第2612回 新春を飾るフランスカップ(4) 海外県レユニオンのサンピエール、ベスト32入り

 平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、昨年の台風15号、19号などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■フランスの海外県レユニオン

 フランスカップのベスト32決定戦では下部リーグのチームが話題となるが、今回は唯一の海外県・海外領土から唯一勝ち残っているチームを紹介しよう。
 フランスには海外県・海外領土があり、日本の皆様であれば、タヒチやニューカレドニアを想起されるであろう。今回勝ち残ったのはレユニオンのサンピエールである。レユニオンはマダガスカルの東方に浮かぶ、3000メートルを超すピトン・ド・ラ・ネージュ山が島の中央にそびえる人口わずか85万人の絶海の孤島であり、世界遺産に登録されている。

■マダガスカル代表も所属するサンピエール、2部のニオールと対戦

 このレユニオンの第3の都市のサンピエールにあるサッカークラブJSサンピエロワーズはレユニオンを代表するチームである。レユニオンには独立したリーグ、カップ戦があり、サンピエールはこれまでにレユニオンリーグで21回優勝している。また、フランスカップへの参戦方法であるが、レユニオンでは地域大会が行われ、これを勝ち抜いた2チームがフランスカップの7回戦に参戦する。フランスカップの7回戦というのは11月中旬に行われ、各海外県・海外領土の11チームに加え、2部リーグのチームが参戦する。海外県・海外領土の地域リーグは6部相当であるが、サンピエールは7回戦、8回戦といずれもナショナル3部(5部に相当)のチームに勝利し、唯一の海外県・海外領土のチームとして越年した。
 ベスト32決定戦は1部のチームが下位のリーグのチームと対戦する場合はアウエーで試合を行うのが原則であるが、今年の場合はもう1つルールがあり、フランス本土で試合を行う。これはフランスカップのベスト32決定戦(1月3日から6日)の直後の7日と8日にリーグカップの準々決勝が行われるため、もしもリーグカップの準々決勝に出場するチームが海外県・海外領土でフランスカップを戦った場合の移動の負担を考慮したものである。
 サンピエールのベスト32決定戦の相手は2部のニオールである。ニオールは1994年の8回戦でレユニオンのサンルイジエンヌと対戦し、PK戦で勝利している。ただし、今回は楽な相手ではない。サンピエールの選手の何人かはマダガスカル代表である。本連載では昨年のアフリカ選手権について紹介したが、この大会で旋風を起こしたのが初出場となるマダガスカルであり、準々決勝まで進出した。

■ロジェ・ミラ、ジャン・ピエール・パパン、フローラン・シナマ・ポンゴル、ギヨーム・オアロが在籍

 また、サンピエールには意外な大物選手の在籍経験がある。まずは1970年代から1990年代までカメルーン代表として活躍したロジェ・ミラ、1990年のワールドカップイタリア大会では前回優勝のアルゼンチンを破ったが、この当時のミラの所属チームはサンピエールであった。1990年前後にマルセイユとフランス代表で活躍したストライカー、ジャン・ピエール・パパンも選手生活の晩年に在籍した。
 一方、在籍者の中にはレユニオン出身もいる。このサンピエールの下部組織で育ったのは元フランス代表のフローラン・シナマ・ポンゴルである。サンピエールがルアーブルと提携していることからルアーブルでプロデビューし、リバプール(イングランド)、アトレチコ・マドリッド(スペイン)、サンテチエンヌなどに所属し、昨年サンピエールに戻り、数か月前に現役を引退した。また、活躍中の選手としては現在はスイスのヤングボーイズに所属しているギヨーム・オアロである。サンピエールからルアーブルでプロデビュー、パリサンジェルマンではズラタン・イブラヒモビッチが大型補強で来るまでの攻撃陣を支えた。

■ニオールに勝利し、31年ぶりに海外県・海外領土のチームがベスト32入り

 さて、ニオールとの試合は後半に入って先制する。オウンゴールで追いつかれたが、勝ち越し点を決めて勝利する。
 フランスカップにおいて海外県・海外領土のチームがベスト16決定戦に臨むのは1989年に仏領ギニアのASCルゲルダー以来のこと2回目のことである。この時はディディエ・デシャン、マルセル・デサイーの所属するナントに敗れているが、サンピエールは歴史をつくるのであろうか。(続く)

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