第2679回 サッカーのない日常となったフランス(1) 欧州五大リーグで唯一打ち切りのフランス

 平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、昨年の台風15号、19号などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■経済活動が再開した欧州諸国

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響について本連載では継続的に紹介してきた。中国に端を発し、イタリアをはじめとする欧州で感染が拡大してきた3月中旬にフランスを含む欧州ではスポーツイベントが中止、延期となった。そしてフランスは政府の指示により、4月末に今季のプロスポーツの打ち切りが決定した。
 一方、新型コロナウイルスの感染拡大についてはフランスをはじめとする欧州諸国では峠を越し、長引く社会活動の自粛は、経済的には大きな打撃を与えており、各種の経済活動が再開されている。

■5月5日に再開を決定、5月16日にリーグ戦を再開したドイツ

 サッカー界も例外ではない。欧州五大リーグの状況を見てみると、いち早く再開したのはドイツである。フランスがシーズンの打ち切りを決定した翌週の5月5日にはアンゲラ・メルケル首相がリーグの再開を決定する。この決定を受けてブンデスリーガは5月16日に無観客で再開している。ドイツは無観客でも再開することを前提に3月初旬の中断時から検討してきた。観客がいなければサッカーではないと考える国との文化の違いが、早期にリーグ戦を再開する決め手となったのであろう。ドイツは感染そのものについても欧州の中では抑え込みに成功したと評価されており、プロサッカーについても欧州の主要リーグの中では最速の再開となり、6月中にリーグ戦の全日程を終了(18チームのため、第34節が最終節)、7月最初の週末にはドイツカップの決勝を控えている。

■6月中旬に再開、二強の競り合うスペイン、リバプールが優勝したイングランド

 ドイツに続いて再開したのがスペインである。スペインリーグは5月下旬にシーズン再開を決定した。各チームは集団での練習を6月1日に開始し、6月11日にセビリア-ベティス戦というセビリアダービーで3か月の中断からキックオフにたどり着いた。リーグ戦は7月19日まで予定されており、残る11節を1月強の期間で消化することになっている。レアル・マドリッドとバルセロナが激しい首位争いをしており、最後の最後まで見どころの多い戦いとなっている。
 イングランドのプレミアリーグの再開の決定も5月の末であった。5月に入ってから各クラブは練習を再開、英国政府も6月以降のリーグ再開を認めたことにより、6月17日からリーグ戦を再開した。6月中旬に再開し、8月2日までの日程で残りの試合日程を消化するが、無観客で行われることが決定している。
 プレミアリーグは首位リバプールの独走、中断時に2位のマンチェスター・シティに勝ち点25の差をつけており、6月25日に30年ぶりの優勝を決めた。欧州カップ出場や降格などの順位争いはあるが、消化試合となってしまった。しかし、テレビやインターネットでの観戦となるファンに対が、リーグ側は粋な計らいを見せている。再開後には全部で92試合予定されているが、この試合開始時間をずらすことによって、ファンはすべての試合をライブで楽しむことが可能となった。また、週末の試合は金曜日から月曜日、週半ばの試合は火曜日から木曜日に設定し、ファンは毎日サッカーの試合を見ることができる。過密日程を逆手に取った英国人の知恵である。

■欧州のコロナウイルスの震源地となったイタリアも6月下旬にリーグ戦再開

 そして、欧州でのコロナ感染の最初の拠点となったイタリアは、最も早く中断し、リーグ戦は最も遅く再開することとなった。リーグ戦であるセリエAの再開は6月22日であった。なお、リーグ戦に先立ってイタリアカップの準決勝と決勝が行われており、ナポリがユベントスをPK戦で下し、優勝している。プレミアリーグ同様、最終節は8月最初の週末であるが、こちらの首位争いはユベントスとラツィオが競り合っており、覇権の行方は分からない。
 このように他の欧州五大リーグは、すべて再開にこぎつけており、リバプール優勝後の市民の騒ぎ方は別として、再開後に目立ったトラブルは見られない。サッカーのない日常となったフランスはどうなるのであろうか。(続く)

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