第3338回 パリサンジェルマン、決勝トーナメント1回戦を突破(3) 初めてサン・セバスティアンで試合を行うパリサンジェルマン
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■キリアン・ムバッペの移籍が確定的になり、揺れるパリサンジェルマン
チャンピオンズリーグの決勝トーナメント1回戦、パリサンジェルマンは2月14日に本拠地パルク・デ・プランスで行われたレアル・ソシエダ(スペイン)との第1戦に2-0と勝利した。
第2戦が行われたのは3月5日、第1戦と第2戦の間にパリサンジェルマンはリーグ戦3試合を行い、ナントに勝利した後、レンヌとモナコという欧州カップ出場チームとは引き分けている。また、フランスカップの準々決勝は2月末に予定されているが、パリサンジェルマン-ニース戦のみ、第2戦の後の3月13日に日程が変更された。
そして、前回の本連載でも紹介した今季終了後のキリアン・ムバッペの去就であるが、シーズン終了後に移籍することについてクラブ側も認めざるを得ない状況となった。エースが来季不在となることがこの時点で明らかになり、首脳陣は頭を悩ましているが、目の前のタイトルを獲得することが最優先である。
■ホームの第1戦で唯一2点差で勝利したパリサンジェルマン
1回戦はグループリーグ2位のチームの本拠地で行われたが、ホームチームの戦績は4勝2分2敗と勝ち越した。パリサンジェルマン以外にポルト(ポルトガル)、インテル・ミラノ、ラツィオ・ローマ(以上イタリア)の3チームがホームでの第1戦で勝利したが、スコアはいずれも1-0であり、パリサンジェルマンだけが2点差をつけて勝利している。
■ホームに強いレアル・ソシエダ、昨年11月を最後に本拠地での勝利なし
ただ、ホームの第1戦で2-0というスコアはリードしていないに等しいという考え方もある。レアル・ソシエダは国内リーグのホームゲームは年が明けてからの後半戦では2分2敗と振るわないが、昨年のうちに行われた前半戦では5勝3分1敗と好成績を残している。2月27日に行われたスペイン国王杯の準決勝のホームの第2戦ではマジョルカと1-1で引き分け、アウエーの第1戦も引き分けだったためPK戦となったが競り負けている。スペイン国王杯は準々決勝までは1回戦制であるが、年明けに行われたベスト16決定戦、ベスト8決定戦、準々決勝はいずれもレアル・ソシエダの相手チームの本拠地で行われており、レアル・ソシエダは今年になってからホームでの勝利がない。昨年11月26日以降、本拠地での勝利がなく、地元のファンは勝利を渇望している。
■20年前に実現しなかったパリサンジェルマンのアノエタ競技場での試合
パリサンジェルマンとレアル・ソシエダはこれが欧州カップでは初めての対戦であるが、パリサンジェルマンはレアル・ソシエダの本拠地で試合をする可能性があったことを紹介しよう。
レアル・ソシエダの本拠地はアノエタ競技場、本連載の長年の読者の方であればこの競技場の名前をご記憶の方もいらっしゃるであろう。2003-04のシーズンフランスカップのベスト8決定戦、パリサンジェルマンは当時の4部相当のCFAリーグに所属していたバイヨンヌとアウエーで対戦することになった。バイヨンヌがホーム扱いとなったが、アマチュアチームのバイヨンヌの本拠地はパリサンジェルマンを迎えるだけの観衆を収容することができない。フランスカップではしばしばあることであるが、このような場合、近隣の上位リーグの本拠地を借りてホームゲームを開催する。バイヨンヌの場合はボルドーが相当するが、それでも200キロ離れている。バイヨンヌ側は国境を越えたレアル・ソシエダのアノエタ競技場を提案したのである。国境を越えたとはいえ、バイヨンヌとサン・セバスティアンは50キロしか離れておらず、フランスカップは国内でしか試合ができないという規定も存在しない。この提案は当時の政界も巻き込む大騒動となったが、結局、バイヨンヌがホームゲームを断念し、パルク・デ・プランスで試合を行うことになったが、パリサンジェルマンは20年前に公式戦でこのアノエタで試合をしていたかもしれないのである。この一件が契機となりラグビーで1部のビアリッツや2部のバイヨンヌは観客動員が見込まれるホームゲームはアノエタ競技場で試合をしている。
その幻のフランスカップから20年、パリサンジェルマンは初めてアノエタ競技場で試合を行うのである。(続く)