第358回 インタートトカップ開幕(2) リール、新本拠地で先勝
■リーグ開幕の前後に控える準決勝と決勝
リールとナントが挑むインタートトカップ準決勝は8月6日のフランスリーグの開幕直前にあたる時期に行われ、第1戦は7月28日、第2戦は8月4日に行われる。リーグ開幕に照準を合わせて他のチームが親善試合や合宿を行うのに対し、リールとナントは欧州を駆け巡って戦いを行う中でのリーグ開幕となる。
さて、12チームが準決勝に進出し、6試合ある準決勝に勝ち抜けば、8月10日と24日には決勝3試合が予定され、わずか3枚のUEFAカップ出場チケットをめぐって真夏の戦いが繰り広げられるが、その組み合わせを確認しよう。リールは準決勝でクロアチアのスラベン・ベルポとまずホームで対戦、決勝ではベルギーのゲンクとポルトガルのレイリアの勝者が待っている。一方、ナントはチェコのスロバン・リベレツとアウエーで準決勝を戦い、ニースを倒したデンマークのエスベリとドイツのシャルケ04の勝者と決勝を争うことになる。
■本拠地の改修工事が始まったリール
リールのホームスタジアムは収容人員2万人強のグリモンプレス・ジョーリスである。しかし、建造されて約30年経過しており、収容人員を3万3000人へ拡大し、競技場内の様々な施設を充実させるため、このたび1年半かけて大幅な改修工事を行うことになった。リールは地下鉄も走っているフランス第5の都市である。すなわち、1998年のワールドカップフランス大会で開催都市とならなかった最大の都市である。そのため、スタジアムのインフラ整備が遅れをとってしまった。約30年間慣れ親しんできた競技場が使用できなくなるため、リールが7月以降は他のスタジアムで試合を開催することになった。リールが当面ホームスタジアムとして使用するのはリール近郊のビルヌーブ・ダスクにあるリール・メトロポール競技場である。フランスのサッカーファンにはなじみの薄い競技場であるが、京都出身の志士、平尾誠二の終焉の地として日本の皆様ならば誰もが知っている競技場であろう。
■ホームで先勝したリール、アウエーで惜敗のナント
この競技場でのデビュー戦となったリールは幸先よいスタートを切る。8分にクリストフ・ランドランが先制点、29分にはディナモ・ミンスクとの第2戦の殊勲者マット・ムシルーが追加点、サイドが変わった後半立ち上がりの49分には相手のクロアチアと同じ旧ユーゴスラビアのスロベニアの代表選手であるミレンコ・アシモビッチが3点目を決めて、第1戦で3-0と十分な得点差をつけることに成功したのである。
一方、ナントは辛い敗戦となった。チェコに遠征し、試合開始からチャンスをつかむが、ゴールネットを揺らすには至らない。逆に27分に相手に先制を許し、その後もナントはチャンスをつかむが、得点には至らず、後半にはフレデリック・ダローシャが退場処分を受けてしまい、10人での戦いを余儀なくされ、そのまま試合終了となる。敗戦とは言え、1点差であったこと、そして控えGKのビリー・グロンダンが活躍したことが今シーズンを見渡した際、好材料であることが救いであったと言える。
■強行日程を回避したチームへの対抗心
リールはクロアチアに遠征し4日に第2戦を戦ったあと、7日には新本拠地にオセールを迎える。一方、最少得点差を追うナントは4日に本拠地ボージョワールにスロバン・リベレツを迎え、7日には東部のメッスに移動し、シーズン開幕を迎えることになる。そして首尾よく準決勝を勝ち抜いた場合でも開幕戦の3日後の10日には決勝戦の第1戦を戦うことになり、非常に厳しいスケジュールをこなさなくてはならない。前回の本連載でもご紹介したが、このようなシーズン開幕前後の強行日程を回避するため、フランスではリーグ7位のマルセイユ、リーグ8位のランス、9位のレンヌと立て続けに出場辞退チームがあった。もちろんインタートトカップを勝ち抜くことも必要であるが、リーグ戦においてもこれらの出場辞退組には負けたくないと強い思いを持っているであろう。
リーグ第2節の8月15日には早くもリールがマルセイユと対戦するが、この日はちょうどインタートトカップ決勝の第1戦と第2戦の中間に当たる。リールは準決勝同様に決勝も第1戦に快勝してマルセイユに乗り込むことができるのだろうか。(この項、終わり)