第3251回 ラグビーワールドカップ開幕(3) 開幕戦史上最速のトライを決めたニュージーランド
平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、台風15号、19号、令和2年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■負傷者の目立つフランス
満員の8万人の観衆、無数の国旗が振られるスタッド・ド・フランス、ニュージーランドとの開幕戦に臨むフランスは白いセカンドジャージを着用、FW第一列はレダ・ワルディ、ジュリアン・マルシャン、ウイニ・アトニオ、ロック陣はカメロン・ボキ、チボー・フラマン、フランカーはフランソワ・クロとシャルル・オリボン、ナンバーエイトはグレゴリー・アルドリットである。ハーフ団はアントワン・デュポンとマチュー・ジャリベール、スリークォータバックスは左からガバン・ビリエール、ヨラム・モエファナ、ガエル・フィクー、ダミアン・プノー、フルバックはトマ・ラモスである。
41－17で快勝した8月の豪州戦と比べると、プロップのジャン・バティスト・グロ、ロックのポール・ウィレムス、センターのジョナタン・ダンティが負傷のため先発メンバーから外れている（ウィレムスは登録メンバーからも離脱）。開幕戦が重要であるとはいえ、1月半に及ぶ長丁場の大会であり、負傷を抱えた選手に無理をさせないことは重要である。
■経験値を積んだ選手がそろったニュージーランド
一方のニュージーランド、FW第一列はイーサン・デグルート、コーディー・テーラー、ネポ・ラウララ、ロックはサミュエル・ホワイトロックとスコット・バレット、フランカーはトゥポウ・バアイとダルトン・パパリイ、ナンバーエイトはアーディー・サベアである。スクラムハーフはアーロン・スミス、スタンドオフはリッチー・モウンガ、スリークォータバックスは左からマーク・テレア、アントン・レイナートブラウン、リーコ・イオアネ、ウィル・ジョーダン、フルバックはボーデン・バレット、日本の皆様もよくご存じのメンバーがそろった。キャップ数100以上の選手が2人、一桁はテレアのみであり、経験値を積んだ選手がそろった。
■電光石火のトライで先制したニュージーランド
ボーデン・バレットの長いキックオフで大会が始まった。フランスの自陣22メートル付近でのラインアウトで試合は再開、デュポンのキックをニュージーランドはイオアネがロングゲインし、フランス陣内に攻め込む。フランスの選手の反則によるアドバンテージ中にボーデン・バレットがキックパス。これをテレアがキャッチし、ニュージーランドは開始して1分32秒の電光石火の先制トライを左隅に決めた。テレアは代表6試合目にして4本目のトライである。モウンガのコンバートは決まらなかったものの、このトライはこれまでのワールドカップの開幕戦では最速のトライである。またフランスに限ると2007年大会の準決勝のイングランド戦では1分16秒で先制トライを奪われている。この時も同じスタッド・ド・フランス、イングランドには9－14と敗れており、開幕して2分も立たないうちにスタッド・ド・フランスは静まってしまった。
ニュージーランドとの直近の対戦は本連載の第2925回から第2928回で紹介した通り2021年11月20日にスタッド・ド・フランスで行われた秋のテストマッチであり、この時はフランスが史上最多得点差となる40－25で勝利したが、それまではニュージーランドが14連勝しており、過去の対戦成績はニュージーランドが48勝、フランスが13勝、1引き分けとなっている。この先制トライで2年前の勝利は幻だったのかと思ったファンは少なくなかったであろう。
■2本のペナルティゴールで逆転したフランス
しかし、フィールドの選手は冷静であった。フランスはマルシャンが相手の反則を誘い、5分にペナルティゴールをラモスが成功させて3－5と2点差に迫る。しかし、12分にそのマルシャンが左ひざを負傷したため、試合続行が不可能となり、ペアト・モーバカに交代する。FW第一列であることからモーバカの交代は織り込み済みであったが、後半ではなく、前半の序盤から70分近くの出場となる。
フランスは組織的なディフェンスでニュージーランドの攻撃を簡単には許さない。また、2年前の勝利の際に活躍したのが巨漢プロップのアトニオである。アトニオはスクラムでデグルートに勝り、ニュージーランドはコラプシングの反則、40メートル近いところからラモスがペナルティゴールを成功させ、19分にフランスは6－5と逆転したのである。（続く）
