第2860回 25年ぶりのオリンピック(4) 初戦でメキシコに大敗
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■苦労の末にメンバー招集、大会前の試合は1試合のみ
各クラブとの交渉の末、ようやくメンバーがそろったフランスのオリンピック代表、選手の所属クラブを見ると2人を送り出しているのは国内のサンテチエンヌとメキシコのティグレスのみ、残りのメンバーはチームから1人ずつ選出されている。所属クラブから見ても、苦心のメンバー構成であることがわかる。大会前の試合も1試合しかこなすことができず、7月16日になってようやく韓国と親善試合を行い、2-1と勝利した。これがオリンピックチームとして25年ぶりの試合となった。
■アンダーエイジでの経験も乏しい選手がスポットライトを浴びるか
7月になってからジェレミー・ジェランが負傷したため、イングランドのエバートンからニエル・エンクンクを招集した。エンクンクもエバートンでほとんど出場していないばかりか、アンダーエイジでの代表経験もほとんどない。
このように、欧州のビッグクラブで活躍する選手がいないばかりではなく、アンダーエイジでの経験も必ずしも多いわけではない。しかし、そのような選手がオリンピックという舞台で活躍してスポットライトを当てられるケースもある。そしてこれは監督のシルバン・リポルも同様である。21歳以下の代表チーム以外の監督としての実績はロリアンで2シーズン経験しただけである。
■オーバーエイジ3人が先発メンバーに名を連ねたフランス
フランスの初戦はメキシコ、舞台は東京スタジアム、ラグビーワールドカップのアルゼンチン戦以来のフランス代表の試合となる。白いユニフォームのフランスの先発メンバー、GKはポール・ベルナルドーニ、DFは右からクレマン・ミシュラン、ピエール・カルル、モディボ・サニャン、アントニー・カーチ、イスマエル・ドゥクレ、ティモテー・ペンベレ、MFは右からテジ・サバニエ、エンゾ・ル・フィー、ルカ・トゥザール、FWは右にフローリアン・トーバン、左にアルノー・ノルダン、中央にアンドレ・ピエール・ジニャックである。ジニャック、トーバン、サバニエのオーバーエイジの3人はそろって先発、さらにジニャックは主将を務める。
メキシコのキックオフで試合が始まり、メキシコは開始早々からフランスのゴールを攻める。フランスは中盤のフォーメーションを変更し、サバニエとトゥザールが低い位置になり、ル・フィーがゲームメイクをするために高い位置に上がった。
この試合の最初の得点チャンスを作ったのはメキシコであった。17分にアレクシス・ベガがシュート、これをフランスのDFサニャンが右足でようやくクリアする。その直後にもメキシコはフランスゴールを襲う。
試合はメキシコペースで進み、ボールを支配した。前半のフランスのチャンスは28分のジニャックのヘディングシュート、30分のノルダンの右足シュート、いずれもメキシコのGKに阻まれた。メキシコのGKはオーバーエイジのギジェルモ・オチョア、2005年からフル代表で活躍している名手である。
■後半にフランスは大量失点
前半は攻めるメキシコ、守るフランスという構図であったが、スコアレスで折り返す。後半も開始早々にメキシコが攻め、46分のセバスチャン・コルドバのシュートはポストをたたいたが、その直後にディエゴ・ライネスの右からのクロスにベガがヘディングでシュート、これが先制点となる。さらにメキシコは55分にフランスの守備陣の間を抜け出したコルドバがGKと一対一となる。フランスチームの中ではアンダーエイジでの代表経験が多いベルナルドーニであったが、止めることができず、2点目を許す。
後半はメキシコの一方的な展開になったが、フランスは60分には攻撃の選手を2人交代させる。ノルダンに代わって入ってきたランダル・コロ・ムアニがペナルティエリア付近で倒される。VARの結果、フランスにPKが与えられ、69分にジニャックがオーバーエイジ対決を制し、1点を返す。
しかし、フランスの反撃はここまで、1点差に迫られたメキシコは守備を固めるとともに、カウンターアタックを仕掛ける。試合の終盤の80分には右サイドをドリブルで駆け上がったカルロス・アルトゥナが左足シュートで2点差とし、さらにアディショナルタイムにはフランスのパスミスを奪ってエドゥアルド・アギーレが得点をあげる。フランスは初戦で1-4と大敗を喫したのである。(続く)