第2888回 2021-22チャンピオンズリーグ開幕(3) リール、またも勝利ならず
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■リーグ戦でも中位にとどまるリール
前々回と前回の本連載ではチャンピオンズリーグの組み合わせ抽選、特に第1シードと第2シードの逆転現象について紹介した。
チャンピオンズリーグのグループリーグは9月14日から始まった。フランス勢は14日のリール、15日にパリサンジェルマンが登場する。
昨季のフランスリーグチャンピオンであり、第1シードに入ったリールのUEFAランキングは参加32チーム中最下位である。さらに、リーグ優勝を果たしたクリストフ・ガルシア監督はニースに去り、選手もマイク・メニャンなどが移籍し、戦力ダウンは否めない。リーグ開幕戦については本連載第2873回で紹介した通り、ドローで発進、その後も勝ち点を積み上げることができず、初勝利をあげたのは第4節まで待たなくてはならなかった。しかし、チャンピオンズリーグ開幕直前の第5節ではロリアンに敗れ、1勝2分2敗と負け越し、順位も12位にとどまっている。
■第4シードのヴォルフスブルクとホームで開幕戦
不安いっぱいのリールであるが、グループGに入ったチャンピオンズリーグではまずドイツのヴォルフスブルクとホームで対戦する。第4シードが相手、しかもホームゲームであり、リールにとっては最も勝利する確率の高いカードである。リールがチャンピオンズリーグで勝利を最後にあげたのは2012-13シーズンのグループリーグのベラルーシのBATE戦のことである。この時はアウエーでの試合であり、ホームに限るとそのシーズンのプレーオフのFCコペンハーゲン戦になる。リールは現在のピエール・モーロワ競技場でチャンピオンズリーグのグループリーグ以上では勝利したことがないのである。
リールのピエール・モーロワ競技場にはリールの勝利を願うファンが3万4000人集まった。相手のヴォルフスブルクはブンデスリーガで唯一4連勝し、UEFAランキング1位のバイエルン・ミュンヘンを押さえて首位に立つチームである。またリールは欧州カップでドイツ勢を苦手としており、チャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグでは勝利したことがない。
■守備を固めてボールを保持するヴォルフスブルク
リールの新監督ジョスリン・グルベネックは週の半ばに行われる試合であるが週末のリーグ戦とはほとんどメンバーを入れ替えずに臨む。赤いユニフォームのリールと緑のユニフォームのヴォルフスブルクの試合、好調とはいえ、ヴォルフスブルクは引き気味に試合を展開、低い位置でボールを保持する戦略である。試合開始からヴォルフスブルクが圧倒的なボール保持率を誇るが、陣地はリールが優勢である。リールはボールを奪うと立ち上がりから積極的にゴールを攻めた。13分にはブラク・イルマズがFKのチャンス、直接ゴールを狙う。しかしこれはヴォルフスブルクの主将のGKクーン・カステールスがCKに逃れる。21分にもイルマズは惜しいシュートを放つ。リールはシュートの精度がよく、シュートは枠内をとらえる。リールのテンポの良い攻撃に対し、ヴォルフスブルクのボール保持率は次第に下がってくる。結局前半にヴォルフスブルクはシュートを1本も記録することができなかった。
■ジョナサン・ダビッドのゴール、アディショナルタイムのPKが認められなかったリール
両チーム無得点で後半に入ることになったが、明らかにリールは手ごたえをつかんでいた。後半開始早々にイルマズと2トップを組むジョナサン・ダビッドがゴールを決めたかに思われたが、直前のプレーでボールがタッチを割っていたため、ノーゴールとなる。カナダ代表であるダビッドは9月9日のエルサルバドル戦で1ゴール1アシストと活躍して大西洋を渡って戻ってきたばかりである。
62分、ヴォルフスブルクはジョン・アンソニー・ブルックスがハンドで警告、これがこの試合で2枚目のイエローカードだったため、カードの色が赤に変わり、退場処分となる。残り38分間は前半とは全く逆にリールが一方的に攻める展開となった。しかし、リールは相手の好守もあり、得点をあげることができない。後半アディショナルタイム、97分にはヴォルフスブルクの選手のファウルに対して主審がリールにPKを与えたが、VARの結果、反則が起こったのがペナルティエリア外との判定となる。イルマズがFKを蹴るが、得点にはならず、リールは2006年のAEKアテネ(ギリシャ)戦以来のチャンピオンズリーグのホームでの勝利を逃したのである。(続く)