第349回 準々決勝ギリシャ戦(2) 守備陣に相次ぐ負傷者、立ち込める暗雲

■Aシードがグループリーグトップを独占

 今回の欧州選手権のグループリーグを振り返ってみればAシードの4か国(ポルトガル、フランス、スウェーデン、チェコ)が各グループで首位となっている一方、欧州の4大リーグと言われたリーグを有するBシードの4か国には苦難の大会となった。スペイン、イタリア、ドイツがグループリーグで姿を消し、イングランドも決勝トーナメント初戦でポルトガルに敗れている。

■第3戦でようやく立て直したフランス

 これらの4か国のリーグに続く欧州ナンバー5のリーグを抱えるフランスはグループリーグを2勝1分と首位で突破している。しかしながらその試合内容はAシードにはふさわしくなく、特に初戦のイングランド戦、第2戦のクロアチア戦は敗れてもおかしくないような展開であった。
 そのフランスが持ち直したのが第3戦のスイス戦である。本連載第347回で紹介したとおり、イングランド戦、クロアチア戦の経験からスイス戦ではメンバーを入れ替え、システムも変更している。マルセル・デサイーをメンバーから外し、サイドバックには攻撃のできる選手を起用し、ディフェンスラインは右にビリー・サニョル、左にビシャンテ・リザラズ、ストッパーにリリアン・テュラムとミカエル・シルベストルとなっている。そして左右に攻撃的MFを配置する4-4-2システムではなく、攻撃の軸にジネディーヌ・ジダンを据え、ジダンをトップ下におく4-3-1-2システムへと変更した。ようやく落ち着いた戦いを見せて本連載第347回では1996年欧州選手権同様、グループリーグ最終戦でベストメンバーを見出した、と述べたが、ギリシャ戦を前に暗雲が立ち込めた。

■サニョル絶望、ビエイラ欠場、ガラスは微妙

 スイス戦で左腕を負傷し、前半で退いたサニョルは骨折が判明して今大会絶望、サニョルに代わってスイス戦の後半から出場したウィリアム・ガラスは左足首を捻挫し、試合終了直前にピッチを去っている。またパトリック・ビエイラは太ももに痛みを訴えている。守備陣に負傷者が続出し、準々決勝を迎えるに当たって大きな不安材料となった。長期間にわたって行われる欧州選手権やワールドカップの本大会は、1試合あたりの交代選手の数こそ3人と限定されているものの、それらの予選や親善試合とは異なり、登録した23人のメンバー全員がベンチ入りしている。これは大会期間中の選手の負傷に対応するためのもので、どのチームも各ポジションに2人ずつ、GKは3人のメンバーを登録している。したがって、負傷者が出ても同じポジションでなければ、対応可能である。しかし、今回のフランスの場合は深刻である。右サイドバックのサニョルが左腕骨折により完全に離脱してしまったことから、このポジションには本来ストッパーであり、しかも右足首捻挫とコンディションが万全でないガラスを起用することを余儀なくされる。また、ガラスをサイドで起用することにより、ストッパー陣はテュラム、シルベストルに加え、クロアチア戦で衰えを見せたデサイーでまかなうことになってしまう。さらに、守備的MFとして敵の攻撃をつみとってきたビエイラの代わりにオリビエ・ダクールあるいは若手のブルーノ・ペドレッティを起用することになり、最終ラインへの負担は増えていくと思われる。大会前まで無失点を続けてきたフランス守備陣が本大会でもろくも崩れ、ようやく第3戦で解決策を見出した矢先のアクシデントとなってしまったのである。

■攻撃陣には負傷者なし、守備の弱体化をカバーできるか

 1996年欧州選手権のグループリーグ第3戦のブルガリア戦ではテュラム、ローラン・ブラン、デサイー、リザラズと言う黄金の最終ラインが誕生し、決勝トーナメントに進出し、準々決勝のオランダ戦も同じ最終ラインが無失点に抑えている。幸いなことに攻撃陣は負傷者はおらず、ジダンを中央に配置することにより、ロベール・ピレスが本来の左サイドでプレーすることができる。守備のハンディキャップを攻撃陣が挽回するのか、ギリシャとの準々決勝がいよいよキックオフとなる。(続く)

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