第3040回 パリサンジェルマン、2度目の日本ツアー(2) 初陣となるクリストフ・ガルティエ監督
平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、台風15号、19号、令和2年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■新型コロナウイルスの感染拡大で夏のツアーは実施できず
近代オリンピックの歴史が1892年11月27日にソルボンヌ大学で行われたピエール・ド・クーベルタンの講演で始まったのと同様に、パリサンジェルマンの日本ツアーも2018年9月11日に東京のフランス大使館で行われたセバスチャン・バゼルの講演で始まった。
パリサンジェルマンは東京の渋谷にブティックとカフェをオープン、日本を代表するアパレルメーカーとコラボレーションして事業展開を図った。
前回の本連載の通り、2018年の夏はインターナショナルチャンピオンズカップでシンガポール遠征、2019年の夏はチャンピオンズトロフィーを機会として中国遠征を行った。クラブが創立50周年を迎える2020年には、クラブ創立25周年の際に訪れた日本を再訪するという計画が持ち上がったが、この年の初めから始まった新型コロナウイスルの世界的な流行の中でこの夏のツアーは見送られた。そして2021年の夏もツアーは見送られ、リーグ戦の開幕する前週にイスラエルのテルアビブでチャンピオンズトロフィーをリーグ優勝したリールと戦っただけであった。
■毎年続く大型補強
そして2022年、世界的な新型コロナウイルスの感染拡大は収まらないものの、パリサンジェルマンは日本ツアーを挙行することになったのである。
構想が持ち上がってから、チームは変化を遂げた。カタール資本に変わってからの大型補強は毎年繰り返され、2019年にはケイロル・ナバス(コスタリカ)、レアンドロ・パレデス(アルゼンチン)、パブロ・サラビア(スペイン)、イドリッサ・グイエ(セネガル)などの各国代表選手が加わり、2020年にはマウロ・イカルディ(アルゼンチン)、そして2021年にはリオネル・メッシ(アルゼンチン)、アクラフ・ハキミ(モロッコ)がメンバーになった。
■リール、ニースで実績のあるクリストフ・ガルティエ新監督
どうしてもこれらの有名選手、特にメッシに注目が集まるが、今回の日本ツアーに向けた最大のメンバー変更は監督のクリストフ・ガルティエであろう。本連載でもしばしば取り上げてきたが、昨季はニースの監督としてリーグ5位、フランスカップ準優勝という成績を残し、チームをヨーロッパカンファレンスリーグ出場に導いた。その前年、すなわち2020-21シーズンはリールの監督として10年ぶりのリーグ優勝を果たしている。ガルティエはリールが降格の危機にあった2017-18シーズンの途中からリールの指揮を執り、初年度は降格を逃れる17位であったが、2年目の201819シーズンは2位、3年目の2019-20シーズンは4位、そして3年目にリーグ優勝と成果を出している。リールもニースも戦力的には恵まれているとは言えないが、好成績を残しているのはひとえに監督の手腕と言ってよいだろう。
片や、パリサンジェルマンは上記のような大型補強をし、国内リーグでは独走することができるが、欧州の列強と争うチャンピオンズリーグでは戦力に見合った成績を残しているとは言い難い。2020-21シーズンの途中に監督となったマウリシオ・ポチェッティーノ監督は昨季のチャンピオンズリーグの決勝トーナメントでの1回戦敗退でその評価は決まった。
■マルセイユ出身のガルティエ監督
勝てる監督のガルティエ新監督はマルセイユ出身である。フランス人監督は2016年まで務めていたローラン・ブラン以来となるが、マルセイユ出身の監督はチーム史上初めてである。もっともパリ出身の監督も初代のピエール・フェリポンだけである。下部組織で育ったマルセイユでプロ契約を果たす。ポジションはDFで同世代にアラン・ロッシュ、フランク・シルベストルがいる。移籍を繰り返し、最も長く在籍したのが後に優勝監督となるリールでの3シーズンであった。
現役引退後はコーチとして指導者のキャリアを重ね、2009年にサンテチエンヌの監督となって8年間の長期政権、安定した成績を残し、リーグカップでも優勝、ヨーロッパリーグにも出場している。そしてリール、ニースでの活躍は先述のとおりである。
7月初めに就任したガルティエにとってこの日本ツアーは初陣となるのである。(続く)