第3412回 3回目のパリオリンピック(4) 東京大会同様、編成に苦労したオリンピックチーム
平成23年東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、台風15号、19号、令和2年7月豪雨、令和6年能登半島地震などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■選手の招集に苦労し、惨敗した東京大会
パリでは3回目の開催となるオリンピック、開会式は7月27日にセーヌ川で行われるが、サッカーは開会式の前から競技が始まり、フランスも7月24日に米国との初戦を迎える。
今回は40年ぶりの優勝を狙うフランスオリンピックチームのメンバーを紹介しよう。夏季オリンピックが開催されるのは7月下旬から8月上旬、欧州の各国のリーグ戦は5月末に終わり、8月中旬から開幕する。また、オリンピックイヤーは6月中旬から7月中旬にかけては欧州選手権が開催される。すなわち、オリンピックイヤーはファンにとってシーズンオフはなく、サッカーを楽しむことができるが、選手の立場としては、シーズンオフは必要であり、クラブの立場としては新シーズンに向けてチームを再構成する時間も欲しい。その結果として、オリンピックのチームは構成に苦労する。インターナショナルマッチデーに行われる予選は世代最強のメンバーを招集することができるが、オリンピックのチームは招集に困難が伴うことになる。3年前の東京大会はキリアン・ムバッペも出場を希望したが、それがかなわないばかりか、年代別の代表の経験のない選手を招集せざるを得ず、グループリーグで敗退している。
■6か国対抗を捨て、オリンピックの7人制を選んだラグビーのアントワン・デュポン
しかし、今回は地元開催である。例えば、7人制ラグビー、15人制の主将であり、中心選手であるアントワン・デュポンはワールドカップで準々決勝敗退したが、パリオリンピックでの金メダルを目指すと宣言、今年の6か国対抗は欠場し、7人制に専念した。デュポンという国民的英雄がオリンピックにかける姿はサッカーにも影響を与え、こんどこそ無ムバッペをはじめとするフル代表の主力選手、そして23歳以下のトップ選手がオリンピックに出場するのではないか、という期待はあったが、やはり、東京大会と同じような結果になってしまった。
■シーズン終了後の6月3日に発表したプレリストから辞退者が続出
東京大会同様、フランスはシーズン終了直後、正式エントリー期限より1月以上早い段階の6月3日に25人のプレリストを発表した。そのうちの23人は2001年以降生まれで、2人がオーバーエイジ枠であった。フランスサッカー連盟としても控えめなメンバーを選出し、欧州選手権のメンバーとなったウォーレン・ザイール・エメリ、ブラッドリー・バルコラ、すでにフル代表経験のあるカステロ・ルクバ、アドリアン・トルフェール、ケフラン・テュラムもリストに入っていたが、エドゥアルド・カマビンガ、ウィリアム・サリバの名はなく、オーバーエイジに関しても代表を離れて7年になる33歳のアレクサンドル・ラカゼット、代表経験のない27歳のジャン・フィリップ・マテタという陣容であった。
ところが、ザイール・エメリ、バルコラは所属のパリサンジェルマンから許可が下りず、ティエリー・アンリ監督とともに代表で父親リリアンが活躍したテュラムもちょうどユベントス(イタリア)に移籍し、新チームとの関係で辞退した。これ以外にルカ・シュバリエ、バフォデ・ディアキテ(以上リール)、マキシム・エステーブ(イングランド、バーンリー)、レスリー・ウゴチュク(イングランド、チェルシー)、マティス・テル(ドイツ、バイエルン・ミュンヘン)がクラブ側の了解を得られず辞退となった。これ以外に負傷という本来の理由で辞退したのがロバン・リセ(ストラスブール)である。
■最終的に選出された18人のメンバー
辞退者が相次ぎ、結局18人のメンバーはGKはオベド・エンカンバディオ、ギヨーム・レステ、DFはルクバ、トルフェール、ロイック・バデ、キリアン・シルディリア、ブラッドリー・ロッコ、スングトゥ・マガッサ、MFはマヌ・コネ、マグリス・アクリウシュ、デジレ・ドゥエ、エンゾ・ミロ、ジョリス・ショタール、FWはミカエル・オリーズ、アルノー・カリムエンド、ラカゼット、マテタ、ラヤン・シェルキというメンバーである。この中でバデは24歳でオーバーエイジ枠であるが、代表経験はない。
このように東京大会と似た構成のチームであったが、ホームアドバンテージもあり、勝ち進んだのである。(続く)