第3268回 2大会連続で準々決勝敗退(2) 13年ぶりに南アフリカを破った昨秋の戦い
平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、台風15号、19号、令和2年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■準々決勝でも厳しい戦いが待ち受けるプールAとプールB
前回大会の覇者南アフリカは、予選プールでは欧州の雄で世界ランキング首位のアイルランドに惜敗し、プール2位にとどまった。すでにスコットランド戦で勝利していた南アフリカと、スコットランド戦が最終戦であったアイルランドという日程面の違いもあり、南アフリカは2位以内に入って決勝トーナメントでギアを一段上げるということを考えていたのであろう。プールBから決勝トーナメントに勝ち進んでも初戦となる準々決勝はプールAから勝ち進んできたフランスあるいはニュージーランドが相手、この準々決勝が山場になると想定してきたはずである。プールAのフランスもまったく同じ考えであろう。
■先発メンバーのほとんどが前回優勝メンバーの南アフリカ
さて、南アフリカの先発メンバーであるが、FW第一列はスティーブン・キッツォフ、ボンギ・ンボナンビ、フランス・マルハーバ、ロック陣はエベン・エツベス、フランコ・モスタート、フランカーはシヤ・コリシとピーターステフ・デュトイ、ナンバーエイトはドウェイン・フェルミューレン、ハーフ団はコーバス・ライナーとマニー・リボック、スリークォータバックスは左からチェスリン・コルビ、ダミアン・デアレンデ、ジェシー・クリエル、カート・リー・アレンドセ、フルバックはダミアン・ウィレムスという布陣である。FWは全員、前回大会の優勝経験者、BKもリボック、アレンドセ以外は前回大会のメンバーである。さらに前回大会の優勝時のハーフ団のファフ・デクラークとハンドレ・ポラードもベンチに控えている。
■昨年11月にマルセイユで対戦した両国
フランスのファンにとってよりどころとなるのは昨年11月12日のマルセイユでの勝利である。この試合は荒れた試合となった。トマ・ラモスのペナルティゴールでフランスが3点を先制する。12分に南アフリカのデュトワがフランスのジョナタン・ダンティにヘッドタックルでレッドカードで退場する。南アフリカの選手がレッドカードを受けるのは2017年10月のニュージーランド戦以来実に5年ぶりのことである。一方、タックルを受けたダンティも試合継続が不可能となり、セク・マカルーと交代する。数的優位に立ったフランスはペナルティゴールやシリーユ・バイユのトランなどで13-0とリードを広げる。ただ、南アフリカもラインアウトカラコリシが持ち込んでトライをあげるなど反撃、フランスが 16-10とリードして後半を迎えた。
■2人の世界最優秀選手がレッドカードで退場、フランスが終盤に逆転
後半は双方がペナルティゴールを決めて、フランスが19-13とした48分、今度はフランスのデュポンが危険なプレーで南アフリカのコルビが頭から落下する。デュポンにレッドカードが差し出された。デュトワは2019年の世界最優秀選手、デュポンは2022年の世界最優秀選手、2人の世界最優秀選手が退場となり、14人対14人で試合は続行した。流れは南アフリカ、その4分後にはアレンドセがトライをあげ、デクラークのコンバートが決まり、南アフリカが20-19と逆転し、さらにペナルティゴールを決めて4点差となる。
その後、両チームともペナルティゴールを追加、このまま南アフリカが逃げ切るかと思われたが、ペアト・モーバカの突進に対し、南アフリカは反則を犯してしまい、シンビンの一時退場となる。息を吹き返したフランスは南アフリカのゴール前に迫り、73分にシピリ・ファラテアがトライ、27-26と逆転する(コンバージョンは失敗)。フランスはその後もスクラムで南アフリカの反則を誘いだし、ペナルティゴールを決めて30-26とする。南アフリカはラストプレーに託すが、フランスが13年ぶりに南アフリカに勝利したのである。
南アフリカの先発メンバーは前回大会優勝経験者が多いことを紹介したが、一方のフランスの先発メンバーのうち、昨年のマルセイユでの試合に出場しなかったのは当時まだフランス代表に入っていなかったルイ・ビール・ビアレイだけである。
自信を持つチーム同士が準決勝進出最後の座を巡って戦うのである。(続く)