第456回 オセール、フランスカップ制覇(1) 決勝前日はアフリカ予選、ボナバンチュール・カルー
■シーズン最後の一戦にかけるオセールとスダン
フランスのサッカーシーズンの掉尾を飾るフランスカップ決勝が6月4日に行われた。決勝に進出したのは1部のオセールと2部に所属するスダンである。オセールは今季のリーグでは8位、そしてスダンは6位とそれぞれ上位の成績を残しながら、オセールは優勝あるいはチャンピオンズリーグへの出場権を逃し、スダンは1部昇格を逃している。そのため、このシーズン最後のタイトルにかける意気込みは並々ならぬものがあるであろう。
オセールは9回戦に相当するベスト32決定戦から参戦、決勝までに至るまで5試合を勝ち抜いてきたが、2部以上の相手との対戦は1試合だけ、しかもホームゲーム(ベスト8決定戦のパリサンジェルマン戦)というくじ運にも恵まれて2年ぶりの決勝進出を果たした。
■2部チームとして2度目の決勝進出となるスダン
一方のスダンは7回戦から参戦し、ベスト32決定戦で1部のストラスブールを倒し、圧巻は準決勝のモナコ戦であろう。アウエーで戦ったモナコ戦は見事に1-0と勝利を収め、6年ぶりの決勝進出を決めた。2部のチームの決勝進出は80年以上の歴史を誇るフランスカップでは10度目のこととなる。1936年のシャルルビルに始まり、1979年には当時2部に所属していたオセールもパルク・デ・プランスの大観衆の前に姿を見せている。そしてスダンは1999年の決勝にも進出した際も2部に所属しており、2部のチームとして初めて2度決勝進出を果たしたことになる。
またこれまで9度の2部リーグの挑戦のうち、栄冠に輝いたのはわずか1回、1959年のルアーブルだけであり、ジャイアントキリングの多いフランスカップであっても、最終的には1部勢が地力の差を見せ付けている。
■ワールドカップ予選と重なった欠場者
さて、フランスカップ決勝が、リーグ最終節の次の週末に行われるのは例年通りであるが、今年はその間にフランス代表の親善試合が行われた。フランス代表には両チームから選出された選手はいなかったが、6月上旬にワールドカップ予選などの国際試合が行われるため、その対象となっている他国の代表選手がいる。スダンの場合、ガボン代表のジョルジュ・アンブルエが翌日にジンバブエ戦を行うためメンバーから外れている。オセールの場合、ベルギー代表のルイジ・ピエロニは同日にセルビア・モンテネグロ戦があるため、メンバーから外れ、フィンランド代表のティーム・タイニオは8日にオランダ戦を控えているため前日の練習も控えめで、ベンチからのスタートとなる。そして驚くべきは決勝前日にコートジボワール代表としてリビア戦に出場したボナバンチュール・カルーである。試合はスコアレスドローとなったが、カルーは74分間出場し、試合終了後リビアのトリポリからパリ行きのフライトに飛び乗り、チームメートの待つホテルへ直行、ベンチ入りしたのである。
そして何人の他国の代表選手以外にも欠場者がいた。それは共和国大統領のジャック・シラクである。シラク大統領はドイツのゲルハルト・シュローダー首相との首脳会談のためベルリンに赴いている。フランスカップ決勝に大統領が不在ということは通常は考えられないことであるが、ドイツ、そして日本の国連安全保障理事国入りのかかる会談とあってはさすがのフランスカップの決勝も優先度が下がるであろう。シラク大統領の代役は次期大統領候補最右翼のニコラ・サルコジ内務大臣とジャン・フランソワ・ラムール青少年・スポーツ大臣である。
■前日にワールドカップ予選を戦ったカルー、殊勲の決勝ゴール
そのラムール青少年・スポーツ大臣が試合前に両チームの選手を激励してから試合はキックオフされた。1961年以来3度目の優勝を期待するスダンは2万5000人の大応援団をパリに派遣する。大歓声の中の試合となるが、まず37分に先制したのはオセール、しかしスダンも64分に追いつく。ここで名将の誉れ高いオセールのギ・ルー監督はついに72分に前日リビアで試合を行ったばかりのカルーを主将のヤン・ラシュエに代えて投入する。しかしながら、なかなか勝ち越し点に結びつかず、試合はついにロスタイム。そしてロスタイムに入って4分経ったとき、ついに決勝ゴールが生まれた。決勝ゴールの主はカルー、右ボレーが鮮やかに決まった。
前日にアフリカでワールドカップ予選を戦ったばかりのカルーのゴールは代表チームか所属クラブかの一方を優先しがちな最近の選手たちに大きな教訓となるであろう。(続く)