第481回 ワールドカップ予選フィナーレ(3) スイスとドロー、最終戦で決着へ

■大量の負傷者、欠場者で臨むスイス戦

 いよいよスイスとのベルンでの決戦の日がやってきた。これまでの連載で紹介したとおり、この戦いで勝利すれば、フランスのワールドカップ行きが決まる。逆にこの戦いで負けるようだと、絶望となる。この大一番を前に不安材料は尽きない。まず、攻撃陣の主力であるダビッド・トレゼゲとティエリー・アンリが負傷のため、そろって欠場となる。正GKのファビアン・バルテスとサイドバックのビリー・サニョルは出場停止となっている。さらにまた、チームの主軸に復活したジネディーヌ・ジダンも9月7日のアイルランド戦で負傷し、復帰したのは10月初めのマジョルカ戦、しかもわずか15分の出場であり、クレールフォンテーヌのフランス代表に合流した後も、体調は不十分で練習には参加していない。ジダン同様にリリアン・テュラム、パトリック・ビエイラもチームには合流しても練習に参加していない。このような厳しい状況でアウエーでの大一番を迎えることになった。

■注目の攻撃陣はシルバン・ビルトールのワントップ

 レイモン・ドメネク監督は就任以来、さまざまなメンバーとシステムを起用してきたが、10月8日の夜のベルンでの戦いには4-2-3-1システムを起用し、2人の守備的MF、3人の攻撃的MF、そしてFWは1人となった。GKはリヨンのグレゴリー・クーペ、DFラインは右サイドに代表3試合目のアラン・レベイエール、左サイドにウィリアム・ギャラス、センターにはジャン・アラン・ブームソンとテュラム、そして守備的MFにはビエイラとクロード・マケレレ、攻撃的なMFは中央にジダン、左サイドにフローラン・マルーダ、右サイドにビカッシュ・ドラッソーとなった。注目は11番目の最前線の選手である。相手ゴールに最も近い位置にドメネク監督が起用したのはなんとシルバン・ビルトールであった。

■後半開始時のメンバー変更が的中

 スイスは昨年の欧州選手権でフランスに敗れているとは言うものの、アウエーでの戦いでドローに持ち込んでいることから首都ベルンでの戦いに自信を持っている。次回の欧州選手権のために改装されたスタッド・ド・スイスに超満員の観衆を集めて試合は始まった。
序盤にフランスは積極的に攻勢をかける。しかし、攻撃陣の役者不足か、決定的なシーンには至らない。また、細かいミスも目立ち、なかなかボールをキープすることができず、試合は均衡する。結局、前半はフランスがややボール試合率で上回るものの、両チーム無得点でハーフタイムとなる。
  ハーフタイムが終了し、再び姿を現したフランスイレブンには新しいメンバーが加わっていた。ドメネク監督はジブリル・シセを投入した。ドラッソーをベンチに下げて、ビルトールを本来のサイドの攻撃的なMFとして起用する。このFWシセ、攻撃的MFビルトールという布陣が見事に的中する。53分に待望の先制点が生まれる。フランス国民を熱狂させたゴールを決めたのはシセ、そしてアシストしたのはビルトールであった。

■意地を見せたスイス、最終戦まで4チームに希望

 このままのスコアで試合が終了すれば、フランスはドイツへ行くことができる。しかし、ここベルンはドイツ語圏、地元スイスもそう簡単にフランスのドイツ行きを許すわけには行かないのである。試合時間が残り10分となった80分にスイスは左サイドでFKのチャンスを得る。このFKをマグナンが蹴り、フランスの選手のヘッドをかすめて、ゴールの中に落ちる。フランスにとって今シーズン初の失点はドイツ行きがお預けとなった失点となったのである。試合はこのままタイスコアで終了する。
  この結果、グループ4は最終戦を迎える段階でもまだ4チームが圏内という混戦状態が続く。この日勝ったイスラエルが勝ち点18で首位、スイスとフランスが勝ち点17で追い、勝ち点16でアイルランドが続く。最終戦はダブリンでアイルランド-スイス戦、スタッド・ド・フランスでフランス-キプロス戦が予定されている。フランスはキプロス戦で勝利すれば勝ち点を20に伸ばすが、スイスもアウエーでアイルランドに勝てば勝ち点で並び、首位と2位の分岐点は得失点差となる。ここまでの得失点差はフランスの+8に対して、スイスは+11であり、キプロス戦は大量得点差での勝利が期待されるのである。(続く)

このページのTOPへ