第2904回 UEFAネーションズリーグファイナルズ(9) カリム・ベンゼマ、キリアン・ムバッペのゴールで初優勝

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■歴史的な準決勝を勝ち抜いて決勝で対決するフランスとスペイン

 ともに初優勝を目指すフランスとスペインの決勝、両国ともワールドカップ、欧州選手権双方で優勝経験のあるチームである。そして両国とも準決勝は歴史的な試合であった。フランスは2点のビハインドをひっくり返してベルギーに逆転勝ち、スペインは37試合無敗を続けていたイタリアをPK戦で退けてきた。
 この試合を裁く主審はイングランドのアンソニー・テイラー氏、今季はプレミアリーグ、チャンピオンズリーグの試合の笛を吹き、今日の試合が10試合目となる。

■前半はスペインの一方的な内容、フランスは沈黙

 試合はスペインのキックオフで始まり、スペインがパスをつないで試合を支配する展開となった。しかし、最初の得点チャンスはフランスに訪れた。6分にポール・ポグバがオフサイドぎりぎりのポジションにいたカリム・ベンゼマにパス、ベンゼマがスペインのGKのウナイ・シモンと1対1となったが、スペインはCKに逃れた。フランスはこの攻撃で得たCKをこの試合がフランス代表100試合目となるアントワン・グリエズマンが蹴るが、スペインは再びCKに逃れ、フランスの先制点を許さない。
 試合はスペインのペースで進み、フランスは守備的な試合運びを余儀なくされ、前半20分の時点でボール支配率は35%にとどまり、パスの本数はスペインの半分程度、ロングパスに活路を見出さざるを得ない。スペインは時間の経過とともに試合を支配していく。自陣ゴール前にくぎ付けになったフランス、32分にはジュール・クンデがペナルティエリア内でハンドではないかとテイラー主審はVARで確認、ハンドではないとの判定でフランスは難を逃れる。前半はスペインが試合を支配したが、フランスはシュート数わずかに1、両チーム無得点でハーフタイムを迎えた。
 後半の開始早々、ポグバがセルヒオ・ブスケッツへのファウルでこの試合最初の警告となる。さらに55分にもクンデがイエローカード、思うように試合を進めることのできないフランスのいら立ちが感じられる。

■64分にスペインが先制、2分後にカリム・ベンゼマが同点ゴール

 63分にフランスはキリアン・ムバッペとベンゼマがパスをつなぎ、テオ・エルナンデスがシュート、これはバーに阻まれ、惜しくも先制点はならなかった。そしてその直後の64分、ブスケッツが左サイドからゴール前にパス、これを受けたミケル・オヤルサバルをダヨ・ウパメカノと競り合ってシュート、グラウンダーのシュートがゴールに吸い込まれて、スペインが先制する。ウパメカノは前半終了間際にラファエル・バランの負傷で交代してきたところであった。
 しかし、ここからフランスは見違えるような試合を見せ、スペインのゴールにシュートのシャワーを浴びせた。66分、スペインで最も有名なフランス人、ベンゼマが空気を変えた。ポグバからパスを受けたムバッペが、ベンゼマにつなぎ、右足で豪快なシュート、マークしていたセサル・アスピリクエタも左足を出すが、防げず、フランスは2分後に同点に追いついた。

■微妙な判定となったキリアン・ムバッペの決勝点

 そして80分、テオ・エルナンデスからムバッペへのパスはオフサイドかと思われたが、ボールを受けたムバッペはそのまま抜け出し、無人のゴールに逆転の1点を決める。このプレーはオフサイドではないかということでVARとなったが、ムバッペへのパスにエリック・ガルシアがワンタッチしているため、オフサイドではないとの判定となった。ここまで80分、本来の活躍ができなかったムバッペはようやく残り10分となってファンの期待に応えた。
 試合はこのままフランスが2-1と勝利して初優勝を果たす。フランスがスペインを決勝で下して優勝したのは1984年の欧州選手権以来のことである。その時もフランスは準決勝でポルトガルとの死闘を制して決勝に進んできた。その時との違いはスペインが同じ赤いユニフォームだったが、フランスは青白赤のトリコロールから白一色のユニフォームに変わったことである。フランスはワールドカップと欧州選手権とUEFAネーションズリーグの3つのタイトルを獲得した最初の国となったのである。(この項、終わり)

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