第3175回 2024年欧州選手権に向け、好発進(4) 新主将に任命されたキリアン・ムバッペ

 平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、台風15号、19号、令和2年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■ウェスレイ・フォファナとウィリアン・サリバが離脱

 前回の本連載ではオランダ、アイルランドとの連戦に臨む23人のメンバーのうち、GKのブリス・サンバとDFのウェスレイ・フォファナの2人を紹介したが、ウェスレイ・フォファナは所属するチェルシー(イングランド)のエバートン戦で負傷したため、代表入りを辞退した。また同じイングランドのアーセナルに所属するウィリアン・サリバもヨーロッパリーグのスポルティング・リスボン(ポルトガル)戦での負傷が癒えず、代表から辞退、この2人のイングランド組の代わりとして、昨年のワールドカップに出場したアクセル・ディザジ、初めての代表となるジャン・クレール・トディボが追加招集された。

■リリアン・テュラムを父に持つマルクス・テュラムとケフラン・テュラム

 まず、前回の本連載で紹介できなかったケフラン・テュラムと追加招集されたトディボを紹介しよう。
 ポール・ポグバの引退、負傷によるエンゴロ・カンテの不在もあり、手薄になっているMFにケフラン・テュラムが選出された。ニース所属の21歳の選手であり、192センチという高さも魅力であるが、複数ポジションをこなすことができるのが強みである。ブレーズ・マツイディのような活躍を期待されている。また、苗字を見て想像の付く通り、マルクス・テュラムの弟である。すなわち、父親はリリアン・テュラムである。これまでに兄弟で代表に入ったり、親子で代表入りしたりするケースはあったが、親子かつ兄弟というのはフランス代表史上初めてのことである。
 ただ、外国では例があり、一昨年までパリサンジェルマンに所属していたラフィーニャことラフィーニャ・アルカンタラの兄はチアゴ・アルカンタラ、そして2人の父親のマジーニョは1994年のワールドカップの優勝メンバーである。ラフィーニャ・アルカンタラはブラジル代表、チアゴ・アルカンタラは出生地からスペイン代表となっている。1990年代初めにマルセイユで活躍したアベディ・ペレ(ガーナ代表)は3人の息子(アンドレ、ジョルダン、イブラヒム)が代表入りしている。なお、アンドレとジョルダンは父親と同じマルセイユのユニフォームを着用したことがある。また、アベディ・ペレとほぼ同時期に活躍したデンマークのミカエルとブライアンのラウドルップ兄弟の父親のフィン・ラウドルップもデンマーク代表であった。

■仏領ギアナ出身のジャン・クレール・トディボ

 そして追加招集されたトディボは仏領ギアナの出身である。今回のメンバーではマイク・メニャンも仏領ギアナの出身である。幼少時にパリ近郊に移り住み、交通事故に遭い、選手生命も危うかったが、18歳でトゥールーズとプロ契約を結ぶ。ストッパーとして活躍し、スペインのバルセロナに移籍し、ベンフィカ(ポルトガル)、シャルケ04(ドイツ)などにレンタルされ、2021年夏にニースに移籍する。ニースではコンスタントに試合に出場し、近年の古豪復活を支え、代表入りとなった。

■新主将はアントワン・グリエズマンではなくキリアン・ムバッペ

 そしてもう1つ注目を集めたのが、だれが主将を務めるかである。本連載第3143回で紹介した通り、長らく主将を務めてきたウーゴ・ロリスが引退した後はラファエル・バランが主将を務めるものと思われてきたが、そのバランも引退した。ロリスとバランが出場しなかった試合というと昨年9月25日のUEFAネーションズリーグのデンマーク戦である。この時はアントワン・グリエズマンが主将を務め、途中で退いた際にキャプテンマークをキリアン・ムバッペに託している。
 代表チームでは36歳のオリビエ・ジルーに次ぐ32歳のグリエズマンに主将を任せるか、所属チームのパリサンジェルマンでも副将に任命された24歳のムバッペか、世論も二分された。グリエズマンはこれまでに117試合出場、42得点、28アシストという実績に加え、ディディエ・デシャン監督の下で74試合連続出場という信頼を得ている。しかし、デシャン監督はムバッペを主将に任命したのである。(続く)

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