第2556回 天敵アルゼンチンに辛勝(3) 後半の猛反撃をしのぎ、2点差で逃げ切る

 平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、このたびの台風15号などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■オフロードパスで前進、多すぎる反則

 アルゼンチン相手に20-3と大きくリードした前半、スコアの上では大差がついたかに見えたが、スコア以外のスタッツを見ると対照的な試合内容であった。
 まずは、獲得距離ではフランスが大きくアルゼンチンをリードしている。フランスはアルゼンチンの2倍以上の300メートル以上を獲得している。この要因はフランスのバックス陣の突破力に加え、オフロードパスを多用しているからである。フランスはアルゼンチンのディフェンスラインを破り、タックルされたとしてもオフロードパスによってアタックを継続している。前半のオフロードパスはアルゼンチンの2本に対してフランスは11本を記録している。
 攻撃面では良い数字を残したフランスであるが、問題は反則の多さである。序盤にはスクラムで2回反則を取られたのを皮切りに反則を重ねている。アルゼンチンが直接ゴールを狙ったのは2回(1回成功)だけであったが、ペナルティゴールを積み重ねられて失点が増えていたら、試合の展開はわからない。

■守勢一方のフランス、ゴール前のラインアウトからモールでトライを2度奪われる

 エンドの変わった後半、試合は前半とは全く違う展開となった。アルゼンチンは開始早々に空中戦を制し、フランス陣内の22メートル付近でボールを確保し、連続攻撃をしかける。ここでフランスがオフサイドの反則をする。ゴール正面であったがアルゼンチンはタッチを選択、フランス5メートルライン上でのラインアウト、このラインアウトでアルゼンチンはナンバーエイトのハビエル・オルテガ・デシオがボールをキャッチし、ギド・ペティ・パガディサバルに渡してそのままインゴールに倒れこんでトライ、サンチェスがコンバージョンを決めて10-20と追い上げる。後半はFW戦でフランスが劣勢となり、なかなかボールを獲得することができず、自陣に釘付けとなる。フランスは後半に入って10分以上全くボールを獲得できない。
 53分には早くもこの試合10個目の反則で、自陣5メートルでのアルゼンチンボールのラインアウト。今度は左サイドでのラインアウトとなったが、パガディサバルがキャッチして、ドライビングモールを押し込み、最後は交代して入ったフッカーのフリアン・モントーヤがトライを決める。左サイドからのキックをサンチェスが外し、フランスは20-15と5点のリードとなった。スタッド・フランセのスタンドオフのサンチェスも交代し、カストルに所属するベンハミン・ウルダピジェタがピッチに入る。そのウルダピジェタが61分にはフランス陣の22メートルライン付近からペナルティゴールを決め、20-18とフランスの17点のリードはわずか20分で2点になってしまった。後半開始まもなく主将のギエーム・ギラドはカミーユ・シャと交代しており、リーダーシップ不在となったところで失点を重ねたフランス、2点差に追い上げられたところでルイ・ピカモールを投入する。ゲインはできなかったものの、交代して入った直後にピカモールはボールを持つ機会があった。
 68分にフランスはダミアン・プノーが負傷する。プノーに代わってスタンドオフのカミーユ・ロペスを投入する。この直後にフランスは反則を犯してしまう。22メートルライン付近の左中間からウルダピジェタがペナルティゴールを成功させ、ついにアルゼンチンが21-20と逆転する。

■ダミアン・プノーの負傷退場で出場したカミーユ・ロペスが逆転ドロップゴール

 1点を追う立場となったフランス、キックオフからボールをキープし、アルゼンチン陣内22メートル付近でラックを形成、これをスタンドオフに位置に入ったロペスにパス、ロペスは左足で約35メートルのドロップゴールを成功させてすかさず逆転する。その直後にはスクラムハーフを若手のアントワン・デュポンからベテランのマキシム・マシュノーに代える。今回のメンバーで唯一11年前に学生選抜として日本に遠征した経験がある。

■試合終了間際に双方がペナルティキックを失敗、フランス逃げ切る

 2点リードの77分、フランスは左中間30メートルの距離でペナルティゴールのチャンスを得る。この時、グラウンドにはロマン・エンタマックの他に、ロペス、マシュノーと3人キッカーがそろっていたが、前半4本のキックを成功させたエンタマックが蹴る。しかしながらこれを失敗、試合は最後のシーンとなる。残り1分、フランスはハーフライン付近で反則、アルゼンチンはロングキッカーのエミリアーノ・ボフェリが蹴るものの、これが外れる。
 試合終盤に双方がペナルティゴールを失敗し、フランスが23-21で勝利したのである。(この項、終わり)

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