第3003回 マルセイユ、準決勝で敗れる(1) 準々決勝の相手はPAOKテッサロニキ
平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、台風15号、19号、令和2年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■決勝トーナメントで次々と敗退したフランス勢
今季の欧州カップではフランス勢は出場した6チームすべてが決勝トーナメントに進出したが、1回戦でリール、パリサンジェルマン、モナコ、レンヌが姿を消した。準々決勝に残ったのはヨーロッパリーグのリヨン、ヨーロッパカンファレンスリーグのマルセイユの2チームだけであったが、リヨンについては本連載第2997回から第2999回で紹介した通り、イングランドのウェストハムに敗れている。今回からはもう1つの準々決勝進出チームのマルセイユを紹介しよう。
■決勝トーナメントで4連勝したマルセイユ
マルセイユはヨーロッパリーグに参戦したが、グループリーグでは3位になる。昨年までの大会規定であれば、ここで終了となったわけであるが、今季は新設されたヨーロッパカンファレンスリーグの決勝トーナメントのプレーオフ(ベスト32決定戦)への転戦が認められた。プレーオフでアゼルバイジャンのカラバフ、ベスト8決定戦でスイスのバーゼルに連勝して準々決勝に進んだ。プレーオフ、ベスト8決定戦で4戦全勝したチームはマルセイユだけであり、この勢いに乗って準々決勝に臨む。
■新しい大会規定の恩恵で勝ち抜いたPAOKテッサロニキ
準々決勝は4月7日と14日に行われる。マルセイユの相手はギリシャのPAOKテッサロニキである。ギリシャ第二の都市であるテッサロニキにあり、欧州カップでは1974年以来48年ぶりの準々決勝を戦う。ギリシャリーグでは3回しか優勝したことはないが、2部に降格したことがなく、国内ではオリンピアコス、パナシナイコス、AEKアテネと並ぶ強豪チームである。昨年末まで香川真司が所属していたことから日本の皆様もよくご存じのチームであろう。
PAOKテッサロニキは昨季はリーグで2位、ギリシャカップで優勝という成績でヨーロッパカンファレンスリーグの予備戦3回戦から参戦、アイルランドのボヘミアンとは1勝1敗であったが、得失点差で勝り、グループリーグに出場した。グループリーグではデンマークのFCコペンハーゲンに次ぐ2位となって決勝トーナメントに進出した。グループリーグで2位であったため、決勝トーナメントのプレーオフ(ベスト16決定戦に相当)でデンマークのミッティランと対戦した。デンマークでの第1戦はミッティランが1-0と勝利、テッサロニキの第2戦は終盤までPAOKテッサロニキが2-0とリードしていたが、終盤に1点返され、2-1というスコアで90分が終了する。昨季までの大会規定であれば、アウエーゴール2倍ルールでミッティランが勝ち抜くところであったが、アウエーゴール2倍ルールが撤廃されたため、延長戦を戦う。延長戦でスコアが動かず、結局PK戦となり、PAOKテッサロニキが勝利した。新しい大会規定の恩恵でテッサロニキはベスト16入りした。そしてベスト8決定戦ではベルギーのヘントに連勝してマルセイユと対戦することになった。
■熱狂的なファンを抱えるPAOKテッサロニキ
このチームの特色はファンが熱狂的なことであり、さらにはそれが凶暴な行為にしばしば及ぶことである。ホームアンドアウエーのノックアウト方式では第2戦をホームで戦うことが有利とされているが、今回は第2戦をホームで戦うのはPAOKテッサロニキである。マルセイユは第1戦で点差をつけて勝利しておきたいところである。また、マルセイユはPAOKテッサロニキとの連戦の後にリーグ戦では首位パリサンジェルマン戦を控えている。このパリサンジェルマン戦については本連載では第3000回で紹介した通りであるが、独走態勢にあるパリサンジェルマンをマルセイユはそのまま見送るわけにはいかない。
そのような非常に厳しい試合が続くマルセイユをファンが支えるところであるが、マルセイユのファンにはかつてほどの力はない。欧州カップの試合であればベロドロームを6万人のファンが埋め尽くした時代は過ぎ、2万人から3万人しか観衆は集まらない。しかし、このPAOKテッサロニキとのホームでの第1戦では4万5000人のファンが集まった。そしてその中の3000人がPAOKテッサロニキのファンであり、試合の前日からマルセイユ入りしたファンもおり、早速マルセイユのファンとの小競り合いを起こした。ベロドロームにはPAOKテッサロニキのファン用の金網が準備され、緊張した状態でキックオフを迎えたのである。(続く)