第2662回 フランスリーグ打ち切り (1) 欧州五大リーグで最初に打ち切り決定

 平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、昨年の台風15号、19号などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■3月中旬以降、試合が行われなかったフランスリーグ

 新型コロナウイスルの感染拡大の影響を受けてフランスでは3月の中盤から試合が行われていなかったが、4月30日に2019-20シーズンの打ち切りを発表した。 欧州の中では最初に火が付いたのがイタリア、イタリアでは2月下旬から無観客試合となった。フランスは中国の武漢と経済的なつながりのある東部のグランテスト地方で最初に感染が拡大し、1部リーグで最初に影響があったのは3月7日の第28節のストラスブール-パリサンジェルマン戦の中止であった。しかし、その翌週の半ばの11日に行われたチャンピオンズリーグの決勝トーナメントのパリサンジェルマン-ボルシア・ドルトムント(ドイツ)戦は無観客で行われ、その週末の第29節は全試合が中止となり、その後は全く試合が行われないままになっていた。

■経済崩壊を防ぐために外出禁止を解除

 各チームは活動を休止していたが、リーグ側は6月中旬にリーグを再開し、7月末までで残りのリーグ戦10試合を消化する計画を立てていた。しかし、再開のめどの立たないままに時間が過ぎていったが、フランスでは4月28日にエドゥアール・フィリップ首相が国民議会で演説を行った。この演説は3月中旬以来続く外出禁止が長引けば経済を崩壊させる危険性があるということで経済崩壊を防ぐためにも経済活動を再開させ、ウイルスと共存しながら活動していくということをフランスは目指していることを明らかにするものであった。そして外出禁止を5月11日に解除するという目標を掲げたのである。
 実際にフランスの2020年度の第1四半期の実質GDP成長率はマイナス5.8%となった。フランスが四半期ごとのGDPを集計するようになった1949年以降では最大の下げ幅を記録した。そして失業保険の申請件数も過去最大となっている。もちろん、失業者の中には一時的な外出禁止による失業、すなわち外出禁止が解ければ復職するケースもあるが、外出禁止期間に会社が倒産などすれば、戻る場所がなくなり、深刻な問題となる。
 この時点でフランスにおける死者の数は2万4000人、米国、イタリア、スペイン、英国に次いで世界で5番目に多い国となっているが、外出禁止期間に低所得者層が大きく打撃を受けている。パリ郊外では暴動にまでは発展しなかったが、車に放火し、機動隊に爆発物を投げつける騒ぎが起こっている。これが発展して飢餓による暴動の危険性も考えられることから、」テレワークは維持するものの、テレワークに参加できなかった層の人たちにも経済活動に参画し、生計を立てることができるように、ウイルスとの共存による経済再開に踏み出すことを宣言したのである。

■相変わらず制限のある大規模集会

 しかしながら、その中で制限を相変わらず受けたのが大規模集会である。大型の美術館、博物館、映画館、コンサートホールなどの施設は引き続き閉鎖される。そしてスポーツに関しては「5000人以上の集まる大規模なスポーツイベントやフェスティバルなど、特にプロサッカーは9月まで再開できない」とフィリップ首相は演説の中で述べた。

■リーグ打ち切りの意思決定を速やかに行ったフランス

 この発言を受けてフランスプロサッカーリーグはさっそく会議を行い、4月30日に1部リーグ、2部リーグの打ち切りを発表する。サッカーの世界での上位団体であるUEFAは可能な限り試合を消化することを望んでおり、死亡率の低いドイツは5月中の再開に向けて準備をしていたが、逆にオランダは政府が大規模集会の開催を禁止し続けることから、再開を断念し、打ち切りとした。
 フランスはイングランドとともに6月の再開を目指していたが、首相の方針とあっては従わざるを得えない。欧州五大リーグで最初に打ち切りを決定したのがフランスリーグとなった。そして、この打ち切りに伴って、順位決定、降格チーム、昇格チームの決定、来季の欧州カップへの出場国決定なども合わせて意思決定しなくてはならないのである。(続く)

このページのTOPへ