第2609回 新春を飾るフランスカップ(1) 新監督が初陣を飾ったモナコ
9年前の東日本大震災、4年前の平成28年熊本地震、昨年の台風15号、18号などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、すべての日本の皆様に激励の意を表します。
■新年最初の試合となるフランスカップのベスト32決定戦
前回までの本連載は2019年内にベスト8が決まったリーグカップの模様を紹介してきたが、年が明けると最初に待っているのがフランスカップである。フランスカップは新年最初の週末にベスト32決定戦が行われ、1部勢20チームが参戦してくる。基本的には1部勢は下位リーグのチームと対戦する際はアウエーで戦うことになり、年末年始の休暇明けということもあり、ジャイアントキリングが起こりやすい状況下にある。年内にリーグ戦は前半戦を終え、各チームのだいたいのポジションは見えてきた。またリーグカップもすでに8チームに絞られている。したがって、年が変わって心機一転という1部勢にとっては並々ならぬ決意があり、ここまで勝ち抜いてきた2部以下のクラブにとっても大きなモチベーションをもって臨む試合となる。
■2020年の開幕戦を制したボルドー
ベスト32決定戦は金曜日の1月3日に1試合、土曜日の4日に17試合、日曜日の5日に13試合、月曜日の6日に1試合行われる。3日の試合は2020年のフランスサッカーの開幕戦でもある。この試合では1部のボルドーと2部のルマンが対戦する。本連載の読者の方であれば、リーグカップでルマンが2部勢として唯一ベスト16入りしたことをご存じであろう。ルマンはベスト8決定戦でパリサンジェルマンと対戦して敗れたが、カップ戦での手ごたえをつかんだはずである。一方のボルドーはリーグ13位、リーグカップもベスト8決定戦でブレストに敗れている。フランスカップのベスト32決定戦の直後にはリーグカップの準々決勝が予定されており、準々決勝に進出する可能性のあった両チームの対戦が前倒しになって開幕戦となった。ボルドーは昨年12月3日に勝利して以来、勝ちから見放されており、久々の勝利が欲しい。
ボルドーはGKをフランス代表経験もあるブノワ・コスティルではなく20歳のガエタン・プーサンを起用する。リーグカップの2回戦のディジョン戦で活躍し、これまでプロの試合の出場歴はわずか4試合であるがいずれも無失点という成績を残している。ボルドーは後半に入ってPKで先制、アディショナルタイムにもトマ・バジックが追加点をあげて2-0で勝利、新年に長いトンネルを抜け出したのである。
■監督が次々と交代させられるモナコ
土日には30試合が行われたが、その中で1部勢同士の対戦となったのは2試合、モナコ-スタッド・ド・ランス戦とレンヌ-アミアン戦である。
スタッド・ド・ランスはリーグ6位、モナコは7位であり、両チームとも消化試合数が1試合少ない。リーグ上位勢の対戦となった。モナコは年が変わったところで監督が交代、スペイン代表監督だったロベルト・モレノである。会長のディミトリ・リボロブレフはこの1年強の間に監督を次々と交代させている。2014年から指揮を執り、タイトルも獲得したレオナルド・ジャルダム2018年10月にティエリー・アンリに交代させたところから始まる。クラブOBでスター選手であり、ワールドカップのベルギー代表のコーチとして実績のあるアンリもわずか3か月の命、2019年1月には再びジャルディムをカムバックさせる。ジャルディムも1年で交代の憂き目にあった。新監督のモレノも結果を出さなければすぐに交代させられるという覚悟はできている。
■好調なスタッド・ド・ランスを下した新監督率いるモナコ
一方のスタッド・ド・ランス、リーグ戦だけではなく、リーグカップも準々決勝進出が決まっており、古豪復活の準備はできた。ホームでの監督デビュー戦、相手はリーグ上位チームという条件が整いながら、モナコのルイ2世競技場の観衆はわずか3500人。試合は61分にモナコのケイタ・バルデが先制するが、スタッド・ド・ランスも69分に追いつく。スタッド・ド・ランスは86分にPKを得たかと思われたが、審判は認めず、VARも導入されていないため、試合は同点のままアディショナルタイムへ突入する。95分にバルデが決勝点を決め、モナコの新監督モレノは初戦を飾ったのである。(続く)