第493回 混戦から抜け出るか、古豪リール(1) マンチェスター・ユナイテッドとアウエーでドロー
■混戦となったグループD
欧州クラブにとって最高の舞台であるチャンピオンズリーグ、秋も深まり、グループリーグも終盤を迎えている。昨季のフランスチャンピオンであるリヨンは本連載の第486回で紹介したとおり、第4節でグループリーグを突破している。それ以外にも多くのクラブが決勝トーナメント進出を決めているが、混戦となっているのがグループDである。最終節を前にしてまだグループリーグ突破を決めたチームもなければ、グループリーグで敗退が決まったチームもなく、すべてのチームにチャンスが残されている。
■マンチェスター・ユナイテッド、順当に首位に立つ
グループDの顔ぶれは、本連載第475回で紹介したとおり、第1シードとしてマンチェスター・ユナイテッド(イングランド)、第2シードはビジャレアル(スペイン)、第3シードにリール、第4シードはベンフィカ(ポルトガル)となっている。マンチェスター・ユナイテッドのグループリーグ突破が有力視され、初戦はアウエーでビジャレアルと引き分けたが、第2節はベンフィカをホームに迎えて2-1と勝ち、勝ち点4で首位に立った。第2節を終了した時点でマンチェスター・ユナイテッドを筆頭に1位から4位まで勝ち点1ずつの差で連なり、2位は勝ち点3のベンフィカ、3位は勝ち点2のビジャレアル、そして最下位に勝ち点1のリールとなった。
■マンチェスター・ユナイテッド相手にアウエーで堂々の試合運び
昨季フランスリーグ2位でチャンピオンズリーグに出場2回目のリールはベンフィカとの初戦をアウエーで0-1と落とし、第2節はホームでビジャレアルとスコアレスドローとなり、勝ち点1にとどまっている。そして10月18日に行われる第3節はマンチェスター・ユナイテッドの本拠地オールド・トラフォードでの戦いとなった。
首位のマンチェスター・ユナイテッドは、最下位のチームを一蹴し、勝ち点3を上乗せして決勝トーナメント進出へ一歩踏み出したいところである。1998年以来、フランス勢は2003年を除いて毎年この競技場でマンチェスター・ユナイテッドと対戦しているが、1998年にモナコが引き分けただけで、それ以降5連敗している。リール自身も2001年に0-1で敗れている。さらにリールはこの段階で国内リーグも9位と中位にとどまっており、厳しいアウエーでの戦いとなる。6万人以上の観衆で赤一色に染まったスタジアム、リールに勝機はないと予想された。しかし、リールはマンチェスター・ユナイテッドと互角に戦い、得点こそ奪うことができなかったが、相手のゴールも許さず、堂々のスコアレスドローという試合を演じたのである。そしてイベリア半島ではビジャレアルがベンフィカを迎えて、こちらは1-1のドロー、つまり第3節は2試合とも引き分けに終わり、すべてのチームが勝ち点1ずつ勝ち点を加えた形となり、首位マンチェスター・ユナイテッドと最下位リールの勝ち点の差は3のままであった。
■ホームゲームをスタッド・ド・フランスで行うリール
グループリーグの後半戦の初戦となる第4節では、前半戦最後の試合である第3節と同じ相手と場所を変えて2週間後に対戦することになる。今度はリールがマンチェスター・ユナイテッドを迎える番である。リールはチャンピオンズリーグのグループリーグのホームゲームでは、サンドニのスタッド・ド・フランスを使用することになっており、収容人員は十分である。ただし、リールとスタッド・ド・フランスは200キロ離れており、その距離だけが心配である。事実、9月27日のビジャレアル戦では収容人員の半分以下の3万5000人しか集客できず、クラブチームの試合としては珍しく空席ばかりの目立つ試合となった。週末ともなれば、多くの単身赴任者がTGVを使ってパリとリールの間を行き来するが、本拠地から200キロ離れているスタジアムでのホームゲームはファンの足も遠のくのは無理はない。しかし、10月18日のマンチェスターでのリールの堂々たる戦いがファンの関心を高めた。スタッド・ド・フランスでのリール-マンチェスター・ユナイテッド戦のチケットの前売り状況は、マンチェスターで試合があった段階、すなわち2週間前の段階で、すでに4万3000枚が売れていた。ちなみに、同時点で11月22日のベンフィカ戦は、多くのポルトガル人が居住するパリ近郊での試合とあって、それを上回る4万8000枚が販売されていた。
ところが、マンチェスターで堂々の内容の試合を演じたリールに対するファンの期待は高まり、あっという間にマンチェスター・ユナイテッド戦の前売りチケットが売れてしまったのである。(続く)