第364回 メンバー一新の初戦はドロー
■激動のフランス代表、ワールドカップ予選前の唯一の試合
ポルトガルでの準々決勝敗退、レイモン・ドメネク新監督就任、ジネディーヌ・ジダンやマルセル・デサイーなど主力4人の代表からの引退、そして12日に発表されたメンバーには大量7人の初選出選手が名を連ねると言う激動のフランス代表。さらに、クラブレベルでも選手の移籍やシーズン開幕という時期にあたり、新体制での準備はいくら時間があっても足りないはずであるが、カレンダーは次々とめくられていく。9月に入ればすぐにワールドカップ・ドイツ大会の予選の初戦であるイスラエル戦が待っている。そして8月18日には新監督・新体制の初戦となる「8月の親善試合」であるボスニア・ヘルツェゴビナ戦がレンヌで行われる。イスラエル戦の前にある唯一の親善試合であり、貴重な機会である。
■旧ユーゴスラビアと交流の盛んなフランス・サッカー
さて、対戦相手のボスニア・ヘルツェゴビナであるが、ユーゴスラビアの解体によって誕生した国であり、フランスとはこれが初対戦となる。ユーゴスラビアの内戦についてはフランス外交筋も大きく関与してきたが、その関与がユーゴスラビア解体後の各国とのサッカー交流にも現れている。旧ユーゴスラビアはユーゴスラビア(現セルビア・モンテネグロ)、スロベニア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、マケドニアの5か国に分かれ、サッカーの国際舞台に復帰して10年も経過していないが、フランスはこの短い期間にすでにマケドニア以外の4か国と対戦し、しかも親善試合で対戦している。9月からのワールドカップ予選はグループ7に所属しているが、スペイン・ベルギーと言う常連国だけではなく旧ユーゴスラビアのセルビア・モンテネグロともドイツ行きをかけて戦うことになる。
■初代表4人が先発メンバーに
ドメネク監督がレンヌのルート・ド・ロリアン競技場のピッチに送り出した11人は驚きの11人となった。GKこそベテランのファビアン・バルテスであったが、ディフェンスはフランス伝統の4バックではなく3バック、しかも若手のウィリアム・ガラス以外はエリック・アビダル、セバスチャン・スキラッチと初代表メンバーが最終ラインを固める。MFは守備的な位置の中央にブルーノ・ペドレッティ、両翼には初代表のパトリス・エブラ、代表2試合目のベルナール・メンディとこれまた若手。攻撃的MFは若手のジェローム・ロタンと初代表のリオ・アントニオ・マブーダ、2トップのFWはペギー・リュインデュラとティエリー・アンリである。11人中4人が初代表、そしてそれ以外も2002年ワールドカップに出場したメンバーはバルテスとアンリのみと言う代表経験の浅い選手を中心に構成された。試合は立ち上がりの7分にリュインデュラがCKをゴールに入れて先制点。18分には相手選手のハンドでPKを得るがアンリがPKを失敗してしまう。そして37分にはボスニア・ヘルツェゴビナに同点に追いつかれてしまう。
■経験不足のメンバーで迎える2週間後のイスラエル戦
同点で迎えたハーフタイムが終わり、ドメネク監督は4人の選手を入れ替えた。ピッチに姿を現したのはベテランの域に入ったロベール・ピレス、若手攻撃陣のジブリル・シセとシドニー・ゴブー、初選出のDFガエル・ジベである。そして後半は、システムを伝統の4-4-2に変更する。伝統の4バックとは言っても、ガラス以外は全員初代表、そしてガラスも代表の仲間入りをしたのは2002年のワールドカップ以降であり、経験不足は否めない。しかし、そのガラスはこの試合が代表21試合目でありながら、すでに代表歴ではこのチームでピレス(代表75試合目)、パトリック・ビエイラ(代表歴72試合)、バルテス(71試合目)、アンリ(代表64試合目)に次ぐ5番目に代表経験が豊富な選手となってしまっているのである。5人が代表にデビューしただけではなく、メンディは代表2試合目、リュインデュラは代表3試合目、この2人は欧州選手権のメンバーには入っていない。このように経験不足のメンバーをいかに御していくかが新監督の腕前であろう。後半は両軍無得点でドメネク新監督のデビュー戦は前任のジャック・サンティーニ監督、前々任のロジェ・ルメール監督同様、引き分けに終わった。しかし、前の2人がアウエーで戦ったのに対し、今回のデビュー戦は国内のホームゲームである。2週間後には早くもイスラエル戦が控えている。新チーム結成早々、模索する中での厳しい戦いが予想されるのである。(この項、終わり)