第2813回 2022年ワールドカップ予選開幕(3) ディナモ・キエフ勢とシャフタール・ドネツク勢が主力のウクライナ
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■初戦の相手は第2シードのウクライナ
3月18日に発表されたメンバーは3月22日の月曜日にクレールフォンテーヌに集合する。24日にウクライナ、28日にカザフスタン、31日にボスニア・ヘルツェゴビナと1週間に3試合が予定されている。その中でも最も重要な試合は初戦のウクライナ戦であろう。初戦ということに加え、第2シードと最もフランスとの力量差のない相手である。
■ディディエ・デシャン監督とウクライナ
ウクライナはソ連の解体に伴って誕生した国であり、フランスとの最初の対戦は1999年に行われた欧州選手権オランダ・ベルギー大会の予選である。現在の代表監督であるディディエ・デシャンは主将としてホーム、アウエーの試合とも出場している。ところが、2試合ともスコアレスドロー、フランスは前年のワールドカップと翌年の欧州選手権ではいずれも優勝しているが、その間で最も苦戦した国であり、デシャン監督にとっては苦い思い出であろう。しかし、その後は親善試合、2008年欧州選手権予選、2012年欧州選手権のグループリーグなどで対戦し、フランスが3勝1分と優位な成績を残してきた。
ウクライナのフランス戦初勝利はフランスを土俵際に追い込んだ。それは2014年ワールドカップブラジル大会予選である。フランスはこの予選ではグループリーグでは2位に甘んじ、プレーオフに回る。このプレーオフでウクライナと対戦したが、キエフでの第1戦、ウクライナが2-0と勝利する。フランスは翌週のスタッド・ド・フランスでの試合で3点差の勝利が必要となったが、ママドゥ・サコーが2得点、カリム・ベンゼマが1得点をあげて、3-0というスコアで勝利、ブラジル行きを決めたのである。なお、このブラジルワールドカップ予選は2012年夏に就任したディディエ・デシャン監督にとって初めての予選である。もし、このウクライナ戦で敗退し、ワールドカップ出場を逃していたら、そこでデシャンは監督の座を辞しているかもしれず、2018年のワールドカップ優勝もなかったかもしれない。そういう点では、デシャン監督にとっては感慨深い対戦相手であろう。
■新型コロナウイルスの感染により大敗した昨年11月の親善試合
ウクライナに対して選手としては2引き分け、監督としては1勝1敗であったデシャンにとって直近の対戦となる昨年の10月7日の親善試合はスコアだけ見ればキャリアハイといえる結果となった。この親善試合は当初は同年3月に行われる予定であったが、新型コロナウイルスの感染拡大によって延期となったものである。試合を行う状況が整ったとはいえ、新型コロナウイルスの猛威はとどまることを知らず、この親善試合にも大きな影響を与え、両チームは感染による戦力ダウンを余儀なくされた。深刻であったのはウクライナの方で、GKの選手が次々と感染し、GKコーチをメンバー登録する始末であった。このGKの不在が大きく影響し、フランスは7-1と大勝し、スタッド・ド・フランスでの最多得点となったが、この結果は参考にならないであろう。
■ウクライナ国内の二大クラブの選手で固めた代表チーム
なぜならば、ウクライナは新型コロナウイルスでチームが崩壊する前の10月にはスペインに1-0と勝利、ドイツにも1-2と惜敗し、世界ランキングは24位であるからである。2位のフランスにとって侮ってはならない相手である。
さらに新型コロナウイルスの感染拡大により、各クラブチーム、代表チームの活動が大きく制限されているうえで看過できない要因がある。それが選手の所属クラブである。フランス代表の26人の多くは国外のビッグクラブに所属しており、国内のクラブに所属する選手は6人に過ぎない。国内にもパリサンジェルマンというビッグクラブはあるが、パリサンジェルマンに所属しているのはキリアン・ムバッペとプレスネル・キンペンベの2人だけである。新型コロナウイルスの影響によって国内外に多数の選手が分散していることは移動が困難になった状況では望ましいことではない。
一方のウクライナ代表であるが、33人のメンバーで国外組は少数派で11人である。22人が国内のクラブに所属しているわけであるが、ディナモ・キエフが11人、シャフタール・ドネツクが9人である。ほとんどがチャンピオンズリーグやヨーロッパリーグの常連の強豪チームに所属しており、コロナ禍において、そのメリットを発揮するのではないだろうか。(続く)