第437回 マルセイユ、パリサンジェルマン戦の連敗をストップ

■ワールドカップ予選のためリーグが小休止

 フランス代表はワールドカップ予選を3月末に2試合戦い、次の予選の試合は9月であることから、4月、5月のフランスのサッカーシーンはクラブの国内外でのタイトル争いとなる。ワールドカップ予選があったためにリーグ戦は3月19日と20日の第30節の後、2週間の間隔をあけて、4月2日に第31節が行われた。首位リヨンを追うマルセイユは第30節でモナコ、第31節でパリサンジェルマンとタフな相手と対戦するが、代表選手も少なく、この連戦で連勝すればリヨンの背中も見えてくる。ところが第30節のモナコ戦で1-2と敗れ、首位リヨンと勝ち点で11の差がついてしまった。休み明けの対戦は宿敵パリサンジェルマンであり、マルセイユのフィリップ・トルシエ監督は「フランス国内で今季最も重要な試合」と位置づけ、必勝を期する。

■パリサンジェルマンに8連敗中のマルセイユ

 これまでに数多くの名勝負を繰り広げてきたマルセイユとパリサンジェルマンの対決であるが、その輝きも今季は薄れつつある。まず、国内外のタイトル争いの終盤となったが、マルセイユは欧州カップには不出場、パリサンジェルマンはチャンピオンズリーグのグループリーグで最下位となり、姿を消してしまっている。国内のフランスカップ、リーグカップでも早々に姿を消しており、両チームとも残された唯一のタイトルが国内リーグなのである。その国内リーグでは、マルセイユこそ2位であるものの、一方のパリサンジェルマンは二桁順位の12位であり、優勝争いどころか来季の欧州カップ出場もほぼ不可能である。フランスのサッカーを代表する両チームの不振は残念であるが、マルセイユ-パリサンジェルマン戦は特別な存在である。
 しかし、両チームの対戦であるが、このところマルセイユは全くパリサンジェルマンに歯が立たない。2002年4月にマルセイユはリーグ戦でパリサンジェルマンに勝利して以来、国内リーグ戦5試合、フランスカップ2試合、リーグカップ1試合と8回の対戦があるが、パリサンジェルマンに8連敗を喫している。特に昨年秋のリーグ戦、リーグカップでのマルセイユの連敗は監督の更迭につながったことは本連載第401回と第402回で紹介したとおりである。

■衝撃を与えた前夜のイストルの大敗

 そしてベロドロームでのマルセイユ-パリサンジェルマン戦はテレビ中継の関係もあり、日曜日に試合が行われたが土曜の夜に衝撃的な試合があった。それはリールとイストルの1戦である。この試合なんと3位のリールが最下位のイストルに8-0というスコアで勝利してしまったのである。まず、勝利したリールは土曜日の夜の段階でマルセイユを抜いて2位に浮上、マルセイユは3位に後退する。そして、イストルは本連載第386回で紹介したとおり、マルセイユの近郊都市であり、マルセイユのファンも多い。マルセイユを援護射撃したいところであったが、リールの勝利を阻止することができなかった。さらに、このフランスリーグで8点差の試合は1997年5月のリーグ最終戦のリヨン-マルセイユ戦以来のことである。この試合でマルセイユは8点差以上で大敗しないとインタートトカップの出場しなくてはならず、シーズンオフが短くなる。そのため、マルセイユは故意に無気力な試合を行い、8点差が付いてからは45分間得点を許さなかったという疑惑の試合が8年たって話題になった。イストルの大敗によってマルセイユには火がついたのである。

■オウンゴールで先制を許すも同点に追いつき、9連敗を逃れる

 さて、満員の観衆の中でキックオフ、テルアビブで猛烈なブーイングを浴びたファビアン・バルテスもここでは英雄である。テルアビブで出番のなかったスティーブ・マルレも当然のように先発メンバーである。前半は両チーム無得点。後半開始早々に事件は起こった。ダニエル・リュボヤのセンタリングを中田浩二が自らのゴールに蹴りこむ。イラク問題でフランスと対立してきた米国の同盟国がイスラエルであり日本であることも考えれば、イスラエル戦前に問題発言をしたバルテスがゴールを守っていたことがマルセイユにとって不運だったのかもしれない。9連敗を免れたいマルセイユは74分にローラン・バトルが引き気味のパリサンジェルマンから同点ゴールを決めるのが精一杯。結局1-1のドローで不名誉な記録に終止符を打ったが、マルセイユは3位に後退、リヨンとの勝ち点差は13に拡がったのである。(この項、終わり)

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