第3349回 ドイツ、チリと連戦(5) マルセイユに移動して行われるチリ戦
平成23年東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、台風15号、19号、令和2年7月豪雨、令和6年能登半島地震などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■地方都市間を移動して行われる3月の親善試合
ディディエ・デシャン監督は、代表監督に就任して150回試合目という記念の試合でドイツに完敗した。近年のドイツとの力関係を考えれば、昨年9月に続く連敗ということで厳しい評価を受けた。3月の親善試合は23日のドイツ戦に続き、26日にはチリ戦が控えている。チームはドイツ戦の行われたリヨンから、チリ戦の行われるマルセイユに移動する。パリ近郊にあるスタッド・ド・フランスがオリンピックの準備に追われ、利用することができないことから、フランスは国内の2試合をいずれもパリ以外の都市で行った。これがちょっとした騒動になった。
■鉄道を利用しなかったリヨンからマルセイユへの移動
これまでは専用機などで移動していた代表チームであるが、フランスサッカー連盟は昨年10月にすべてのカテゴリーの代表チームについて3時間以内の移動は鉄道を使うと発表した。目的はSDGsである。鉄道輸送となった場合、航空機やバスなどと違い、専用列車を編成することができず、スター選手目当てのファンが殺到することからセキュリティ上の問題も懸念される。したがって、男子のフル代表に関してはこの3月の試合から鉄道で移動すると執行猶予が与えられた。ところが、フランスサッカー連盟は鉄道による移動は混乱を招くとして、3時間以内の移動となるリヨンからマルセイユへは鉄道を使用せず、飛行機を利用した。
昨年行われたラグビーワールドカップでは国内の輸送はフランス国鉄が担い、つつがなく選手は移動することができた。また、今夏のオリンピックもフランス国鉄は輸送を担当することから準備万端であり、フランスサッカー連盟の翻意に驚くだけであった。
■パリサンジェルマン勢5人全員が出場したドイツ戦
また、リヨンのドイツ戦は前売り完売であったが、マルセイユのチリ戦はなかなかチケットがさばけない。これはもちろん対戦相手が欧州の強豪国と南米の中堅国という差があることは事実であるが、マルセイユという土地柄も影響している。今回の親善試合で地元マルセイユから選出されているのはジョナタン・クロースただ1人である。それに対してライバルのパリサンジェルマンからはキリアン・ムバッペ、ランダル・コロムアニ、ウスマン・デンベレ、ウォーレン・ザイール・エメリ、ルカ・エルナンデスの5人が選出され、ドイツ戦ではコロムアニ以外の4人が先発から出場し、コロムアニも終盤にデンベレに代わって出場している。パリサンジェルマンから4人の選手が代表の試合に出場したのは1996年の欧州選手権の準決勝のチェコ戦の5人(ベルナール・ラマ、アラン・ロッシュ、バンサン・ゲラン、ユーリ・ジョルカエフ、パトリス・ロコ)以来のことである。パリサンジェルマン祭とも言えるドイツ戦で、マルセイユのクロースは後半途中からの出場にとどまった。
このようにパリサンジェルマンの選手が多いフランス代表に対してマルセイユのファンが関心を示さないこともチリ戦のチケットの販売が振るわないことの原因である。
■マルセイユでブーイングを浴びるパリサンジェルマンの選手
また、これはデシャン監督の選手起用にも影響する。パリサンジェルマンの選手がベロドロームでプレーするとブーイングを受けたことは過去にもある。有名なのは2014年のスウェーデン戦である。ルカ・ディーニュは所属するパリサンジェルマンでは定位置を確保できない状態であったが、この年の3月に代表に招集される。ブラジルでのワールドカップにも出場し、21歳の若きサイドDFとしての将来が嘱望される存在であった。そのディーニュが衝撃を受けたのが11月18日のスウェーデン戦であった。ベロドロームで行われたこの試合でディーニュはブーイングを浴びたのである。
また2016年の欧州選手権の準決勝のドイツ戦でもパリサンジェルマンのブレーズ・マツイディが出場し、メンバー紹介の時にブーイングを受けた。
パリサンジェルマンの5人の選手全員が出場したドイツ戦は完敗、マルセイユでのチリ戦にはどのようなメンバーで臨むのであろうか。(続く)