第2873回 2021-22シーズン開幕(6) 昨季リーグチャンピオンのリールの初戦はドロー
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■大物選手が加わったパリサンジェルマン、流出したリール
昨季リーグ3位のモナコの8月6日の開幕戦と開幕戦前後に行われたチャンピオンズリーグの予備戦3回戦について紹介してきたが、それ以外のチームの序盤戦の模様について紹介しよう。
注目は昨季リーグ優勝したリールと2位に終わったパリサンジェルマンである。昨季の優勝争いを繰り広げた両チームであるが、新シーズンを迎える陣容については対照的である。パリサンジェルマンについては第2869回の本連載で紹介した通り、アクラフ・ハキミ、ジョルジニオ・ワイナルドゥム、セルヒオ・ラモス、ジャンルイジ・ドンナルンマというメンバーを補強し、第2870回の本連載で紹介したリオネル・メッシを獲得しており、今年も大型の補強を実施した。
一方のリールは10年ぶりのリーグ優勝を果たしたが、リーグ優勝に貢献した主力選手が国外のビッグクラブに次々と移籍した。
■ACミランに移籍したGKのマイク・メニャン
まず、フランス代表入りもしているGKのマイク・メニャン、まだフランス代表では1試合しか出場経験がないが、26歳という年齢はウーゴ・ロリスの後継者として最有力である。メニャンはパリサンジェルマンの育成組織からリールでプロ契約を結び、4年前にレギュラーの座を射止めている。レギュラーとなった2年目から昨季までの過去3シーズンは全試合に出場している。そして特筆すべきはこの間のパフォーマンスである。2018-19シーズンは失点をリーグ最少の33に納めてチームを2位に導き、昨季は失点を23に減少させ、クリーンシートと言われる完封は試合の半数以上の21と優勝に貢献した実力は内外から認められている。そのメニャンはちょうどドンナルンマが契約満了で抜けたイタリアのACミランに移籍することになった。
またMFのブバカリ・スマレもイングランドのレスターシティに移籍した。スマレもパリサンジェルマンの育成組織出身、セネガルの国籍も有しているが年代別のフランス代表として活躍、昨季はほとんどの試合に出場し、優勝に貢献したが、まだ22歳の選手である。国内外のビッグクラブが触手を伸ばしたが、結局はレスターシティへの移籍となった。
■10年前の優勝時も有力選手が次々と移籍で流出したリール
このようにチームの主力がビッグクラブに移籍したのは10年前の優勝時と同じである。この時もヨアン・カバイエがイングランドのニューカッスルユナイテッド、ジェルビーニョがイングランドのアーセナル、アディル・ラミがスペインのバレンシアへと有力選手が次々に移籍し、1年遅れて2012年にはエデン・アザールがイングランドのチェルシーに移籍している。その結果として、10年前に優勝したリールはその翌年は3位、アザールが抜けた2012-13シーズンは6位に順位を落としている。
■新監督率いるリーグ開幕戦はメッスとドロー
リールの特徴としては若手選手の宝庫であるが、これらの選手は他のクラブの下部組織からリールでプロ契約を結び、期待の若手へと成長するケースが多い。例外は隣国ベルギーから14歳で下部組織と契約したアザールくらいである。この若手選手を起用し、使いながら育てるのもリールの伝統であろう。そして10年ぶりの優勝を果たした監督のクリストフ・ガルティエもチームを去っている。ガルティエがかつて選手としてプレーしたリールの監督に就任したのはチームがリーグ18位に低迷していた2017年12月、結局17位に滑り込んで2部降格を免れた。2年目からは優勝争いをするチームに仕上げ、優勝を花道に監督の座を辞し、今季は同じ古豪のニースの監督に就任した。
リールの新監督はジョスリン・グルベネック、シーズン開幕前のチャンピオンズトロフィーではパリサンジェルマンに勝利している。リーグ開幕戦はメッスとのアウエーゲームである。1万5000人のファンがリーグチャンピオンを迎える。リールはボール保持率で圧倒し、先制点を奪うが、その後3失点、後半の序盤で2点を追う展開となるが、81分にジョナタン・イコネが1点差に迫る得点を決め、長いアディショナルタイムとなり、97分にオウンゴールで同点に追いつき、3-3のドロー、勝ち点1を獲得するにとどまったのである。(続く)