第2634回 パリサンジェルマン、4年ぶりに八強入り(1) コロナウイルスに揺れる欧州
平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、昨年の台風15号、19号などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■コロナウイルスの感染拡大の中で行われたリヨン-ユベントス戦
前回までの本連載ではチャンピオンズリーグの決勝トーナメント1回戦の第1戦の模様を紹介してきた。2月18日にはパリサンジェルマンはボルシア・ドルトムント(ドイツ)に敗れ、2月26日にリヨンがユベントス(イタリア)に勝利し、第2戦はパリサンジェルマンはホームで3月11日、リヨンはアウエーで3月17日に行われ、準々決勝進出をかけて戦うことになる。
しかし、ここで大きな問題となってきたのが欧州におけるコロナウイルスの影響である。前回の本連載ではリヨン-ユベントス戦が不安を抱えながらも行われたことを紹介したが、ユベントスのファンの多くはマスク着用、そして座席位置もまさに隔離された状態で試合が行われた。
■急速に感染が拡大したイタリア
イタリアは中国の一帯一路構想に参画しており、中国との関係が深い。イタリアでは2月21日の時点では感染者は首都ローマでのわずか3人であったが、急増し、リヨン-ユベントス戦のあった26日には500人を超えた。イタリアにおける感染の中心は北部のロンバルディア地方、トリノはこの時点で影響がなかったとはいえ、同じ北部にある大都市ということでリヨン市民からは警戒された。およそ3000人がトリノからリヨンを訪問したが、通常の試合であれば、ビジターのファンが試合前にその町の中心地を練り歩き、場合によっては地元ファンとの衝突も起こるが、この時のユベントスのファンはおとなしく、市の中心部、リヨンであれば、ベルクール広場には姿を現さなかった。そして地元のリヨン市民も外出を避け、ビッグゲームの有無にかかわらず多くの人々が行きかうベルクール広場はほとんど人が歩いていないという異様な雰囲気となった。また、ユベントスファンは自家用車やバス以外に鉄道を利用してリヨン入りしたが、リヨンの主要駅であるペラシュ駅にはイタリアからの列車が到着するたびに市当局の職員が立ち会うなどこれもまた異様な光景であった。試合はリヨンがユベントス戦初勝利、リヨンだけではなくフランス国内のファンが喜んだが、コロナウイルスの感染拡大は深刻なものとなった。
2月29日と3月1日に予定されていたセリエAの試合はトリノで行われる試合も含めて4試合が延期となり、その後、無観客で試合が行われるに至った。3月7日に行われる予定だったラグビーの6か国対抗のアイルランド-イタリア戦はアイルランドでの試合にもかかわらず中止となる。
■欧州ではイタリアに次いで感染者の多いフランス
そしてフランスであるが、最初の感染者は1月25日に確認されている。シトロエンは武漢に工場があるが、撤収し、武漢在住のフランス人を帰還させ、隔離した。その後は緩やかに増加し、最初の死者が出たのは2月15日、感染者が100人を越えたのは2月29日のことであった。ところが3月に入ると感染者が急増し、3月9日時点では感染者は1500人近くになっており、欧州ではイタリアに次いで感染者の多い国となっている。多くの観光客を受け入れるルーブル美術館は職員が感染を恐れたことから3月1日以降休館している。
■無観客試合となったパリサンジェルマン-ボルシア・ドルトムント戦
フランスの中で最も感染者の多い地方がグランテスト地域圏である。大いなる東部という意味のグランテスト地域圏の首府はストラスブールであり、ストラスブール以外にメッス、ナンシー、トロワなどのチームが存在している。グランテスト地域圏からの要請により、3月7日に予定されていたリーグ戦第29節のストラスブール-パリサンジェルマン戦が中止(延期)となった。それ以外の9試合は行われたが、続く第29節については、3月13日のリヨン-スタッド・ド・ランス戦と14日のモンペリエ-マルセイユ戦が無観客試合で行われることとなった。フランス政府は8日に1000人以上の集会を全土で禁止(2月末には5000人以上の集会禁止)することになり、フランスリーグ(1部、2部)は4月15日まで無観客で試合を行うことになった。
そして3月11日のチャンピオンズリーグのパリサンジェルマン-ボルシア・ドルトムント戦も無観客試合となったのである。(続く)