第2625回 四強の決まったフランスカップ(3) 難敵を1点差で下したリヨンとパリサンジェルマン
平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、昨年の台風15号、19号などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■ナントの得点源、ルドビック・ブラ
前回はリーグカップの準々決勝を戦い、フランスカップのベスト16決定戦が今年に入ってカップ戦3戦目となるチームの戦いを紹介したが、チャンピオンズリーグの決勝トーナメントを控えているリヨンとパリサンジェルマンを忘れてはならない。
リヨンは1月18日の土曜日にナントとアウエーで戦う。ナントはリーグカップではベスト8決定戦でストラスブールに敗れ、越年はならなかったが、印象的だったのは初戦のベスト16決定戦のパリFC戦である。この試合は8-0と大勝したが、この試合でギャンガンから移籍してきたルドビック・ブラが2点をあげ、その試合を皮切りにこれまで出場12試合で7得点とハイペースで得点をあげている。キリアン・ムバッペと同世代であり、本連載第2047回から第2049回で紹介した2016年に行われた19歳以下の欧州選手権では左のムバッペ、右のブラと欧州中にその名は知れ渡った。また日本との親善試合ではハットトリックも決めており、日本の皆様はよくご存じの選手であろう。しかし、ブラはその後は低迷した。ところがナントに移籍し、かつての輝きを取り戻した。
■衝撃の16歳、リヨンのライアン・シェルキ
一方のリヨンはチャンピオンズリーグの決勝トーナメントを最後の最後でつかんだが、それ以来無敗を続け、冬の移籍市場では積極的に動き、第2622回の本連載で紹介したカール・トコ・エカンビ以外にジンバブエ代表のティノ・カデウェレもルアーブルから獲得し、複数のタイトルを戦う体制は整っている。
ナントのボージョワール競技場、ホームのナントはベストメンバーであるが、リヨンはメンバーを入れ替えながらの布陣となる。しかし、2万5000人の観衆は衝撃的なシーンを目にする。リヨンのトップ下に入ったのは16歳のライアン・シェルキ、予想メンバーに入っておらず、これが先発2試合目である。シェルキは開始55行にムーサ・ダンベレのパスを受けて先制ゴールを奪う。さらに9分にはベルトラン・トラオレのパスから追加点を決める。ナントはその後1点を返したものの、37分にはシェルキがマルタン・テリエのゴールをアシストする。
後半になっても恐るべき16歳の勢いは止まらなかった。68分にはペナルティエリア内で相手の反則を誘い、PKを獲得する。このPKはムーサ・ダンベレが蹴って失敗したが、その直後にはシェルキはムーサ・ダンベレのゴールをアシストし、4-1と差を広げる。ホームのナントは残り10分となったところから2点を返したが、反撃もそこまで、シェルキの活躍でリヨンはフランスカップでも勝ち進み、年が明けてから国内三大タイトルで4連勝を決めたのである。
■2部と1部の首位対決となったロリアン-パリサンジェルマン戦
注目のパリサンジェルマンは1月19日の夜、2部のロリアンとアウエーで対戦した。2部とはいってもロリアンは首位、奇しくも1部と2部の首位決戦となった。ロリアンは20試合消化したところで32得点、16失点、失点数は2部で最少であり、ロリアンの守備がパリサンジェルマンに通用するかどうかが、焦点である。選手層の厚いパリサンジェルマンであるが、負傷者が相次ぎ、ロリアン戦にはエディンソン・カバーニ、マルコ・ベラッティなど8人が離脱している。
■終盤にあげた1点で勝利したパリサンジェルマン
ホームのロリアンは1万4000人のファンの声援と守備を固めた陣形でパリサンジェルマンの攻撃をしのぎ続ける。パリサンジェルマンの攻撃陣は中央にマウロ・イカルディ、右にアンヘル・ディマリア、左にパオロ・サラビア、トップ下にユルゲン・ドラクスラーという布陣であり、ネイマールとムバッペはベンチに控え、カバーニはベンチ外である。両チーム無得点の展開が続いたが、パリサンジェルマンのトーマス・トゥヘル監督はこの2人をピッチに立たせない。そして80分にチアゴ・シウバがあげたクロスにサラビアがジャンプしてヘディングシュート、この一撃が決まり、パリサンジェルマンは1-0という最小限のスコアで2部のリーダーを下し、ベスト16に入ったのである。(続く)