第3322回 2024年6か国対抗開幕(4) マルセイユで行われるアイルランド戦

 平成23年東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、台風15号、19号、令和2年7月豪雨、令和6年能登半島地震などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■パリ五輪の影響でスタッド・ド・フランスで開催されない今大会

 前回の本連載では昨年の1位と2位であり、ラグビーワールドカップでも優勝候補と目されたフランスとアイルランドと開幕戦で対戦、そしてアイルランドはジョナサン・セクストンとキース・アールズというチームの戦術的、精神的支柱となるレジェンドが代表から引退したことを紹介した。一方、前々回の本連載で紹介した通り、フランスはスタンドオフのロマン・エンタマックが負傷で長期離脱していることに加え、主将を務めていたアントワン・デュポンはパリ五輪の7人制ラグビーに専念するため代表を辞退している。
 パリ五輪が影響を与えたのはデュポンだけではない。1998年の開業以来、フランスのホームゲームの舞台となったスタッド・ド・フランスがパリ五輪の準備のために今大会では利用できない。そのため、フランスはホームゲームを他の会場で行い、2月2日のアイルランド戦はマルセイユ、2月25日のイタリア戦はリール、3月16日のイングランド戦はリヨンで行われる。

■ベロドロームとラグビー

 サッカーの都、マルセイユのベロドロームで15人制ラグビーの試合が行われた歴史は浅い。マルセイユではサッカーには及ばないが、プロの13人制ラグビーの人気が高く、13人制ラグビーの試合は古くからしばしば行われ、13人制ラグビーのワールドカップも3度にわたって会場となっている。他方、15人制のラグビーは地元に有力チームがないこともあり、改装前のベロドロームでは15人制の試合は行われなかった。
 15人制ラグビーは2000年11月18日にフランス代表とニュージーランド代表が戦ったのが最初のことである。この時はフランスが42-33と勝利し、ベロドロームでの初戦を白星で飾っている。2007年のラグビーワールドカップでは6試合が行われ、フランスも予選プールでジョージアと対戦している。このラグビーワールドカップを契機にマルセイユでもラグビーの試合が行われるようになり、近隣にあるトゥーロンの試合や、TOP14の決勝トーナメント、欧州チャンピオンズカップの試合、そしてフランス代表のテストマッチなどが行われるようになった。
 2018年には初めて6か国対抗の試合が行われ、イタリアと対戦した。長い6か国対抗(5か国対抗)の歴史でフランス代表がホームゲームをパリ並びにその近郊以外で行うのはこれが初めてのことであった。当時のフランスラグビー連盟会長のベルナール・ラポルトの提案によるものであり、それ以降しばしば6か国対抗のフランスのホームゲームがスタッド・ド・フランス以外の会場で行われることになった。昨年のラグビーワールドカップでもマルセイユで6試合が行われ、フランスは9月21日にナミビアと対戦している。そしてこのナミビア戦はフランスが96-0と記録的なスコアで勝利したが、デュポンが負傷で退場し、記録にも記憶にも残る試合となった。

■開幕戦に臨むフランスの先発メンバー

 フランス代表がそれから初めてマルセイユに戻ってきた。ベロドロームのピッチにラ・マルセイエーズとともに送り出された15人を紹介しよう。FW第一列はシリーユ・バイユ、ペアト・モーバカ、ウイニ・アトニオ、ロック陣はポール・ガブリヤーグとポール・ウィレムス、フランカーはフランソワ・クロとシャルル・オリボン、ナンバーエイトはグレゴリー・アルドリットである。ハーフ団はマキシム・ルクーとマチュー・ジャリベール、スリークォータバックスは左からヨラム・モエファナ、ジョナタン・ダンティ、ガエル・フィクー、ダミアン・プノー、フルバックはトマ・ラモスという陣容である。

■ラグビーワールドカップによる世代交代を感じさせないフランス

 この先発メンバーは直近の試合であるラグビーワールドカップ準々決勝の南アフリカ戦と比べると両ロックとスクラムハーフ、左ウイングが変更となっただけである。さらにこの15人のうち、14人はラグビーワールドカップのメンバーであり、唯一ラグビーワールドカップに出場しなかったウィレムスも昨夏の42人の段階ではメンバー入りし、大会直前の負傷が原因で選に漏れており、フランスはラグビーワールドカップによる世代交代の影響を受けず、今年の6か国対抗に臨むのである。(続く)

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