第2723回 パリサンジェルマン、 準優勝に終わる(7) キングスレー・コマンの決勝点でバイエルン・ミュンヘンが優勝
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■この試合がパリサンジェルマンでの最終戦となるチアゴ・シウバ
前回本連載で紹介した通り、準決勝とほとんど同じメンバーでパリサンジェルマンもバイエルン・ミュンヘン(ドイツ)も決勝に臨む。
この試合が欧州のサッカー絵は今季最終戦となるが、すでにフランスではフランスリーグが始まっている。チャンピオンズリーグで準決勝に進出した時点でパリサンジェルマンとリヨンは国内リーグ戦の開幕と重なり、大西洋を望むリスボンで新シーズンの開幕を迎えた。
旧シーズンと新シーズンが重なるという通常では考えられないタイミングに重なってしまった選手がいる。パリサンジェルマンのチアゴ・シウバである。主将を務めるブラジル人のチアゴ・シウバは2012年にイタリアのACミランから移籍、入団してすぐに主将を務めた。移籍初年でパリサンジェルマンの19年ぶりのリーグ制覇に導いている。19年前もリーグ優勝の立役者はライー、バウド、リカルド・ゴメスというブラジル勢であった。そして、チアゴ・シウバの加入以降、パリサンジェルマンがリーグ優勝を逃したのは1季だけ、まさに黄金時代を代表する選手である。そのチアゴ・シウバも35歳となり、この試合の先発メンバーで両チームを通じて最年長となった。2020年でパリサンジェルマンとの契約の最終年を迎えるが、契約を更新せず、イングランドのチェルシーに移籍することがすでに決まっている。ブラジル代表でも活躍するチアゴ・シウバであるが、国際タイトルとは縁がなく、今回のチャンピオンズカップで優勝すれば、初めての主要な国際タイトルとなる。
■リヨンの決定機を3たびストップした主将マヌエル・ノイアー
一方、バイエルン・ミュンヘンも主将に注目である。リヨンとの準決勝は3-0であり、ボール支配率などもバイエルン・ミュンヘンが圧倒したが、リヨンが放った枠内シュートはいずれも決定的であった。その3本のシュートをことごとくセーブしたのがノイアーであった。もしこれらの3本のシュートのうち、ノイアーが防げないものがあれば試合の流れはどうなったかわからない。そしてパリサンジェルマンも準決勝では負傷でセルヒオ・リコにポジションを譲っていたケイロス・ナバスも戻ってきた。ナバスは今季のチャンピオンズリーグでほぼ80パーセントのセーブ率を誇り、この数値はノイアーを上回っている。両チームとも攻撃陣が話題にあるが、最後の守備であるGKにも注目したい。
■優勢に試合を進めるバイエルン・ミュンヘン
試合はパリサンジェルマンのキックオフで始まった。両チームともパスをつなぎ、ボールを支配して試合を進めていくチームである。あえて違いを探すならば、個の力によって最後の得点を奪う力に頼るパリサンジェルマン、エースを抱えながらも最後までチームで得点をあげるバイエルン・ミュンヘンと色分けできる。
試合はややバイエルン・ミュンヘンが優勢なまま時間が過ぎていく。ボール保持率で劣るパリサンジェルマンであるが、サイド攻撃に活路を見出そうとする。
最初のビッグチャンスはバイエルン・ミュンヘン、22分にエースのロベルト・レバンドフスキのシュートがポストを直撃するが、得点はならなかった。その直後にはパリサンジェルマンのアンヘル・ディマリアがシュートをするが惜しくも枠をわずかに外れる。前半終了間際にはキングスレー・コマンがペナルティエリア内で倒されたように見えたが、ノーファウル、前半はスコアレスで後半を迎える。
■決勝点はパリサンジェルマン出身のキングスレー・コマン
バイエルン・ミュンヘンが優勢に試合を進めていく中で、後半に入るとパリサンジェルマンの消耗が激しくなる。59分、ついに得点が生まれた。ジョシュア・キミッヒのクロス、パリサンジェルマンのマークが甘くなる。ここに飛び込んできたのがパリサンジェルマン出身のコマンであった。コマンのヘディングシュートがネットを揺らす。ハイレベルな戦いであったが、パリサンジェルマンにとっては1点が遠かった。バイエルン・ミュンヘンが6回目の優勝を果たした。
パリサンジェルマンは前身のチャンピオンズカップを含め、決勝に進出した41チーム目のチームである。しかし、初めて決勝に進出したチームは過去6チーム準決勝に終わっている。初の決勝進出で優勝したのは1997年のボルシア・ドルトムントまでさかのぼらなくてはならない。欧州の頂点への壁は厚かったのである。(この項、終わり)