第2641回 フランスカップ準決勝 (4) サンテチエンヌ、38年ぶりの決勝進出
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■フランスカップの栄光から遠ざかっているサンテチエンヌ
フランスカップ準決勝の第2試合は3月5日に行われたサンテチエンヌ-レンヌ戦である。本連載第2638回で紹介した通り、サンテチエンヌはフランスカップの優勝から40年以上遠ざかり、それ以外のタイトルも2013年にリーグカップで優勝しただけである。
サンテチエンヌはこれまでのフランスカップでは6回優勝しているが、初優勝は1962年のことであり、今回の準決勝に残った4チームの中では最も早く優勝している。リヨンの初優勝は1964年、レンヌのそれは1965年であり、パリサンジェルマンに至ってはクラブの創立が1970年である。1977年に6回目の優勝を果たしたが、その後の決勝進出は2回だけ、1981年にはバスティアに敗れ、1982年にはパリサンジェルマンにPK戦で敗れている。パリサンジェルマンの初優勝を許してからは決勝に縁がなく、その後は準決勝に3回進出、しかし、1990年はモンペリエ、1993年はナント、2015年はパリサンジェルマンにいずれも敗れている。直近2回の準決勝はアウエーゲームであり、今年はホームゲームということで38年ぶりの決勝進出、43年ぶりの優勝を目指したい。
■今季初の満員となったジェフロワ・ギシャール競技場
今季はリーグ戦でも低迷しており、これまでにパリサンジェルマン、リヨン、マルセイユという人気チームを迎えた試合でも満員とならなかったが、この日は今季初めてジェフロワ・ギシャール競技場は満員となった。
対するレンヌは昨年の覇者、本連載でも紹介してきた通り、秋のヨーロッパリーグのグループリーグでは散々な成績で早期に敗退したが、12月1日にリーグ戦でサンテチエンヌに勝利してから調子を上げ、リーグでの順位を3位まで上昇させてきた。
今世紀に入って唯一のサンテチエンヌのタイトルが2013年のリーグカップ優勝であるが、この時の決勝の対戦相手がレンヌである。
■先制点はレンヌ、前半終了間際に追いついたサンテチエンヌ
緑のサンテチエンヌ、赤と黒のレンヌの戦い、最初の30分は両チームとも得点をあげることができない。しかし、30分過ぎにサンテチエンヌには2つの不幸が重なる。まず33分、サンテチエンヌはストッパーのウィリアム・サリバがレンヌのラファンナをペナルティエリアの中で倒してしまい、PKがレンヌに与えられる。ここまでほとんどいい仕事をすることができなかったレンヌのエンバイ・ニアンが中央に強く蹴る。シュートはバーのすぐ下を通過し、ゴールネットを揺らす。さらに39分、サンテチエンヌはヨアン・カバイエが負傷して退場してしまう。
サンテチエンヌは先制を許し、負傷により予期せぬ交代を余儀なくされたが、前半のうちに同点に追いついた。43分に左サイドからロイス・ディオニがクロスを入れる。これをティモテ・コロジェイチェクがレンヌの選手を交わしてシュート、同点ゴールとなってジェフロワ・ギシャールを埋めた3万人のボルテージが上がる中でハーフタイムを迎えた。
■後半アディショナルタイムの決勝点で38年ぶりの決勝進出を決めたサンテチエンヌ
後半は最初の20分はサンテチエンヌ、それ以降はレンヌの時間となった。サンテチエンヌは59分と66分にデニ・ブアンガがシュートを放つ。一方のレンヌは70分を過ぎたところからリズムをつかむ。ニアンが70分、ロマン・デルカスティージョが72分、ジェームズ・レアシリキが81分、バンジャマン・ブーリジョーが85分にシュートを放つがいずれも得点には至らず、90分が過ぎる。このまま延長戦かと思われたが、94分にサンテチエンヌが試合を決めた。ブアンガがレンヌのペナルティエリア付近でボールを奪い、前方にパス、これをリャド・ブーデブーズがグラウンダーでシュートし、決勝点となる。
ほぼ互角の試合を制したサンテチエンヌは実に38年ぶりの決勝進出を決めた。試合後はファンがピッチにおり、快挙を祝福した。
サンテチエンヌは決勝戦でパリサンジェルマンと対戦するが、その際はパリサンジェルマンの初優勝であった。パリサンジェルマンは現在では12回の優勝を誇る。6回優勝のサンテチエンヌとあわせて両チームの優勝回数が18回というのは、2016年の19回(パリサンジェルマンが9回、マルセイユが10回)に続いて2番目に多いのである。(この項、終わり)