第2650回 追悼、ミッシェル・イダルゴ (8) ワールドカップ初戦のイタリア戦は逆転負け
平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、昨年の台風15号、19号などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■欧州、南米のチームだけで構成される厳しいグループに入ったフランス
監督であるミッシェル・イダルゴに加え、22人のメンバー全員がワールドカップ本大会初出場となったアルゼンチン大会のフランスは、強豪イタリア、開催国アルゼンチン、中央の古豪ハンガリーの順に一次リーグで対戦する。ワールドカップ本大会でグループリーグの4チームがいずれも欧州、南米のチームで構成されるのはアルゼンチン大会のこのグループ1とグループ3(スペイン、スウェーデン、オーストリア、ブラジル)が最後である。
アルゼンチン大会は最後の16チームによるワールドカップ本大会で、4チームずつ4つに分かれた一次リーグの上位2チームが二次リーグに進出する。グループリーグの抽選時にシード分けがなされたが、フランスは最下位の第4シードとなった。第4シードに入ったのはオーストリア、フランス、イラン、チュニジア、フランスは14番目のチームと目され、欧州、南米勢の中では最下位にランキングされた。
■二強二弱の構図、フランス、ハンガリーは連敗で早々に敗退
フランスにとってはイタリア、アルゼンチンのいずれかから勝ち星を奪うことが一次リーグ突破の条件といえるであろう。一方、下馬評では二強二弱と言われ、二強のアルゼンチンとイタリアは、最初の2試合で二弱のフランスとハンガリーと対戦、ここで連勝すれば、二次リーグ進出を確定し、他のリーグの状況を勘案して最終戦の直接対決を迎えることができる。結果はその通りとなった。フランスは初戦でイタリアに敗れ、第2戦でもアルゼンチンに敗れる。そしてフランスに勝利したイタリアとアルゼンチンはともにハンガリーに勝利して目論見通りの結果となった。フランスがユニフォームを間違えたという逸話の残るハンガリー戦はすでに敗退したチーム同士の消化試合であった。
しかし、アルゼンチンまたはイタリアに勝てば二次リーグ進出というのはハンガリーも同じであり、第1戦はイタリアがフランス、アルゼンチンがハンガリーを下しているが、いずれも先制点は負けたチームであり、イタリア、アルゼンチンは逆転して初戦を勝利している。
■12年ぶりのワールドカップに出場したフランスの先発メンバー
さて、強豪に力及ばず連敗したフランスであるが、イダルゴ監督の起用したメンバーに着目して、アルゼンチンでの3試合を振り返ってみよう。
第1戦のイタリア戦、GKはジャン・ポール・ベルトラン・ドマン、DFはマキシム・ボッシ、ジェラール・ジャンビオン、パトリス・リオ、マリウス・トレゾール、MFはミッシェル・プラティニ、アンリ・ミッシェル、ジャン・マルク・ジルー、FWはディディエ・シス、クリスチャン・ダルジェ、ベルナール・ラコンブという布陣である。2年3か月前のイダルゴ監督の初陣のチェコスロバキア戦で代表にデビューした選手が実に4人(リオ、ボッシ、プラティニ、シス)に上る。イダルゴが代表監督に就任する前に代表での経験があったのはベルトラン・ドマン、ジャンビオン、トレゾール、ミッシェル、ジルー、ラコンブの6人であるが、この中で主将のトレゾールとミッシェルはイダルゴもチームの柱としてキャリアを重ねてのワールドカップ出場となる。
■開始30秒で得点を決めたベルナール・ラコンブ
また、GKのベルトラン・ドマンは192センチと長身であり、ナントの選手として活躍したが、このチェコスロバキア戦に出場した以降は2年以上、代表から離れていた。この年の4月のブラジル戦で代表に復帰、アンドレ・レイの負傷離脱もあり、ワールドカップ初戦の先発となった。そしてベルトラン・ドマンはキックオフ直後にロングフィード、ミッシェル、シスとつなぎ、最後はラコンブがヘディングで名手ディディエ・ゾフからゴールを奪う。開始わずかに30秒、フランス代表史上最短時間でのゴールとなった。しかし、イタリアは29分にパオロ・ロッシが同点ゴール、54分にレナート・ザッカレリが逆転ゴールを決め、フランスは初戦を黒星でスタートしたのである。(続く)