第3069回 UEFAネーションズリーグ終盤戦(2) 初めて代表入りした5人の横顔

 平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、台風15号、19号、令和2年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■苦しいチーム事情、負傷者離脱で5人が初めて代表入り

 3回目を迎えたUEFAネーションズリーグは9月にグループリーグの終盤戦の第5節と第6節が行われる。前回大会では優勝したフランスであるが、4試合を終えた段階で最下位に沈んでおり、リーグBへの降格の危機にある。さらにこの2試合は11月から開幕するワールドカップ前最後の代表での試合となる。目の前のタイトルの最下位脱出と2か月後に迫ったワールドカップ本大会の準備という二兎を追うことになる。さらに困難を極めたのが続出する負傷者である。招集メンバー発表後も負傷による離脱者が相次ぎ、負傷者は全部で11人に上った。このような状況の中で代表経験のない5人がメンバーに入った。

■東京オリンピックでも活躍したランダル・コロムアニ

 この5人を紹介していこう。5人のうち、当初からメンバーに入っていたのがランダル・コロムアニ、ユスフ・フォファナ、ブノワ・バディアシルの3人であり、アドリアン・トリュフェールとアルバン・ラフォンの2人が追加招集されたメンバーである。この5人には共通点があり、全員が国内のクラブに所属していること、そして全員が昨年5月に行われた21歳以下の欧州選手権の決勝トーナメントに出場していることである。 この中で日本の皆様がよくご存じなのが東京オリンピックに出場したコロムアニであろう。1998年にパリ郊外のボンディで生まれ、キリアン・ムバッペと同じ年に同じ町で生まれ育ったストライカーである。パリを離れ、ナントの下部組織に入り、トップチームの監督がセルジオ・コンセイソンの時に引き上げられ、バヒッド・ハリルホジッチの時に19歳でデビューを果たした。ナントではレギュラーの座をつかみ、2020年の秋には初めて年代別代表に選出される。ナントのファンにとって記憶に新しいのが2021年3月のパリサンジェルマン戦である。1点のリードを許していたが、コロムアニは相手のPKを誘い、自ら同点となるPKを決めた。さらに勝ち越し点のアシストも決めている。
 当初はオリンピックチームのメンバーには入っていなかったが、大会直前の7月にメンバーに招集される。フランスは日本入りする前に韓国と親善試合を行ったが、この試合でコロムアニはアンドレ・ピエール・ジニャックと交代出場し、チームの一員となったのである。そして東京オリンピックではグループリーグ3試合に出場し、その活躍は日本の皆様も鮮明な印象をお持ちであろう。今年6月にはUEFAネーションズリーグが4試合行われることから、デシャン監督は5月にプレリストを発表したが、コロムアニはオリンピックチームでは唯一、このリストに入ったのである。6月のUEFAネーションズリーグのメンバーには選ばれなかったが、今回はカリム・ベンゼマが不在ということもあり、ベテランのオリビエ・ジルーとともに選出された。

■モナコで活躍するユスフ・フォファナとブノワ・バディアシル

 フォファナはモナコで活躍する23歳のMFである。パリ出身であり、年代別代表として活躍し、昨年行われた21歳以下の欧州選手権では活躍したが、モナコの主力選手ということでオリンピックのメンバーには入っていない。マリにルーツを持ち、フル代表ではマリを選択することも考えられたが、エンゴロ・カンテ、ポール・ポグバの不在により、フランス代表入りした。
 バディアシルもモナコ所属、フランス生まれであるがコンゴ民主共和国がルーツである。DFとして同世代のダヨ・ウパメカノのライバルという存在である。16歳で契約したモナコ一筋の人生、モナコにとっては不可欠な存在となっている。

■追加招集でチャンスを得たアドリアン・トリュフェールとアルバン・ラフォン

 トリュフェールはチーム最年少の20歳、レンヌの左サイドDFである。当初は同時期に行われる21歳以下の代表チームに招集されていたが、テオ・エルナンデス、ルカ・ディーニュの負傷によってフル代表に引き上げられる形となった。
 最後に紹介するラフォンはブルキナファソ生まれの23歳のGKであるが、父はフランス人、ブルキナファソ人の母は国会議員である。トゥールーズでプロ契約を果たし、この5人の中では唯一外国のクラブ(イタリアのフィオレンティーナ)の経験があり、現在はナントに所属している。20歳以下のワールドカップには2回出場しているが、今回はウーゴ・ロリスの離脱による第3GKということで試合出場の機会はないであろうが、よい経験になるであろう。(続く)

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