第495回 混戦から抜け出るか、古豪リール(3) 観客動員また更新、大混戦で迎える最終節

■またも観客動員記録を更新、3試合で17万7000人

 本拠地から200キロ離れたホーム、スタッド・ド・フランスでグループDの中で最有力といわれていたマンチェスター・ユナイテッドを下し、2位に浮上したリール。残り2試合となった段階で、初得点・初勝利を上げた第二のホーム、スタッド・ド・フランスで連勝したいところである。首位ビジャレアルはマンチェスターでマンチェスター・ユナイテッドと対戦するが、勝てば決勝トーナメント進出が決まる。またビジャレアルが勝った場合、リールも勝利すればそろって決勝トーナメント進出となる。本来の本拠地が改修中のため、パリ近郊のスタッド・ド・フランスをホームゲームで利用するリールであるが、この決勝トーナメント進出が決定するかもしれない一戦にファンは大きく期待した。強豪マンチェスター・ユナイテッドを破り、相手のベンフィカは最下位に順位を落としている。リールからは2万5000人のファンがバスや電車で駆けつけたのである。
  そしてこの日、スタッド・ド・フランスを埋め尽くした観衆の数は実に7万6079人、11月2日のマンチェスター・ユナイテッド戦の6万6470人をしのぐ、フランスのクラブの欧州カップにおけるホームゲームの最多観客動員記録を更新した。そしてホームゲーム3試合通算で17万7000人、これまでにランスが2001‐02年に記録した10万5000人を大きく上回る数字である。

■スタンドの過半数を占めたポルトガル人

 ところが、リールのイレブンと2万5000人のリールのファンには思わぬ強敵が待ち受けていた。それはベンフィカの大応援団である。2001年4月から5月にかけて「スポーツ・ナビ」で同年4月25日に行われたフランスとポルトガルの親善試合について紹介したが、パリ並びその近郊には多くのポルトガル移民が居住している。パリはリスボンについでポルトガル人が世界で2番目に多く居住している都市である。第491回の本連載で異国に住む移民が母国のサッカーチームの来訪を心待ちにしていることを紹介したが、パリのポルトガル人も例外ではない。むしろサッカーに対してフランス人よりもはるかに熱くなる人々である。7万6000人の観衆の半分以上の4万人はポルトガル人だった。この4万人のポルトガル人のうち、リスボンから応援に駆けつけたのは5000人にすぎず、大多数となる3万5000人はパリ在住のポルトガル人だったのである。一方、リールは2万5000人がリールから応援に駆けつけ、残りの1万人がパリ周辺からのファンだった。

■実質的なアウエーゲーム、リールは攻め続けるがスコアレスドロー

 スタッド・ド・フランスが実質的なアウエーゲームとなるのはこれが3回目のことであろう。最初は2001年4月25日のフランス-ポルトガル戦、そして2回目は2001年10月6日のフランス-アルジェリア戦のことであるが、クラブチームの試合でこの状態になるのは初めてのことである。しかもベンフィカの本拠地のルッス競技場は昨年の欧州選手権に向けて改修されたが、改修前の旧競技場は収容人員12万人と西欧では最大の規模であり、ベンフィカの選手は大観衆に慣れているが、リールにとってはクラブ史上経験したことのない大観衆の前での試合となる。
  しかし、リールの選手はパリでの実質的なアウエーゲームを果敢に戦い、2週間前のマンチェスター・ユナイテッド戦同様に試合を支配した。応援は圧倒的にベンフィカのものであったが、試合は完全にリールのものであった。ところが、なかなか相手のゴールネットを揺らすに至らない。90分間の相手ゴールを攻め続けたリールと、その猛攻を耐え忍んだベンフィカとの戦いはスコアレスドローに終わってしまう。

■全チームに自力で決勝トーナメント進出の可能性がある大混戦

 また、もう1つの試合のマンチェスター・ユナイテッド-ビジャレアル戦もスコアレスドローとなり、ビジャレアルも決勝トーナメント進出を決めることができなかった。結局、グループDは各チームが勝ち点1を上積みしたことになり、順位は変動せず、1位ビジャレアル(勝ち点7)2位リール(6)、3位マンチェスター・ユナイテッド(6)、4位ベンフィカ(5)となり、最終節は12月7日にビジャレアル-リール戦とベンフィカ-マンチェスター・ユナイテッド戦が行われる。全チームに自力での決勝トーナメント出場の可能性が残るという大混戦で最終節を迎える。リールは勝てばグループリーグを首位で突破する。引き分けてしまった場合はベンフィカ-マンチェスター・ユナイテッド戦が引き分けた場合のみ、欧州の夢を来年につなげることができる。
  ベンフィカ戦は残念な結果であったが、3分の1の選手がクラブ育ちの若手というリール、最終戦での勝利を期待したい。(この項、終わり)

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