第33回 フランス、ルーマニアを破る(2) 新ユニフォームで初勝利

■国際標準にあわせた復古調の新ユニフォーム

 この試合を前にユニフォームが新調された。フランス代表のユニフォームはこのところ2年おきに行われ、ワールドカップあるいは欧州選手権の本大会のある偶数年の年初めに新調される。新ユニフォームを一言でいえば久しぶりの単色回帰ということであろう。1970年代までフランス代表のユニフォームは単色であった。しかし、1980年代以降、青を基調に白、赤を組み合わせた柄物を使用してきた。様々な優れたデザインが多かったが、今回「ナショナルチームのユニフォームは本来単色であるべきである」「世界の列強で柄物のユニフォームを使っている国は少ない」ということで国際標準にあわせ青一色で赤は腕に隠れるように脇腹の部分に使われることになった。

■過去の栄光の象徴も封印

 1998年のワールドカップ、2000年の欧州選手権とビッグタイトルを連取した時のユニフォームで使用されていた赤の横縞がなくなったが、赤の横縞は1984年欧州選手権で優勝した時のユニフォームをまねて復活させたものである。一方、2000年から使用されていたユニフォームの青い襟は1958年ワールドカップ・スウェーデン大会で3位になった際のユニフォームを復刻させたものであるが、新ユニフォームには襟もない。赤い横縞と青い襟からの決別は新世紀最初のビックタイトルに向けて過去の栄光との決別の意志の現れであろう。
 また、デザインよりもこのユニフォームは機能性を重視し、軽さを追求した素材を利用している。この素材は1999年のラグビーワールドカップに出場したニュージーランド代表の黒いユニフォームで使用されていた。そのオールブラックスは準決勝でフランスにまさかの敗退を喫したのであり、今回のユニフォームにフランスが縁起を一切担がない、という点、自信の程がうかがえる。

■期待される代表歴の少ないメンバー

 さて、この新しいユニフォームに腕を通したのは19人、相変わらずベテラン中心のチーム編成となったが、正GKのファビアン・バルテスの負傷により入ったGKのウーリッヒ・ラメとグレゴリー・クーペ、DFにはフィリップ・クリスタンバル、ミカエル・シルベストル、ビリー・サニョル、MFのエリック・カリエールが代表歴一桁の選手である。この中で先発メンバーに名を連ねたのがGKのラメとDFのクリスタンバルの2人である。ラメはメンバー入りは確実であるが、京城での開幕戦には背番号1を背負ってピッチに立ちたいであろう。またクリスタンバルはホーム初見参、しかも初めての先発であり、何とかこの試合でアピールしてメンバーに入りたいところである。

■試合を支配されながらもスコアでは上回る

 試合は開始早々にエマニュエル・プチのセンタリングをパトリック・ビエイラがヘッドであわせて先制点。幸先の好いスタートになるかに見えたが、一方的にルーマニアに球を支配され、防戦一方。ワールドカップ予選突破を果たせず、代表監督を退いた1990年代のルーマニアサッカーの英雄ゲオルゲ・ハジのあとを継いだばかりのアンゲル・イオルダネスクは大幅にメンバー若返らせ、その20代前半の選手が縦横無尽にスタッド・ド・フランスを走り回る。しかしながらそれでも追加点を奪うところはさすが世界王者である。27分にはリリアン・テュラム、ロベール・ピレス、クリストフ・デュガリーとつないで最後はプチが25メートルのシュートを突き刺す。
 後半に入り、フランスはピレス以外のFWとMFを次々と交代させる。71分にはジネディーヌ・ジダンはカリエールと交代する。カリエールはジダンの控えの座をユーリ・ジョルカエフやジョアン・ミクーと争っており、国内リーグでの活躍から23人のメンバー入りにかける本人とファンの思いも強い。しかし、1回好センタリングをクロード・マケレレに上げたくらいで、試合の終盤も立ち上がり同様ルーマニアに完全に試合を支配される。そしてノックアウト寸前のフランスイレブンに対し猛攻をかけるルーマニアは88分にコーナーキックを得て、イオアン・ビオレル・ガネアがボレーをたたき込む。その後もルーマニアはチャンスをつかんだが、2分間のロスタイムでは時間が足りず、フランスは2-1で逃げ切り、新ユニフォームで迎えたワールドカップイヤーの初戦を飾ったのである。(この項、終わり)

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