第3506回 2025年6か国対抗開幕 (3) アントワン・デュポンと若手の活躍でウェールズに大勝
平成23年東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、台風15号、19号、令和2年7月豪雨、令和6年能登半島地震などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■負傷者を抱えるフランス、若手とベテランの混合したウェールズ
2年ぶりの6か国対抗の開催となったスタッド・ド・フランス、雨の降る中でほぼ満員の77,752人の観衆が集まった。前回の本連載でフランスの先発メンバーを紹介したが、シーズン中ということもあり、多くの選手が負傷でメンバーから外れている。深刻なのはシャルル・オリボンで長期にわたって戦列から離れる。スリークォーターバックスは負傷者が重なり、ジョナタン・ダンティ、ガエル・フィクー、ダミアン・プノーという経験豊かな選手がメンバーから外れた。また前々回の本連載で紹介した通りプロップ陣も負傷者が多く、負傷を押して出場するメンバーもいる。この結果、両ウイング、両ロックは若い選手が先発することになった。
一方のウェールズは半数の選手が代表キャップ1桁である。これは前回の本連載で紹介した通り、チームの状態が悪く、若手選手に切り替えても連敗から脱出できず、ベテラン選手にも依存するという構図である。
■先制トライは21歳のテオ・アティソグベ
両国の国歌演奏に先立って昨年8月にU-18代表の南アフリカ遠征中に海難事故で行方不明となったナディ・ナルジシの追悼セレモニーが行われた。本連載第3457回でナルジシの事故死については紹介したが、この日、スタッド・ド・フランスに集まった観衆の反応を見てもいかに将来を嘱望された選手であったかがわかる。
ウェールズのキックオフで始まった試合、2分にはほぼ1年ぶりにフルバックになったトマ・ラモスが見事な50:20キックを見せる。この1年間のスタンドオフとしての経験が好キックにつながったのであろう。
序盤は互角の展開であったが、次第にフランスが試合のペースをつかむことになる。両チームともに若い選手が出場しているが、先にスコアをしたのはフランスの若者であった。18分、フランスはウェールズのトライライン前で攻撃を続ける。アントワン・デュポンが右奥にキックパス、ここに走りこんできたのは21歳のウイング、テオ・アティソグベであった。アティソグベが右隅にトライした後、ラモスはコンバージョンを成功、フランスが7点を先行した。アティソグベはうれしい代表初トライである。ラモスは代表通算381点となり、380点のクリストフ・ラメゾンを抜いて歴代2位となった。1位のフレデリック・ミシャラクの436点も遠い数字ではない。
■22歳のルイ・ビール・ビアレイもトライ、前半だけでボーナスポイントを獲得
23分には左ウイング、22歳のルイ・ビール・ビアレイがトライゾーンを駆け抜けた。デュポン、ラモスとパスをつなぎ、右側に走りこんできた赤いヘッドキャップのビール・ビアレイにパス、代表15試合目にして11本目のトライというハイペースでトライを量産する。
33分にはデュポンがランで観客を魅了する。ウェールズが危険なタックルで1人減った直後、デュポンはゴールから30メートルの地点で形成されたラックからそのままボールを拾って、スラローム、相手のタックルを次々にかわし、最後は右サイドのアティソグベにマウンテンパス、アティソグベはこの日2本目のトライ、そしてラモスのコンバージョンキックも成功し、21点差とする。さらにフランスは前半40分過ぎ、ゲームを切ることなく、攻め続ける。ウェールズのトライライン上で形成されたマイボールのラック、デュポンは左側の奥に山なりのパス、ウェールズの選手にインターセプトされることなく、ビール・ビアレイがキャッチして、そのままトライ、フランスは前半のうちに4トライあげてボーナスポイントも獲得した。
■記録的な対象で対戦成績をタイにしたフランス
後半に入ってもフランスは54分にゴール前でモールを形成、バックスも加わり、最後はジュリアン・マルシャンがトライ、68分にはロマン・エンタマックの精度の高いキックパスを受けたエミリアン・ガイユトンがトライする。ようやくエンタマックが登場したが、この日は精彩を欠き、71分には危険なタックルで退場となってしまう。
78分にグレゴリー・アルドリットが7本目のトライ、フランスは43-0と記録的なスコアでウェールズに勝利、対戦成績を51勝3分51敗とタイにしたのである。(この項、終わり)