第2979回 12年ぶりにグランドスラム達成(2) イタリアがウェールズに歴史的勝利
平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、台風15号、19号、令和2年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■6か国対抗独特のボーナスポイント制度
フランスが4連勝で迎える最終節、フランス以外に優勝の可能性があるのは第4節でイングランドに勝利したアイルランドだけとなった。最終節は3月19日に3試合が行われ、ウェールズ-イタリア、アイルランド-スコットランド、フランス-イングランドの順に試合が行われる。
全勝すれば、ボーナスポイント3が与えられるが、この理由は6か国対抗のポイント、特にそれ以外のボーナスポイントと関連がある。各試合のボーナスポイントは2つ、4トライ以上あげれば1ポイント、そして敗れた場合でも7点差以内の場合も1ポイントが与えられる。すなわち全勝してもすべての試合で3トライ以下であれば、勝利の際に与えられる4ポイントの5倍で勝ち点は20となる。一方、4勝1敗となった場合でもすべての試合で4トライ以上あげ、さらに負けた試合も僅差であれば、勝利の4ポイントの4倍の16ポイントに加え、トライ数のボーナスポイント5、7点差以内の敗戦のボーナスポイント1も獲得、合計で勝ち点は22となる。全勝したチームが優勝するべきという考え方でボーナスポイント3が与えられるのである。
今年の大会でいえば、ボーナスポイントを着実に重ねてきたのがアイルランドである。すべての試合でボーナスポイント1を獲得してきた。一方のフランスはボーナスポイントを獲得できたのはイタリア戦とスコットランド戦の2試合だけである。すなわち、フランスが最終戦で敗れ、アイルランドとの勝ち点勝負となった際に、アイルランドが有利である。
■侮ることができないイングランド
最終戦でフランスが対戦するイングランドは、今年は開幕戦でスコットランドに敗れ、第4節ではアイルランドに大敗し、2勝2敗である。しかし、前回の本連載で紹介した通り、アイルランドとの試合では開始早々に退場者が出て1人減りながら、後半の半ばまでアイルランドと互角の試合、そしてスクラムでしばしばアイルランドを圧倒、さらには若き司令塔マーカス・スミスの存在感は大きい。また、主将に23歳のトム・カーリーを抜擢したエディ・ジョーンズの采配は日本の皆様ならばよくご存じであろう。すでに2敗しているイングランドとホームでの対戦は決して楽観視できないのである。
■イタリアの勝利を支えたパオロ・ガルビジとアンジェ・カプオッツォ
そして運命の3月19日、フランスのフィフティーンがキックオフを待つ間に行われた2試合は、グランドスラムのかかった千秋楽結びの一番の露払いにふさわしい内容となった。まず、ウェールズ-イタリア戦はイタリアが6か国対抗では7年ぶり、カーディフでは初の勝利をあげた。ホームで3トライをあげたウェールズに対し、イタリアは1トライのみであったが、22-21と勝利した。この試合はウェールズのアランウィン・ジョーンズが代表150キャップ目、ダン・ビガーが100キャップ目という節目の試合であったが、ホームで記念すべき試合を祝福することができなかった。
ウェールズの調子がよくなかったとはいえ、フランスのクラブに所属するイタリアの殊勲の2人を紹介しなくてはならない。まず、5本のペナルティゴールと最後の逆転のコンバージョンを決めたスタンドオフのパオロ・ガルビジはモンペリエに所属している。そして最後のトライをあげたのはウイングのエドアルド・パドバーニであったが、実際にはフルバックのアンジェ・カプオッツォの変幻自在のランによるトライと言ってもいいだろう。カプオッツォは第4節のスコットランド戦で代表にデビューしたばかりの22歳、2部のグルノーブルに所属している。
■ボーナスポイントを奪って勝利したいアイルランド
大波乱の試合の次に行われたのが、アイルランド-スコットランド戦である。最終節を迎える段階での勝ち点は3勝のアイルランドが16、4勝のフランスが18である。アイルランドが4トライ以上あげて勝利すれば、勝ち点を21まで伸ばすことができる。そうなった場合、フランスはイングランド相手に引き分け以下でボーナスポイントがない場合はアイルランドに優勝を譲ることになる。アイルランドは地元ファンの期待を受けてボーナスポイントを目指して試合に臨んだのである。(続く)