第2847回 ブダペストでハンガリーとドロー(1) ホームの大観衆が後押しするハンガリー
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■かつてのマジック・マジャールの面影はない現在のハンガリー
初戦は劣勢ながら、オウンゴールの1点でドイツに勝利し、勝ち点3を獲得したフランス、これで主要国際大会での無敗記録を8に伸ばした。
第2戦はハンガリーと戦うが、死のグループにあってやや力の劣るチームであると目されている。マジック・マジャールと言われて世界最強と言われたのは1950年代のことであり、ワールドカップは1986年大会を最後に本大会に出場できず、欧州選手権も今世紀になってからは2016年大会に出場しただけである。イングランドに大勝してマジック・マジャールの名をとどろかせたのがウェンブリー競技場であったが、今大会でマジック・マジャールがウェンブリーに戻ってくる(決勝トーナメント進出)とはだれも思っていないであろう。
■プレーオフを経て本大会に出場したハンガリー
今大会の予選についても予選では第4シードになりグループEではクロアチア、ウェールズ、スロバキアに次ぐ4位、シード順通りの結果となった。クロアチアとウェールズが本大会出場となったが、今大会は予選のグループリーグの上位2位までの20チーム以外にも本大会出場の道が開けており、それが2018-19ヨーロッパリーグの成績によるプレーオフである。グループリーグで本大会出場権を獲得できなかった16チームがプレーオフを戦い、4つだけの椅子を争う。ハンガリーはヨーロッパリーグではリーグCで2位になっており、16チーム中で下から6番目のチャンスを得た。
プレーオフは1回戦制のトーナメント、出場国の中でもヨーロッパリーグの成績が下位のハンガリーは準決勝はアウエーでブルガリアと対戦する。ソフィアで行われた試合、ハンガリーは3点を先行し、3-1で勝利する。決勝はアイスランドと抽選の結果、ホームで対戦した。アイスランドは前回のフランス大会では旋風を起こしたことは記憶に新しい。今大会も期待されたが、予選ではフランス、トルコに次いで3位にとどまる。プレーオフの決勝は抽選の結果、ハンガリーのホームゲームとなるが、ブダペストのプスカシュアリーナは無観客となる。準決勝とは逆の展開となり、ハンガリーはアイスランドにリードを許す。アイスランドが本大会出場かと思われたが、ハンガリーは88分に同点に追いつき、92分に逆転ゴールを決めて、2大会ぶりの本大会出場を決めたのである。
■ポルトガル相手に終盤まで0-0のタイスコア
結局、ハンガリーは本大会に出場した24か国のうち下から2番目であった。したがって、初戦でポルトガルに0-3と敗れたのは順当な結果と思う読者の方は少なくないであろう。しかし、実際にはポルトガルはハンガリーに対して80分過ぎになるまで得点を奪うことができず、試合の終盤にようやく初得点、そこからPKで追加点、アディショナルタイムに3点目を奪うという展開であった。
■5万5000人の大観衆が待ち構えるブダペスト
このハンガリーの健闘を支えたのがファンである。今大会は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて観客数に制限を設けて開催されている。無観客はないが数千人から1万数千人という制限の中でグループリーグは行われていたが、唯一の例外がこのブダタペストのプスカシュ・アレーナである。6万7000人の収容人員を誇る中央有数の競技場にほぼ満員の5万5000人の観衆が集まり、古豪ハンガリーを応援したのである。
その結果が、前回王者に対する終盤までのタイスコアであり、グループリーグではホーム最終戦となるフランス戦は土曜日の昼ということでさらに多くの観客が集まることも予想される。フランスだけではなく、多くの代表チームにとって満員のスタジアムで試合をすることは久しぶりである。フランスは前回のドイツ戦で1万人以上の観客の中で試合をしたが、満員の会場での試合となると2019年11月の欧州選手権のアルバニアとのアウエーゲームで2万人の観衆を相手に試合をして以来である。さらに5万人以上の観客の前でのアウエーゲームとなると2018年9月のミュンヘンでのドイツとのUEFAネーションズリーグ以来のこととなる。
この時の試合は引き分けに終わっている。そして今回も同じ引き分けという結果に終わったのである。(続く)