第492回 新ユニフォームと新方式のテレビ中継
■新調したユニフォームのイレブンを空中から撮影したドイツ戦
ワールドカップに向けたフランス本土での準備の初戦となるドイツ戦については本連載の第490回でご紹介したとおり、0-0というスコアレスドローで終わったが、この試合2つの目新しいことがあった。まず、第1点は来年のワールドカップ本大会に向けたユニフォームを新調したこと、そしてスタッド・ド・フランスでのテレビ中継で初めてグラウンドの真上から撮影したことである。
■マルティニックからの帰路休む間もなく新ユニフォームの発表会
11月9日にカリブ海の海外県マルティニックでのコスタリカ戦を終え、フランス代表のイレブンは7000キロの大移動の末、パリに戻ってきた。パリで待ち受けていたのは報道陣でもファンでもなく、新ユニフォームのお披露目であった。現地時間で16時に試合はキックオフされ、試合の終了は18時、逆転勝利の余韻に浸る間もなく、選手たちは21時にオルリー行きの飛行機に乗り込んだ。オルリーを経由して合宿所のクレールフォンテーヌに選手達がついたのは翌10日の10時過ぎのことである。試合ならびに長旅の疲労に加え、翌々日の12日にはドイツとの親善試合が控えている。コスタリカ戦とドイツ戦の間の練習はドイツ戦の前日の夕方に行う程度である。そのような日程の中、午前中にカリブ海から戻ったばかりの選手はパリ市内での新ユニフォームの発表会に駆り出だされたのである。新ユニフォームの発表会が行われたのはパリ西北部のポルトマイヨー、フランス語でポルトとは門、そしてマイヨーというのは衣服という意味があり、新ユニフォームの発表にふさわしい舞台である。新ユニフォームの発表会にはレイモン・ドメネク監督の他、選手はジブリル・シセ、シドニー・ゴブー、パトリック・ビエイラが参加した。
■ワールドカップイヤーを待たずに新調されたユニフォーム
新ユニフォームについては第490回の連載でも紹介したが、フランス代表のユニフォームの新調は本連載第33回でも紹介したように前回のワールドカップを控えた2002年2月以来のことである。前回のユニフォームの初戦はルーマニアに2-1で勝利したが、その後のワールドカップ本大会では残念な結果に終わっている。今回のユニフォームの新調はワールドカップイヤーを待たずして行われており、フランス代表のワールドカップ本大会に向けた意気込みが伝わってくる。
新ユニフォームもこれまでどおり青が基調で赤のアクセントが入っている。これまでは赤い線が胸のところに水平に入っていたが、新ユニフォームではこの赤い線が波を打つような曲線になっている。首の下、首から脇を通り抜けて横腹、さらにはショーツにまでこの赤い曲線は伸びている。それからこれまでは体の前面の背番号は体の中央に入っていたが、新ユニフォームでは右胸に入るようになった。そして素材やカットについても従来よりも機能性を重視したものが採用されている。フランスの芸術と技術の巧みのなせる業であるといえよう。
■空中からの中継、目標は2007年ラグビーワールドカップ
12日のスタッド・ド・フランスのドイツ戦ではフランスのサッカー史上初めて空中から試合を中継した。これはスタッド・ド・フランスの屋根の四隅を対角線上に結び、そこにモーター付きのテレビカメラを取り付け、中継を行うものである。このモーター付きのカメラは最高時速80キロで移動し、試合全体をまさに鳥瞰するようなアングルで視聴者は試合を楽しみことができる。すでに米国では20年前から取り入れられており、アメリカンフットボールでは全体の中継時間のうち40パーセントがこの空中からのカメラから撮影されたものである。また、ラグビーでもパルク・デ・プランスでの試合では使用されている。
スタッド・ド・フランスではあくまでも今回のドイツ戦は試験的なものであり、目標は2007年のラグビーのワールドカップであるとしている。当面の目標としては来年5月17日に行われるチャンピオンズリーグの決勝戦である。5月17日にこの空中からのカメラで全世界に紹介されるのはフランス代表のリヨンであろうか(この項、終わり)