第3279回 フランス勢の欧州カップ中盤戦(7) AEKアテネに連勝したマルセイユは首位に

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■ベルナール・タピ時代に対戦経験のあるAEKアテネ

 チャンピオンズリーグに出場したフランス勢2チームは中盤戦でやや足踏みとなったが、ヨーロッパリーグ、ヨーロッパカンファレンスリーグに出場した4チームをこれから紹介しよう。
 序盤は2試合とも引き分けだったグループBのマルセイユは中盤戦でAEKアテネ(ギリシャ)と対戦する。第3節は10月26日、マルセイユのベロドロームで行われた。両チームは1989-90シーズンのチャンピオンズカップでも対戦し、マルセイユが勝ち抜いている。当時のマルセイユの会長はベルナール・タピ、ACミランのシルビオ・ベルルスコーニと並ぶ大物会長、大型補強を繰り返し、ボスマン判決前で外国人選手の数に制限があった当時、準フランス代表ともいえるチームを作り上げ、圧倒的な実力と人気を誇った。そのタピも2年前の10月3日に亡くなっている。「強いマルセイユ」を待望する6万5000人のファンがこの夜のベロドロームに集まった。

■マルセイユでAEKアテネを圧倒したマルセイユ、首位に浮上

 AEKアテネはこの時点でグループBの首位、一方のマルセイユは国内リーグでも8位と出遅れていたが、タピの時代を思わせる試合を展開した。試合開始から攻め続け、27分にジョナタン・クロースからのパスをビトール・ビティーニャが簡単にゴールに決める。VARの判定の後にマルセイユの先制点が認められた。その後も一方的にマルセイユがAEKアテネ陣内で試合を進める。AEKアテネも前半アディショナルタイムにステファン・ツバーのシュートが決まるが、オフサイドで取り消される。
 後半に入って、AEKアテネはゴール前の混戦からオルベリン・ピネダのシュートが決まり、同点に追いついた。ところが55分、マルセイユのビティーニャをAEKアテネのGKのチツァン・スタンコビッチがペナルティエリア内で倒してしまう。ポーランド人の主審はビデオで状況を確認したうえで、スタンコビッチにレッドカードを差し出す。
 AEKアテネは急遽控えGKをピッチに送り出し、フィールドプレーヤーを1人減らす。マルセイユはモロッコ代表のアミン・アリがPKのキッカーとなる。アリのシュートに対し、いきなり登場したGKは逆方向にセーブ、マルセイユが60分に勝ち越した。68分にもAEKアテネはペナルティエリア内でレナン・ロディを倒してしまう。今度は主審はためらうことなくペナルティスポットを指し、マルセイユはジョルダン・ベレトゥがPKを決めて、リードを広げた。マルセイユは86分にもイスマイラ・サールが4点目か、と思われたがオフサイドで幻のゴールとなる。3-1で勝利したマルセイユは前半戦を終えた時点で首位に躍り出たのである。

■マルセイユのファンがリヨンのチームバスに投石、試合が延期

 第2戦はその2週間後の11月9日に行われる。この間、マルセイユは国内リーグを2試合戦う予定であったが、10月29日のホームのリヨン戦では事件が起こった。リヨンのメンバーを乗せたバスがベロドローム競技場の近くでマルセイユのファンから投石で襲撃を受ける。リヨンのファビオ・グロッソ監督などが負傷し、試合は延期された。

■アテネでもマルセイユが勝利、首位をキープ

 そのような事件もあったが、マルセイユはアテネに乗り込んだ。この試合の前にブライトン(イングランド)がアヤックス(オランダ)に勝利し、暫定首位の座はドーバー海峡を渡った。AEKアテネとマルセイユの試合は激しい試合となり、序盤から負傷する選手が続出した。先制点を奪ったのはマルセイユである。25分にクロースのCKをファーポストで待っていたストッパーのシャンセル・ムバンバがAEKアテネの選手に競り勝ってヘディングシュートを決めた。ムバンバは10月5日のブライトン戦に次ぐ得点となった。
 AEKアテネは積極的にシュートを放つが、マルセイユのGKポー・ロペスが好セーブを連発、なかなか得点にはならない。マルセイユは80分のビティーニャのシュートはポストをたたいたが、後半アディショナルタイムの93分、ベレトゥからのパスを受けたサールが追加点をあげ、2-0と連勝した。マルセイユは勝ち点を8に伸ばし、首位をキープし、終盤戦を迎えるのである。(続く)

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