第2610回 新春を飾るフランスカップ(2) ディディエ・デシャンが所属したチームの対決はナントに軍配
9年前の東日本大震災、4年前の平成28年熊本地震、昨年の台風15号、18号などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、すべての日本の皆様に激励の意を表します。
■レンヌの快進撃をリーグカップで止めたアミアン
前回の本連載からフランスカップのベスト32決定戦を紹介しているが、1部20チームを含む64チームが出場、今年の場合は最も低いリーグからは8部に相当する地域3部リーグ、さらに海外県・海外領土からそれぞれ1チームが出場している。注目点はジャイアントキリングや上位陣同士の対戦だけではない。32試合の中には因縁の対戦や通常のリーグ戦では見ることのできない顔合わせもある。
まず因縁の対戦であるが、今回のベスト32決定戦の中で1部勢対決となった2試合のうちの1試合のレンヌ-アミアン戦である。本連載の読者の皆様であればこのカードについて新鮮な記憶をお持ちであろう。12月に行われたリーグカップのベスト8決定戦で両チームは対戦している。レンヌはヨーロッパリーグに出場したが、全く振るわず、第4節で敗退が決定してしまう。しかし、12月に入ってからレンヌは見違えるチームとなり、国内リーグ戦ならびに消化試合とはいえヨーロッパリーグのラツィオ(イタリア)戦でも勝利、国内外で5連勝する。そしてヨーロッパリーグに出場したということでリーグカップはベスト8決定戦からの出場となり、12月18日の初戦の相手はアミアンであった。勢いに乗るレンヌが先制点を奪い、このまま勝利するかと思われたが、逆転され、レンヌはいったん追いついたが、アディショナルタイムに決勝点を奪われ、リーグカップは初戦で敗退した。ベスト8決定戦から参戦した欧州カップ出場チームのうち、初戦で敗れたのはレンヌだけであった。
■レンヌが雪辱、2年連続PK戦で初戦を突破
そのレンヌが2週間後に再びアミアンと対戦することになった。レンヌのロアゾンパーク競技場には1万3000人のファンが集まり、リベンジを誓う。レンヌが優勢に試合を進め、再三再四アミアンのゴールを襲うが、アミアンのGKマチュー・ドレイエの活躍でなかなか得点は生まれない。リーグカップは点の取り合いとなったが、このフランスカップは両チーム無得点のまま、延長戦に入る。そして延長戦でも両チーム無得点となり、PK戦となる。PK戦も7人目までもつれたが、結局レンヌが勝利し、リーグカップでの雪辱を果たした。レンヌは昨年もベスト32決定戦ではブレストと対戦してPK戦で勝利しており、2年連続のPK戦による初戦突破となった。
■ディディエ・デシャンが所属したアビロン・バイヨンヌとナント
そして注目を集めたのは5部リーグに相当するアビロン・バイヨンヌとナントの対戦である。アビロン・バイヨンヌというとラグビーの強豪であり、かつては村田亙が所属していたことから日本の皆様ならばよくご存じのクラブであろう。ただ、フランスではラグビーの強豪としてだけではなく、ディディエ・デシャンが若き日に所属していたクラブとして知られている。このことは本連載の前身であるサッカークリックのフランス・サッカー実存主義の第59回で紹介していることから20年来の本連載の読者の方ならばご記憶をお持ちであろう。
そして、デシャンがプロとしてデビューしたのがナントである。デシャンはこのナントで2つの幸運に恵まれる。まずは後にフランス代表でもチームメイトとなるマルセル・デサイーと出会ったことである。そして弱冠20歳にして主将を任されたことである。フランス代表でも主将を務め、現役引退後もクラブ、代表で監督となり、そのリーダーシップの原点はナントにある。
■1部の意地を見せたナントが振り切る
主将、監督としてワールドカップを制したデシャンを育てたチーム同士の対戦となることからバイヨンヌには6000人の観衆が集まった。ナントは14分に先制するが、追加点を奪えず、何とか追いつこうとするアビロン・バイヨンヌのファンの期待は高まる。しかし、ナントは後半のアディショナルタイムの93分に追加点をあげ、ナントが2-0と勝利し、1部勢の誇りを保ったのである。(続く)