第3212回 ジブラルタル、ギリシャと欧州選手権予選(2) UEFA、FIFAに加盟したジブラルタル

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■英国の海外領土のジブラルタル

 フランスが6月の欧州選手権予選でまず対戦するのはジブラルタルである。本連載の読者の方もよくご存じないのではないだろうか。フランスとは今回初めての対戦となる。
 ジブラルタルは英国の海外領土である。イベリア半島の南東端、アフリカとヨーロッパを挟む最短14キロのジブラルタル海峡を望む、戦略的な要衝に存在することから、古くから列強の領土争いが繰り広げられてきた。イスラム、スペインの統治ののち、1713年からはイギリス領となっているが、スペインはこれを認めていない。現在も英国海軍が駐留している。
 軍事的には重要な拠点であるが、ジブラルタルの面積は7平方キロに満たない。モナコの2平方キロよりは大きいが、人口は3万2000人、モナコの3万9000人より少ない。モナコはUEFAやFIFAに所属していないが、ジブラルタルはUEFAに所属する55か国のうち、面積では最小、人口ではサンマリノに次いで2番目に少ない。

■2013年にUEFAのメンバーとなったジブラルタル

 このジブラルタルも独自のサッカー協会が存在し、1895年創立と世界有数の歴史を誇る。代表チームも1923年にスペインのセビリアと対戦したが、その後は活動を休止する。1990年代になってアイランドゲームズに参加するようになる。1990年代には東欧の自由化により、東欧諸国が分離独立したことにより、UEFAの加盟国数が増えた。このような環境の変化もあり、ジブラルタルは2007年にUEFAに加盟を申請する。しかし、ジブラルタルを認めないスペインが猛反対し、ジブラルタルの加盟を認めるならば、スペインはUEFAから脱退するとまで主張、結局ジブラルタルの加盟申請は大差で否決された。これに対しジブラルタル側はスポーツ仲裁裁判所に訴え、これが認められてジブラルタルは2011年にUEFAへの仮加盟が認められ、2013年にはUEFAの54番目のメンバーとなった。

■欧州選手権予選、ワールドカップ予選では勝ち点をあげられず

 2013年11月19日には初めての国際試合としてスロバキアとポルトガルのファロで親善試合、ジブラルタルからも500人が駆け付け、試合はスコアレスドローとなった。2014年秋からは2016年欧州選手権予選に参戦する。当初はスペインと同組になったが、政治的関係を考慮して別のグループに入ることになった。この最初のタイトルマッチでジブラルタルは10戦全敗に終わったが、2016年にはジブラルタルの次にUEFAに加盟したコソボとともにFIFAへの加入が認められたのである。2016年秋からは2018年ワールドカップ予選が始まる。世界初挑戦も10戦全敗という結果に終わる。

■UEFAネーションズリーグで初勝利、リーグCに昇格

 しかし、2018年3月には親善試合でリトアニアと対戦、1点を守り切り、ジブラルタルの初めての勝利となる。さらにこの年から始まったUEFAネーションズリーグでジブラルタルは最も低いレベルのリーグDで戦うが、10月13日にアルメニアにアウエーで勝利、タイトルマッチでの初勝利となる。さらにその3日後にはリヒテンシュタインにホームで勝利、終わってみればリーグDの4チーム中3位となった。レベルの近いチーム同士の真剣勝負の機会を増やす、というUEFAネーションズリーグの設立の理念が体現された結果となった。
 2021年欧州選手権予選ではまた8戦全敗、ただし、この8試合で3得点を奪う。そして2020年秋に行われた2回目となるUEFAネーションズリーグでジブラルタルはリヒテンシュタイン、サンマリノと同じグループとなり、2勝2分で首位となり、リーグCへの昇格を決めたのである。2022年6月9月に行われた第3回のUEFAネーションズリーグ、番付を上げたジブラルタルには重荷かと思われたが、ホームでブルガリアと1-1と引き分ける。結局1分5敗で最下位となり、グループC残留をかけてキプロスとプレーオフを来年3月に行うが、欧州の中堅国相手にタイトルマッチで勝ち点を初めてあげたことは大きな希望となった。
 そして迎えた3回目の欧州選手権予選、3月にはギリシャ、オランダに連敗したが、フランスに初挑戦するのである。(続く)

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