第434回 スイス、イスラエルと連戦(1) 劣勢の中で注目を集めたメンバーの選出
■折り返し点を迎えるワールドカップ予選
昨年9月に開幕したワールドカップのドイツ大会予選は3月末に第5戦と第6戦の2試合が予定されており、ちょうど折り返し点を迎えることになる。本連載の読者の方ならばよくおわかりの通り、フランスは第1戦をホームでイスラエルとスコアレスドローで発進し、アウエーのフェロー諸島戦では2-0の勝利と面目を保ったものの、10月の連戦ではホームでアイルランドとスコアレスドロー、アウエーのキプロス戦は2-0の勝利と2勝2分の勝ち点8である。勝ち点8で3か国が並んでいるが、得失点差で1位アイルランド、2位フランス、3位イスラエルとなっている。
■実質的には4位のフランス
フランスは2位にはなっているものの、ファンはこの成績には納得していない。それはこれまでホームで得点をあげていないだけではない。4位のスイスは勝ち点5であるが、1試合少ない。つまり、アイルランド、フランス、イスラエル、スイスのこの4チームは横並びであると言えよう。この上位4強の間の対戦を見てみると、不思議なことにこれまで4試合行われているが、すべて引き分けに終わっている。しかしその内容を精査してみると、アイルランドはアウエーで2引き分け、イスラエルならびにスイスはホーム、アウエーでそれぞれ1引き分け、フランスはホームで2引き分けとなっており、実質的にフランスはこの4チームの中で一番下であるとも言えよう。このような戦いぶりが前回の本連載で紹介したとおり、ワールドカップと言えばラグビーという認識につながっているのであろう。
そしてフランスは3月26日にスイスをスタッド・ド・フランスに迎え、3月30日にテルアビブに赴いてイスラエルと対戦する。スイスもイスラエルもフランスに対する恐怖心はないであろう。いずれにせよ、フランスにとって連勝以外では今後の展開が苦しくなってくることは必至である。そしてフランスにおけるサッカーの地盤沈下を止めるためにも、連勝したいところである。
■ロベール・ピレス、オリビエ・ダクール復帰せず
3月16日のメンバー発表は近年にない多くの注目を集めた。これは逆にフランス代表がそれだけ苦しい立場にあることを意味している。このような苦境になると、若手選手の起用とベテラン選手の復帰が注目されるのが常である。今回、メンバー発表を前に最も注目を集めた選手はアーセナルのMFロベール・ピレスであった。昨年10月の予選では代表入りしていたが、11月と2月の親善試合では招集されていない。本人も「ドイツでのワールドカップが終了するまでフランス代表から引退しない」と表明している。また、3月末のフランス代表の剣が峰にかける意志も強く、代表の試合の時期に合わせて調整していた。ホームで無得点という攻撃力の欠如を補うためにもピレスの復帰を待望する声が高まった。しかし、ピレスの名はリストにはなかった。確かにこのところピレスはアーセナルでは試合の半分くらいにしか出場しておらず、ゴールもほとんど記録していなかったが、これまでに代表の試合に89試合出場しているピレスの実績は見逃すことができない。にもかかわらず、ピレスはメンバーから外れ、今シーズンは所属するアーセナルでの活動に専念することになるが、これで今後もピレスは代表チームに招集されなくなったのではないか、と言う見方は強い。
そしてもう1人メンバーから外れて話題になったのがオリビエ・ダクールである。2003年のコンフェデレーションズカップを制覇することができたのはダクールの鉱石によるところが大きく、クロード・マケレレが不在の中で不可欠な守備的MFである。しかし、ダクールもまたレイモン・ドメネク監督から声がかからなかった。彼らの代わりにMFにはメリアム、アルー・ディアラ、リオ・アントニオ・マブーダといういずれも代表歴2試合と言う経験不足のメンバーである。MFの登録はこの3人の他にはパトリック・ビエイラ、ブノワ・ペドレッティの2人しかおらず、5人で2試合をまかなうことになる。
■不調のティエリー・アンリとダビッド・トレゼゲを選出
逆に招集されて意外だったのはティエリー・アンリとダビッド・トレゼゲの2人である。実は2人とも負傷しており、体調は十分ではない。招集後の練習でも本調子ではない。
議論を巻き起こしたこの21人のメンバーはこの2試合でどのような結果を残すのであろうか。(続く)