第384回 早くも背水のキプロス戦 (1) 流れを変えたい今年最後の予選
■盛り上がりに水をさしたアイルランド戦
対戦相手との力関係を考えれば3連勝して当然という序盤の3試合で1分2敗というまさかのスタートとなったフランス代表。いかにサッカー人気、フランス代表人気が沈静化してきたといってもこのふがいない成績にファンの怒りは収まらない。10月9日のアイルランド戦はフランス代表の試合としては久しぶりにチケットが前売りで完売するなど、せっかく盛り上がったところに水をさされた形になった。
■疑問の残るアイルランド戦の守備陣の起用
当然、レイモン・ドメネク監督に対する非難の声も少なくはない。攻撃陣はほぼベストメンバーであるのにもかかわらず、スタッド・ド・フランスでイスラエル戦に続いて無得点に終わる。一方、結果的には守備陣は無失点に抑えたが、新チーム以降課題となっていた経験不足を補うべく、経験のある選手を呼び戻した。しかしドメネク監督が4バックの中央に配したのはセバスチャン・スキラッチとガエル・ジベというリーグトップのモナコの2人。好調なチームでコンビを組んでいる2人と思われる読者の方もいるかもしれないが、アイルランド戦の直前に行われた10月2日のニース戦ではホームゲームで3-0とリードしながら4連続失点で逆転負けを喫している。
また、この2人から押し出されるような形になったのは経験を買われて代表復帰したミカエル・シルベストルであり、左サイドバックに起用された。シルベストルは新チームになって初めての代表入り、所属チームのマンチェスター・ユナイテッドではストッパーとして活躍している。本連載第345回で紹介したとおり欧州選手権のクロアチア戦でも左サイドバックを守っていたが、攻撃の起点となることができず、スイス戦からは本来のポジションであるストッパーとして起用されている。
このように直前で大失態を演じたストッパーのコンビを起用し、サイドバック失格の烙印が押された本来のストッパーの選手をサイドバックに起用する、そのような采配で無失点に抑えたことに感謝しなくてはならない。選手起用だけではなく、このアイルランド戦の期間中にジャン・マルク・ドレスニデールが不在と言うことも大きな疑問を感じる。
■1996年欧州選手権予選と似た展開
最近のワールドカップ、欧州選手権の予選の歴史を振り返ると今回の予選と似た展開となっているのは1996年欧州選手権予選がまず思い起こされる。第1戦のスロバキア戦(アウエー)、第2戦のルーマニア戦(ホーム)、第3戦のポーランド戦(アウエー)と3試合連続でスコアレスドローが続き、ようやく得点と勝利をあげたのは第4戦のアゼルバイジャン戦(アウエー)のことである。
結局フランスは終盤のアウエーでのルーマニア戦で起死回生の勝利をあげてサッカーの母国へとたどり着く。この時は予選期間中にジネディーヌ・ジダンと言う司令塔が誕生し、あわせてそれまでチームの中心であったジャン・ピエール・パパンとエリック・カントナをメンバーから外すという世代交代を行うことによってチームが予選の終盤に実力以上のものを発揮した。
■キプロス戦で復活する主将パトリック・ビエイラ
今回は本連載で何度も紹介しているように過去10年間のフランス代表を支えてきたジダン、マルセル・デサイー、ビシャンテ・リザラズ、リリアン・テュラムという4人が同時に代表から引退し、白紙のスタートとなった。その中でチームの支柱たる存在がまだ出現していない。キャプテンマークを託されたパトリック・ビエイラはフェロー諸島戦で退場処分となり、アイルランド戦はベンチに入ることはできなかった。また、代役のファビアン・バルテスも調子がいいとは言いがたい。
13日の試合はキプロスでのアウエーゲーム。イスラエル戦で守備的MFのオリビエ・ダクールがロビー・キーンとの接触プレーで負傷退場し、キプロス行きは難しい状況にある。そしてこのポジションに入るのは本来の主将のビエイラである。ビエイラが10年前のジダンになれるかどうか、真価の問われる一戦であり、今年最後の予選で流れを変えたいものである。(続く)