第2893回 第2節で勝利を目指すフランス勢(3) レッドブル・ザルツブルクにホーム初勝利を献上したリール

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■強豪との直接対決を制してリーグ優勝を果たしたリール

 パリサンジェルマンがこれまで勝てなかったマンチェスター・シティ(イングランド)に初勝利をあげたことによって、新型コロナウイルスでフラストレーションのたまる状態が長く続いていたフランスのファンは歓喜した。次はいよいよリールの番である。
 これまでの本連載で紹介してきたとおり、リールはチャンピオンズリーグなどの欧州カップではさっぱりの成績であり、その結果として欧州五大リーグのチャンピオンでありながら、UEFAランキングはグループリーグに出場している32チームの中で最下位となっている。近年のチャンピオンズリーグでの成績についてはこれまで紹介しているが、39戦して6勝しかしておらず、14引き分け、29敗と大きく負け越している。しかし、このチームが下位チームには強いが、強豪チームに弱いというわけではない。昨季のリーグ戦では、本命のパリサンジェルマン、ビッグクラブのリヨン、モナコ、マルセイユを押さえて優勝したが、これらの強豪チームとの直接対決で好成績を残して競り勝ったのである。
 今年のリールは違うぞ、という認識でファンも第1戦のヴォルフスブルク(ドイツ)戦を迎え、34,314人の観衆が集まり、押し気味で試合を進め、ヴォルフスブルクに退場者が出たこともあり、最後の30分間は数的優位になりながら、ドローに終わってしまった。

■オーストリアリーグで8連覇中のレッドブル・ザルツブルク

 そのリールの第2戦はオーストリアのレッドブル・ザルツブルクとアウエーで対戦、チャンピオンズリーグ通算40試合目となる。レッドブル・ザルツブルクは国内リーグを8連覇中である。オーストリアリーグのチャンピオンチームは予備戦からの参戦となる。レッドブル・ザルツブルクは2012-13シーズンから予備戦に出場しているが、敗退または、プレーオフまで残っても、そこで敗れてヨーロッパリーグに転戦という結果であり、チャンピオンズリーグのグループリーグは遠かった。そしてたくさんの有望な選手がビッグクラブに流出してしまった。

■3年連続でチャンピオンズリーグのグループリーグに出場

 そのレッドブル・ザルツブルクがグループリーグに出場したのが2019-20シーズンのことである。この時はUEFAのリーグランキングでオーストリアリーグが11位になり、11位のリーグまでのリーグチャンピオンがグループリーグに出場できた。グループリーグでは3位となってヨーロッパリーグに転戦した。続く2020-21シーズンはプレーオフでイスラエルのマッカビ・テルアビブを下し、グループリーグに出場、また3位となってヨーロッパリーグの決勝トーナメントに進む。そして今季もプレーオフでデンマークのブロンビーを下し、3年連続のグループリーグ出場となった。

■19歳のカリム・アデイェミのPK2本でレッドブル・ザルツブルクが勝利

 第1節でレッドブル・ザルツブルクは第2シードでこのグループGの最有力チームと目されるスペインのセビリア相手にアウエーでドローに持ち込む。試合は開始早々にリールのゼカが相手のボールを奪い、ブラク・イルマズがシュート、惜しくも外れるが期待を持たせる。レッドブル・ザルツブルクは守備を固めたカウンターアタックを仕掛ける。30分にカウンターアタックからペナルティエリア内に入ったカリム・アデイェミがリールのスベン・ボットマンに倒される。VARによる長い審議の結果、PKがレッドブル・ザルツブルクに、イエローカードがボットマンに与えられた。ドイツ代表に入ったばかりで注目を集める19歳のアデイェミ自身がPKを決めて、レッドブル・ザルツブルクが先制する。
 後半に入って間もない51分、リールは痛恨のミスを犯す。バンジャマン・アンドレがハンド、好位置でレッドブル・ザルツブルクにFKを与える。このFKをマキシミリアン・ブーバーがゴール前にあげる。これをリールのイルマズがハンド、PKを献上してしまう。このPKもアデイェミが決めて2-0とリードが広がる。
 対するリールは62分にイルマズが汚名返上とばかりにFKを直接ゴールに入れる。1点差に迫ったリールであるが、守りを固めたレッドブル・ザルツブルクの守備陣を崩すことができず、1-2で敗れた。
 これまでチャンピオンズリーグのホームゲームで勝利したことがなかったレッドブル・ザルツブルクはリール相手に記念すべき初勝利をあげたのである。(この項、終わり)

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