミニェであろう。3人に共通するのが現役時代の経歴がほとんどないこと、そして指導者としてのキャリアもフランス国内で下部のリーグのクラブでスタートし、そこで認められてアフリカのクラブチームの監督となり、代表監督になったという点である。
 デザブルはフランスの5部リーグでの経験しかなく、デュプイは4部のイズールというクラブに所属し、そのまま監督となっている。ミニェだけはプロの経験があり、2部のクラブでプレーしたことがある。そして2017年にアフリカに渡り、コンゴに続いてケニアが2つ目の代表監督である。
 彼らの世代から将来のアフリカを担う監督が出てくることを期待したい。(この項、終わり)

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